第4話 声量のない音楽講師

午前九時、時間割を見てみたら、一時間目の授業はどうやら音楽らしい。

なるほど、だから最初会った時楽譜の束を持っていたのか。

音楽の先生…ってイメージ無いなぁ。数学とか、理科の先生を想像してたけど、意外にも文学寄りだった。


「うちの学校無駄に広いからさ〜、最初僕迷子になっちゃって」


ほまれ君は笑いながら音楽室までの道のりを案内してくれた。

確かに本当に最初見た時は博物館か何かと思ったものだ。

それを学校側も考慮してくれてか、割と小まめにプレートがかけられている。

なんだかショッピングモールみたい。


「まぁでもどこかしらにプレートかかってるから、焦らずに進めば僕みたいに授業に二十分も遅刻する事はないと思うよ〜 」

「学校で二十分も迷子になった事あるの⁉︎ほまれ君方向音痴なんだね」

「いやぁ、初日だったからそんなに怒られなくて安心したなぁ」


案内がてら、ほまれ君と雑談していると音楽室に辿り着いたみたいだ。

防音室らしい分厚い扉の上には「音楽室」とプレートがかけられていた。

よいしょ、とほまれ君はドアを開けてくれた。

中を覗いてみると、まず目に入ってきたのが漆黒に輝くグランドピアノだった。流石グランド、存在感が半端ない。

黒ってこんなにも素晴らしいものになれるのか、と改めて僕は思った。

というのも、今までピアノはアップライトしか見たことないのでグランドピアノをお目にする機会なんてそうそう無かった。

音楽室はホールの中のような構造になっており、客席が机になったような見た目になっていた。

まぁホールといっても教室なので教室サイズの小さいホールの様なものだけど。


「席は自由に座っていいよ。って言ってもみんな前の方に座るけどね。先生あんまり声大きくないから」


確かにあの喋り方や声量では奥にいたら聞き取れないかもしれない。おまけに防音室だから更に。

僕達は左側にあるピアノの少し手前に座った。流石に一番前の真ん中に座る勇気は無かった。

先生は既に右側にあるデスクに鎮座していた。いや、正確には生徒に配るプリント?を仕分けているようだった。

それにしても絵になるな…。顔が整ってて身長が高くなんていうか、「美しい」と思った。

自分の語彙力の無さに泣けてくる。


皆先生の声量を知ってか、なるべく先生に近い位置に座っていた。優しい。

席について一息つくと、タイミングよく授業開始のチャイムが鳴った。


「…よし、じゃぁみんな、低気圧に負けずに今日も頑張りましょう」


記念すべき初授業、中々クセのある先生だった。

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