第86話「伊勢神宮 内宮」

「外宮から内宮まで結構距離があるんだねぇ」


「想像だともっと近いかと思ってましたよ」



そんな訳で私達は天照大御神が祀られている伊勢神宮 内宮にやって来た。

https://www.isejingu.or.jp/about/naiku/


鳥居を潜り、広い参道を歩き、左に曲がると宇治橋がある。

下に流れているのが五十鈴川だ。

昔の人はこの五十鈴川で身を清めたんだろうね。

今は『手水舎』で手と口を清めるだけの略式になっているのが殆どだ。


宇治橋を渡って突き当りの左側に皇大神宮の本殿がある。

現在名日本、古来よりの名称はやまと国、そのやまと民族の祖先が天照大御神様である。


その昔、中華では魏蜀呉の三国時代、 魏を治める曹操の子である曹丕そうひの頃に魏志倭人伝が書かれているそうだ。

魏志倭人伝では、やまと国を邪馬台国と紹介されている。

卑弥呼は邪馬台国の女王と紹介されている。


しかし実は正確な紹介ではない。


卑弥呼は日巫女、日靈貴ひるめのむちの事を指す。

国のトップは天照大御神様。

普通、神と人は直接口を聞く事は出来ない。

直に聞けるのは女性である巫女だけだから、天照大御神様に執成とりなすのは大日巫女貴おおひるめのむちという巫女になる。

これがヒミコの真の姿で、女王として国を治めていた訳じゃない。

その時代は神制政治だから、国を治めるのは、神である天照大御神様という事になる。


日巫女は誰かというと、垂仁天皇の第四皇女『倭姫命』

『倭姫命』の後継者は『豊鍬入姫命』となる。

皆皇族の者というのは今も変わっていない。


日巫女は天照大御神様と混同する者もいるようだけど、別だ。

天照大神には、瀬織津姫という皇后が居られる。


天の世界高天原を統べる日本神界の最高神が『天照大御神』様。

しかし天にあっても、天照大御神様は太陽神ラーではない。


そして伊耶那美神いざなみのみこと様から生まれたアマテラスは本名じゃない。

天照大御神の真名は『あまてる』または『天照神あまてるのおんかみ』というのが正しい。

大日靈貴おおひるめのむち大日巫女貴おおひるめのむちは読み方も実態も同じ役職名。

本名と誤解されている事もあるようだけど、そもそもむちは女性に付けられる。



「ふぅん、永い歴史を誇ってる国なんだぁ」



私は旅行ガイドブックの説明を閉じた。



「この国は世界一長い王朝なんですよ」



この国は三万年前の縄文文化の出土品が発見されているらしい。

つまり、文字や文化はこの国から広まって行ったのは本当の様だ。

色々しがらみを抱える歴史学者が受け入れるかどうか知らないけど。


この国はテラフォーミングの神々が子々孫々ずっと国を治めて来た。

途中、一部はシュメールに残ったけど、天孫降臨として帰ってきている。

天津神も国津神も根は同じ神族だった。


瓊瓊杵尊ににぎのみことは、天照大神あまてらすおおみかみの命により先兵として三種の神器と共に、日向ひむかの高千穂峰に天之鳥舟から天降あまくだった。

木花開耶姫このはなさくやひめ様は瓊瓊杵尊ににぎのみこと様の神妃である。



「それにしても、出雲の社と比べると小さいんだねぇ」


「異国の女神様方、神社は神界である高天原たかまがはら現世うつしよを結ぶ窓口なんですよ。

 今までも彼方此方あちこちの神社で本殿の奥で歓待を受けられましだでしょう?

