第116話「祝勝会」
祝勝会である。
普通、模擬戦闘訓練如きで一々祝勝会何かやらない。
けど、今回二度の戦闘訓練は、古参の
いや、雌雄は最初から決まってるんだけど、両軍がTSしたんじゃないよ?
別の意味で彼女達はそれを見事、実力で覆したのだ。
両軍の和解で、手打を祝勝会の名目になった。
共に神々のための戦士同士、お互いの遺恨は酒を呑んで、水に流そうという訳だ。
「うーん、料理やお酒が間に合わないよ。
ましてやこんな大規模宴会の費用もどうしよう」
祝勝会は総数2367名+ほぼ同数の同時宴会になる。
場所は野外でバーベキューパーティーなら何とかなるかも。
でも正直、食材や酒の購入費がままならない。
宴会費用を上奏したら、速攻で断られてしまった。
「ヒルト様、こういう時は私の出番ですね」
「
「私はヒルト様の財務担当として十分な量を御用立てて差し上げます」
「お願いします」
「お任せを」
しかし有能な財務担当は、見事なまでに準備をしてくれた。
バーベキューパーティーだから、料理人の必要は無い。
各々が焚火で焼いて、自由に飲み食いしてくれれば良い。
ワイルドだねぇ、皆にとっては野営と変わらないか。
祝勝会には
「皆さん、模擬戦闘訓練、お疲れさまでした。
疲れを癒し、この機会に両軍とも互いにコミュニケーションを深めて下さいね」
おおおぉ――――――――――――――
おおおぉ――――――――――――――
おおおぉ――――――――――――――
「ヒルト様!」「ヒルト様!」「ヒルト様!」「ヒルト様!」「ヒルト様!」
「ヒルト様!」「ヒルト様!」「ヒルト様!」「ヒルト様!」「ヒルト様!」
「ヒルト様!」「ヒルト様!」「ヒルト様!」「ヒルト様!」「ヒルト様!」
古参の
「「「うおおおぉぉぉ⁈ な、なんだ、こいつら?」」」
「ゴルァ、お前等、我等が主、女神ヒルト様を讃えぬか!」
「お、おう、ヒルト様ー」
引き気味の古参
私は各グループを回りながら慰労の言葉を掛けて行く。
「アルレース、アリエット、お疲れさまでしたね」
「いえ、我等こそ海戦では女神の船に乗せて頂き、感無量で御座います」
「我等は二度の戦闘に勝利しました。
この勝利を女神ヒルト様に捧げます」
「我等の功績を持って、黄金騎士団を
「気持ちは解かるけど、私の独断で
きっとオーディン様が良き様に計らってくれるから、それまで待ってて、ね?」
「御意に御座います」
「それと、アルレースに一度聞いてみたいと思ってたんだけど」
「何で御座いましょう」
「何でそんなに私なんかに仕えたいのかなぁ」
「私は初めてヒルト様にお目見えした時に、とんでもない無礼を働いてしまいました」
「無礼? そんなのあったっけ?」
思い出してみれば、アルレースは最初ツンツンしてた事があったっけ。
まぁ、貴族令嬢なんてそんなもんだろうと気にも留めてなかったけど。
「私は恥ずかしくなったのです。
どうして女性貴族として、もっと真摯に、実直にヒルト様に対せなかったのかと」
「そんなに恥ずかしい事じゃ無いと思うけど」
「いいえ、騎士がそんな事ではいけないのです。
私は今後もヒルト様の側仕えを許されたいと、強く思うようになったのです。
そして主君に仕える騎士として、如何なる敵からも主君を死守出来る力も欲しました」
「そんなに重い事考えなくて良いから」
「なりません、騎士道とはそういうものなのです」
私はもっと気軽に女子トーク出来てれば、それで良かった。
こんなにガチガチの忠義の士なんて荷が重いよ。
あの可愛かったアルレースはどこに行っちゃったの?
「で、アリエット元王女様はどうなの?」
「私は一途に強くなろうとしているアルレースを羨ましく思いました。
そんなアルレースの力になって差し上げたいと思ったのです。
王族でしたから、アルレースに軍を創って差し上げる事しか出来ませんが」
「あー、それでこんな大軍団になっちゃったんだぁ」
貴族、平民を問わず、黄金騎士団に憧れる女性が多かったようだ。
無敵の強さのアルレース大将軍率いる、女性だけで結成された黄金騎士団は武勇を轟かせたらしい。
黄金騎士団と命名されたのは、アルレース大将軍が身に着けた黄金の鎧兜、剣に由来するという。
そりゃあ憧れる女性は一定数いるよね。
「この黄金騎士団はアルレースの力であり、女神ヒルト様の力でもあります。
どうぞ我等を家臣団にして下さいませ」
「どうしてそんなに尊敬されてるのか解らないけど、私、こんなだよ?
大軍団の主なんて器じゃないし。
でも今、フレイヤ様の下で、みんなの主になるように修行させられてるけど」
「気負う必要は御座いません。
我等、黄金騎士団に御命令を下されば良いのです」
「うーん、強い力は自らも滅ぼす諸刃の刃としか思えないだよねぇ」
「いいえ、主君であられるヒルト様は、上を目指せば良いのです。
我らが必ずや命を賭けてでも力となりましょう」
うわぁ~、重い、重過ぎだよぉ~。
それを見届けた私は次の集団に移動した。
「あんたが黄金騎士団の将軍様かい?」
「貴殿は?」
「オレは
大将格を務めた者だ、今回は俺達の完敗だった。
これからも良き
「承知した」
「それにしても、あんたらは本当に強かったぜ。
あのデカイ船は反則だがよ」
「貴殿らは好きな場所、好きな船を選んで良いと言ったではないか」
「いやぁ~、まさか、あんな化物船があるなんて知らなかったんだよ」
「オレたちゃ、戦う事も許されなかったぜ」
「貴殿、戦争とは、騙し合いであり、兵は詭道である。
情報弱者が戦いに負けるのだ、ただそれだけの事。
我等が主君にあられる女神ヒルト様の船に、臣下の黄金騎士団が乗った所で問題はあるまい」
「ごもっともだ、返す言葉もねぇ。
それにしても、あの砲撃は恐っそろしいな」
「神々の船にしても、あんなの見た事も聞いた事もありやせんぜ」
「女神ヒルト様が旅の末に持ち帰られたのだ」
「不沈戦艦『武蔵』、それがあの船の名」
「不沈戦艦『武蔵』……」
「要するに無敵の船という事か」
「どれほど財力があれば、あんな船を造れるんだ?」
「我等にも、それは量り兼ねる」
「それほど女神ヒルト様は偉大なのだ。
主君と仰げる我等は誇らしく思う」
「解かった解かった、解かったから、ほれ、一杯どうだ?」
「ふむ、頂こう」
「あ、それとな、酒場じゃ、もう手下達を殴らねぇでくれや」
「礼儀を失さねば、そんな事になるまい」
「ああ、以降気を付けさせるからよ、すまなかった」
「俺達と違って、あんた達は仕える女神を決めているんだな、羨ましいぜ」
「うむ」
両軍の和解は成立したようだ。
「アルレース将軍」
「どうしました? アリエット副官」
「遠くに見える十の腕を持つ女神様、あのお方が……」
「そうです、あの女神様は
「アルレース将軍は、あの女神様から女神ヒルト様を護りたかったのですね」
「その通りです」
「実際に目にしてみると、恐ろしさが肌で解ります、何と恐ろしい」
アリエット元王女は、改めてアルレースの必死さの原因を知ったのだった。
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