第5話 空気の飴
「えっと、まず先週山のように出した宿題の提出をお願いします。ちゃんとできた? 」
「意義あり!多すぎます先生!普通、通常の宿題の量の三倍近く出すなんて正気ですか? 」
「先生はいつも正気じゃないです。先週の記号問題、音符の計算問題、作るうちにすごく楽しくなっちゃって」
「良い加減チクりますよ」
「よし今週の宿題は通常の半分以下にします」
担任だからか、生徒ととの距離が近くて仲の良さ(これは仲良しに入るのだろうか)が見受けらる。
楽しそうだなあ。でも通常の三倍の宿題は流石にチクりたくもなるだろう。
「クックッ…ッ、本当に正気の量じゃ無かったんだよ。ほら見てよ渉君、先週の宿題」
ほまれ君はファイルを見せてくれた。おそろらく数十枚は入っているであろう。えぐい量だ。
これは流石に…。でも先生と生徒のやりとりを見てると愛故に、なんて他人事のように思った。
だが僕もいつかあれくらいの宿題を出されるのかと思うと他人事では無くなり少し心配になった。
皆先生のデスクへ向かい提出物を出して、今日の分のプリントらしき物を受け取って席に戻って行く。
僕もほまれ君の後に続いて先生の元へ向かった。
「はい、受け取りました。あ、咲衣君、こんな時になんだけど、改めて自己紹介するね。僕は
相澤先生はホッチキスでまとめた数枚のプリントを僕に手渡した。
「よ、よろしくお願いします。相澤先生」
渡されたプリントを見てみてると、楽譜や音符が沢山並んでいた。
音符+音符=?音符の計算か?とりあえず、楽譜以外にも色々な事が書かれていた。
軽く会釈をしてほまれ君と席に戻った。
「よしじゃぁ今日の授業は先週の復習からしましょう。沢山出したからね、重要な点をピックアップして説明していきますね」
そう言って相澤先生はプリントを手に取り黒板に白いチョークを走らせた。が、聴き慣れたその音は数秒で終わりを告げた。
黒板の左側は、元々五線譜が書いてある。それに黒い玉の右側に棒をつけて、7個目、8個目の黒い玉には左側に棒をつけた。
皆ご存知、音符
楽譜にはドから一オクターブ上のドまで書かれてあった。
ピアノが弾けない僕にだって音符くらいは分かる。
「さて、一旦小節は置いといて…これは四分の四拍子です。全部で何拍でしょう? 」
黒い音符が八個ある…ってことは八拍?
数名の生徒も同じく八拍と挙手をして発言していた。
「うん、その通り。この場合の四分音符は一拍になるんだ。なんでか分かる? 」
「下の拍子が四拍だからその場合一拍が四分音符になるからです」
「よくできました。花丸あげよう」
八拍だった事以外僕には分からなかった。
この学校は選択授業が何個かあって、たまたま音楽に理論に興味が合ったから入ったものの、なんせ二年生の秋からだ。
当然追いつけるわけも無かった。
つまり簡単にまとめるとよく楽譜の一番最初にある数字の拍子記号の話だったらしい。
「実際、これは頻繁には出てこないけどね。テストには出やすいから気をつけるように。因みに二分の二拍子の場合は? 」
「二分音符が一拍になりまーす」
「素晴らしい。皆よく理解できてるね空気でできた飴をあげよう」
「気持ちだけ貰っておきます」
拍子記号が変わると一拍は必ずしも四分音符が一拍ではないのか。
なるほど、「音楽理論」というものが少し分かった気がする。本当に専門的(なのか?)な勉強をするのか…。
面白い。もっと知りたい。
「可愛げのない生徒め…いいよ、僕は本物飴食べてやる」
そう言って相澤先生は本物の棒付き飴を取り出して口に入れた。
「本当に食べ出したよこの人!そろそろ校長先生にチクるぞ!」
「やめろォ!僕は糖分がないと生きていけないんだ!見て、もう手が震え出した」
「糖尿病になっても知らないですからね本当に」
またもや漫才らしきものが始まった。
当然ほまれ君は肩を揺らし笑っている。本当にツボが浅いな…僕まで笑ってしまいそうになる。
天然ボケに生徒がキレキレのツッコミを入り混ぜながらの初授業は意外にも、とても楽しかった。
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