 現世うつしよの本殿はそんなに大きくはないのです。

 つまり、歓迎を受けた場所は高天原たかまがはらにある本宅に招かれていたのですよ」



後ろから巫女さんが私達に説明をしてくれた。



「そうだったんだ、気が付かなかったなぁ」


「皆様、こちらへどうぞ、歓迎の宴の席にご案内しますので」



ここでも異国の神族である私と何仙姑かせんこを歓迎してくれるようだ。

私は下級神で、国賓となれるほどの立場じゃないと思うんだけど。

この国の神々は何処でも私達を歓待してくれる。



うたげの席で私達は重大なお話を聞かされた。



古例のままに御社殿や御装束神宝を始め、全てを新しくして、大御神にお遷り頂く式年遷宮というお祭りがある。

それは20年毎に東の御敷地である「米座こめのくら」と西の御敷地である「金座かねのくら」とで新宮が遷り変わるそうだ。

古来よりの技術を残すためでもあるけど、国の経済指針にもなっている。

金座かねのくら」に在る時には波乱、激動、物質欲が強い「経済の時代」。

米座こめのくら」に在る時には平和で心豊かな「精神の時代」。


とかく世の中お金が価値の基準になってしまっている。

人の世のまつりごとは金・権力・派閥に凝り固まっている。

しかし「米座こめのくら」に移った今は、精神性を求めるようになると言う。

霊性高まり神々のアドバイスがあれば、より栄える事になるだろうと言われた。




崇神天皇が皇女豊鍬入姫命に命じて、宮中に祭られていた天照大神を、大和国の笠縫邑に祭らせたとあり、これが斎王斎宮の始まりとされる。

現代の斎宮いつきのみや大日靈貴おおひるめのむちとしてあって欲しかったけど、彼女は既婚だし巫女シャーマンでもないから神の言葉を直接聞けないそうだ。



「その考えはユダヤの民が、預言者を求めるのと同じだ。

 何で天道のように直接言葉を伝えないのかなぁ」



シャーマン政治じゃない事を示しているから現代の常識形式に沿っているかもしれないけど。

神に直接お伺いを立てる神制政治なら人類が間違う事も少ないだろうに。

天皇陛下も政治に直接関与しなくなった。



「かつては大本で丑寅の金神国常立尊が復権を企んだが潰されてしまったのだよ」


「それは残念でしたね」



天照大御神様の説明は思い出した順に語られるから、時代的に前後する。


鸕鶿草葺不合うかやふきあえずのみことの時代まで天の浮舟・天の鳥舟を造っていた。

櫛玉饒速日くしたまにぎはやひ命事、崇神天皇すじんてんのうは物部氏の祖先神だという。

饒速日という名義は、敏速に活動して豊穣を実現する穀霊を意味しているそうだ。

櫛玉饒速日くしたまにぎはやひ命は天磐船あめのいわふねに乗って天から倭国に降りたという。

その後、長髄彦ながすねひこの妹、三炊屋媛みかしきやびめと結ばれたそうだ。


その時に持っていた神具、十種神宝とくさのかんだからがあったらしい。

十種神宝とくさのかんだからとは、沖津鏡おきつかがみ辺津鏡へつかがみ八握剣やつかのつるぎ生玉いくたま死返玉まかるかへしのたま足玉たるたま道返玉ちかへしのたま蛇比礼おろちのひれ蜂比礼はちのひれ品物之比礼くさぐさのもののひれの十種。


今は天の浮舟・天の鳥舟・天磐船あめのいわふね十種神宝とくさのかんだからもロストテクノロジーになってしまった。

いくら文明人でも、未開の地で暮らす内に文明の利器は、消耗していき失われてしまう。



「修理する素材も道具や設備、知識の継承も無ければ、そうなっちゃうよね」


「人々は文明を発展させなければならぬが、その方向性が問題なのだよ」


「倭国って何処にあったんですか?」



何仙姑かせんこは『魏志倭人伝は知っていたけど、倭国の場所が特定出来ないと言う。』



邪馬台国倭国は九州なのか近畿なのか、はたまた富士なのか人の間で論争があると言う。



「最初は九州高千穂から始まり、首都はあちこち遷都しているのだ」



九州から四国、そして近畿地方、富士王朝もあったし、今は東京にある。

やまと国は日の本とも書かれし、豈とも書かれた。

日出国ひいずるくに、を標榜し日本ひのもと(にほん)と国号を改めた。

今でもこの国の人間はやまとの民であると言う。


すめらぎ(スメル王)の血統維持しているのが皇室になる。

別の血統を入れると別の王朝になってしまい、スメルの血脈は絶える。

男女同権という綺麗事欺瞞でこれを絶ってはいけない。


皇室は他国の王家とは違うのだという事を歴史を通じて私は知った。



「この国の皇室は、スメルの大君主たる事が大事なのだ」



古代バビロニアのスメルは都市国であって、神宮を中心とした神制政治で市王即神宮の長官を担っていた。

神官の長で王を務めたのがスメルの大君主、

倭国の民は古代スメルの同族で末裔でもある。


天皇家に於けるノブレス・オブリージュとは『すめらぎ(スメル王)の血統維持』にある。

ノブレス・オブリージュとは『高貴な身分には義務が伴う』意味だ。

一般的に財産、権力、社会的地位の保持には義務が伴うことを指す。


現世うつしよでは、この根幹を揺るがす事件が起きているそうだ。

連綿と続く神々はこの事態を許さない。



「元々神々は皆が楽しく暮らせる良い国を造ろうと頑張って来たのだよ」


「そうだったんですかぁ、でも神の世界にも戦いは多いですよね」



アース神界にもラグナレク神々の黄昏の言い伝えはある。

チャンディードゥルガー様のデーヴァ神界にも神々が争った歴史がある。



「人の世界も、神々の世界も時代と共に移り変わりがある。

 縄文の時代のように単一の民族しかいない時代は争いは無い。

 しかし大陸のように異民族ひしめく土地では生存争いが頻発した」


この国は縄文時代、武器が無かったそうだ。

すでに植林や他による稲作・工芸勾玉加工・交易を行っていた。

翡翠の勾玉は鉄より硬い硬度を持っている。

それほど硬い避類をどんな工具を使って加工出来たのか。

それだけでも工業力の高さを示している。


文字だって神代文字が存在していた、

アヒル草文字は漢字のルーツらしい。


この国は世界の雛形になっているという。

だから世界に起こる事は、この国にも起こる。

それは霊界にも神界にも影響が出る。


縄文の時代、土地の気候によって五色人いいろびとが出現し始めた。

神々はそれぞれ五色人いいろびとのコミュニティに皇子を送り王とした。

それが各国の王の始まりとなったそうだ。

アフリカやスメルのように古い文明ほど今は見る影は無い。



「王権神授説にはそういう根拠があったんですね」


「ケルトの民は青色人に属しておったな。

 時期に混血が進み白色人と融合してしまったが」


「私達は青色人だったんですかぁ」



倭国の神話には、人間創造の逸話は無いと天照大御神様は言う。

神々は一人で行動してきた訳じゃなく、大勢仲間を連れていた。

この国の人は、その子孫に当たるという事になる。



「なるほど、土や木を削って人間は出来ている訳じゃないんですね」


「私の所でも女媧じょかが土を捏ねて人間を造った神話が有りますね」



途中で作業に飽きた女媧じょかは、泥に浸した縄を振り回し、飛び散った泥も人間になった話がある。

女媧じょかが直接捏ねて造った人間は高貴な人間となり、飛び散った泥は一般人になったという。



「なんちゅう大雑把な」



でも人は皆、先祖神の子孫と言う方が、矛盾は無いし説得力がある。

神は人間の創造主なんかではなく、支配者でもない。

先祖神は子孫と共にあるという神道の精神は美しいと思った。

支配者の歴史が無ければ、人は力を合わせ、平和を築けるのかもしれないね。

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