第113話「模擬戦闘訓練①地上戦」
練兵場は広く、野戦訓練の場らしく地面に
『黄金騎士団』キャンプから離れた場所が今回の模擬戦訓練の場だ。
模擬戦訓練とは言うけど、実質は決闘と言って良いだろう。
その決闘を見届けるギャラリーも集まっている。
メンバーはオーディン、トール、フレイヤ、テュール、
両陣営は大将が控える場所に、旗が立っている。
この旗を取られると、首級を上げられたと看做し、負けと判定される。
内容は模擬戦だから、相手が死なない程度に打ちのめす事が認められている。
戦闘方法は実戦基準となるから、陣形や戦術を互いに駆使する事になる。
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「黄金騎士団、作戦会議を行う!」
号令が掛かり、各部隊長が作戦会議に集まって来る。
アルレース大将軍と副官アリエットが大将陣地に控えフラッグを死守する役割は変わらない。
戦闘中はここが作戦司令部として機能する。
長射程に特化した魔法師団と弩弓隊は塹壕の中で待機組となる。
「作戦第一弾は開戦合図直後に迫撃砲を中間地帯に打ち込む。
音と閃光で敵軍の感覚器官を麻痺させ、足を止める。
打ち込むタイミングは銅鑼を三回打ち鳴らす、その後五つ数えたら発射だ。
全員銅鑼の音で目を瞑れ、爆発音が治まれば目を開けて良し」
「作戦第二弾は
エルネット・フロラリー騎馬隊は右翼に控え、敵混乱に乗じ攪乱せよ。
デライネス・アンジット騎馬隊は左翼に控え、敵混乱に乗じ攪乱せよ」
「作戦第四弾は
ここまで来れば敵は混乱し、統率は執れないであろうと判断出来る。
我が陣営は銅鑼の乱打で各部隊は魚鱗陣形を執り突撃だ
尚、全員笑いを忘れるな」
「歩兵は必ず二対一、三対一で敵軍と戦闘せよ、模擬戦だから止めは禁止だ。
敵軍の足腰が立たなくなるまでブッ叩け、これで敵軍を殲滅する」
「作戦はこの四段階、各部隊長は連絡を徹底せよ、以上である」
「「「おう!!!!!!!!」」」
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「エインヘリヤル集まれー」
「者共、良くきけぃ!
相手は姫騎士上がりのアマっ
開戦と同時に力で押し切れ!」
「俺が大将として旗を護る」
「騎馬隊は歩兵の前に、陣形は横列陣で押しつぶせ」
「作戦は以上だ」
「「「おう!!!!!!!!」」」
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両陣営の作戦会議は終わり、開戦合図を待つばかりになった。
『黄金騎士団』側はいくつかの方形陣を作り、両サイドに騎馬隊を用意していた。
『エインヘリヤル』側は横列陣形を執り、前方に騎馬隊を置いていた。
「皆の者、準備は完了したか?
これより『エインヘリヤル』と『黄金騎士団』の模擬戦訓練を開始する」
オーディンは今回の模擬戦訓練で両軍の実力を見極めるつもりだ。
新たに入って来た者達が、どの様な成果を残すのか。
それを判断材料に今後の未来を考えるつもりのようだ。
「模擬戦訓練開始――――――――――――」
バァン
フレイヤの号令と共に、火球が爆発音とともに打ち上げられた。
ワ―――――――――――― ワ――――――――――――
ワ――――――――――――
ワ―――――――― ワ――――――――――――
開戦の合図と共に『エインヘリヤル』陣営は突撃を開始した。
「今だ、銅鑼を三回打ち鳴らせ、その後迫撃砲発射!!」
ジャンジャンジャン
ドン ドン ドン ドン
「うわ! なんだ」「目が、目がぁ~~」
『エインヘリヤル』達は目の前で起こる爆発に目がくらみ、音が聞き辛くなった。
爆発の音に驚き怯えた軍馬たちは戦列を乱し始め収集が付かなくなり、後進の兵士達の足が止められる。
「エルネット・フロラリー騎馬隊、デライネス・アンジット騎馬隊出撃――――!」
『黄金騎士団』は敵軍との攪乱戦闘に飛び込み、戦列を乱しに乱した。
乱戦状態になったエインヘリヤル勢はもはや旗色が悪い。
「全軍突撃――――!」
ブオ―――――――― ブオ――――――――
ブオ―――――――― ブオ――――――――
ぎゃはははあああぁぁぁぁぁ ぎゃはははあああぁぁぁぁぁ
キャハハハハハハハ ギャハハハハハハハハハ
ヒャッハハハハハハハハハハハハ アハハハハハハハハハハ
キャハハハハハハハ ゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラゲラ
ギャハハハアアアァァァァァ ギャハハハアアアァァァァァ
ぎゃはははあああぁぁぁぁぁ ぎゃはははあああぁぁぁぁぁ
黄金騎士団員は全員が暴悪な笑い声をあげ突入を開始した。
方形陣形を執っていた各部隊は、先頭が尖った形の魚鱗陣形を執り突撃に掛かる。
乱れた『エインヘリヤル』軍に二波、三波と黄金騎士団は陣形毎に浴びせ掛けて来た。
ウワ―――― ウワ―――― ウワ――――
ウワ―――― ウワ―――― ウワ――――
ウワ―――― ウワ―――― ウワ――――
「戦士ども、何してる、押し返せ」「やつら、なんで笑ってる」
「
「何だこいつらは」「何で姫騎士上がりがこんなに強い」
「ちっくしょうめが」「この野郎、甘く見てりゃ付け上がりやがって」
「てめぇ、ヴァイキングなめてんじゃねぇぞ」「うわ、駄目だ、押し切れねぇ」
「大将、旗を護れ!」「馬で暴れるんじゃねぇ」
エインヘリヤル達は手斧や剣で果敢に応戦する。
しかし、
チェーンメイルやスケイルメイルでは、打撃に耐えきる事が難しい。
黄金騎士団は絶対に一対一で戦わないから、勝てる要素が無い。
乱戦の中、黄金騎士団陣地に突撃するエインヘリヤルが少数いた。
しかし全て格好の的となり、撃ち取られてしまった。
『エインヘリヤル』陣営は『黄金騎士団』に陣地をどんどん浸食されていく。
黄金騎士団なんて、どうせ大した事が無いと旗の衛が薄いエインヘリヤル軍。
じきにまとまった軍団たちに囲まれてしまう。
多勢に無勢では、護り切れる道理は無かった。
「フラッグ、取ったり――――」
やがて首級と見立てられた旗は、黄金騎士団に奪われた。
地面には大将を務めていたエインヘリヤルが倒れ伏している。
黄金騎士団の完全勝利が確定した。
「勝負あり――――
黄金騎士団の勝利である――――」
フレイヤの号令が戦場に響き渡った。
『エインヘリヤル』陣営は『黄金騎士団』に蹂躙されるという形で戦闘は終了した。
「そんな莫迦な、俺たちゃ栄光ある『エインヘリヤル』なんだぞ?」
「何で新参者のアマっ
古参のエインヘリヤル達は膝を付き悔恨の涙を流す。
「勝負はまだ終わっちゃいねぇ、皆、思い出せ、俺たちゃヴァイキングだったんだぞ。
海の上なら絶対に負けはねぇ」
「おお、そうだった、俺たちゃ海の戦士だったぜ」
「そうだ、そうだ、俺達は絶対に諦めねぇ」
負けず嫌いの者達が多いようで、さっそく再戦の要望が出されたのであった。
意外な結果にオーディンは新しい時代を意識せざるを得なくなる。
そして決めた君主以外には仕えないと宣言する黄金騎士団を、新たなエインヘリヤルに認めざるを得無かった。
渋い顔で苦悩しながら要望書を検討する。
「それにしてもエインヘリヤルが何たる有様だ」
「エインヘリヤルの勇猛さは、評価に値するかと存じます。
黄金騎士団の方が一枚上手だったと認めざるを得ませんが」
「そうではあるが、鍛え直しが必要になろう。
新参の黄金騎士団は、良き稽古相手を務めると思う」
「エインヘリヤルが今度は海戦で勝負と申しておるのだな?」
「如何いたしますか?」
「エインヘリヤルは海軍陸戦隊の様な者だし、黄金騎士団は陸軍専門だから勝負になるまい」
「ですがプライドが傷付いたようで、エインヘリヤルは引きますまい」
「では、認めるしかないか」
BGMにどうぞ
https://www.youtube.com/watch?v=a3kjVEmLy0g
【軍歌】『攻撃』
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