第75話「出雲の大社」

私達一行は出雲にやって来た。

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https://www.izumo-kankou.gr.jp/676


この国の神々を祀る各神社には|位階《ヒエラルキー)が存在し、社格と呼ばれているそうだ。

まぁ、私達神族にも上級神がいれば、私の様に下級神もいるし、その中間にも大勢いる。

神格という神界のヒエラルキーは存在するんだよね。

身分制度とは違って、区分と言った方が近いのかも。


頷く皆に、チャンディードゥルガー様の解説講義は続く。


しかし出雲の大社は伊勢神宮と共に、別格扱いになっている特別な神社だそうだ。

御祭神は大国主命おおくにぬしのみこと様と素鵞鳴尊すさのおのみこと様。

旧暦の10月には日本中の神様が集まって、神々同士の集会所となっている。


元々豊葦原瑞穂の国を治めていた国津神である「大国主命おおくにぬしのみこと様」が、天津神「天照大神様」に国を譲る際、自分の家として出雲大社を建てて貰ったのが出雲の大社だ。

出雲大社がいつ建造されたのかは実は解っていない。


本殿のちょうど真裏に素鵞社そがのやしろがひっそりと建ってる。

その素鵞社そがのやしろに大国主大神の父神である素鵞鳴尊すさのおのみこと様が祀られている。


素戔男尊すさのおのみこと様と眷属達は高天原から降下して国津神の祖となった。

外来神である彼等はエリドゥ王アルリムに王権を与え、メソポタミアで文明を定着させた。

実はアヌンナキと思われているのが素戔男尊すさのおのみこと様なのがその正体。


豊葦原瑞穂の国を本格的に治めは始めたのが、素戔男尊すさのおのみこと様のご子息である大国主命おおくにぬしのみこと様で、その系譜の神々は国津神と分類される。



「そんな壮大な歴史がこの国にあったんですねぇ」


「資料を見ると大昔のおやしろは高い所にあったんですね。

 おやしろが長い階段の上に柱に支えられて建ってますよ」



資料を見ていた何仙姑かせんこは昔の社の姿に感心した。


普通、階段上の神殿は石積みの高い壇上にある。

メソポタミアのジッグラトとか、アステカの神殿とか、ピラミッド飛来御堂とか。

柱だけで高い所に神殿があるのはここだけだろう。



「ある程度の高さが無いと天之鳥舟に乗り降りするのに困るのです」


「大昔のおやしろってターミナルだったんですかぁ⁉」


「そんなのは世界各地にいっぱいありましたよ」



天之鳥舟には小型の上陸用舟艇も積んでいたらしい。

巨大な天之鳥舟じゃあ都市部に降りられないから、上陸用舟艇は必要だよね。

大昔の人は上陸用舟艇を見て『神の乗り物メルカバー』と思ったようだ。



「この国にはピラミッドは無いんですね」


「ありますよ」



秋田県鹿角市に「黒又山くろまたやま」通称クロマンタと呼ばれる山がある以外にも要所要所に造られているそうだ。

標高280メートルの円錐形をした黒又山は、環太平洋学会の調査で縄文時代などの祭祀用土器が多数発見され、レーダー調査によってテラス状の人工構造物である可能性が指摘されているそうだ。

頂上から少し下がった所に、1辺10メートルほどの空洞が存在する事が判かっている。





私達は参道を歩き、門となる鳥居をくぐる。



「有名神社だから参拝客が多いねぇ」


「宮司や神主・巫女の数も多いですね」


「国造りの神様のはずなのに「縁結び」で有名なのは変なのじゃ」


「まぁ、その辺は神社経営で収入も要るという事で」


「裏事情ですか」



拝殿の前には参拝者が大勢いる。

暫く境内を見て回って人が減った頃を見計らって挨拶に向かう事にした。



「ごめんくださーい」


「何方(どなた)であられるか」



本殿からやって来たのは御祭神ではないようだ。

格式が高い神社だから侍従長とかが来たのかな。



「外国の女神様方でありましたか、アポイントはありましたでしょうかな?」


「いえ、観光旅行のついでにご挨拶をと思いまして」


「当神社をついでで寄られましたのか?」



宮司と同じような狩衣を着た侍従長と思しき男性は私の一言で目を剥いた。



「当神社も軽く見られたものですな。

 それ所か、当神社の眷属であるうさぎ達が、お連れの獅子に恐れおののいておりますぞ。

 全てが無礼と考えられませなんだか?

 もしくは侵略行為ではありませぬな?」



他国の神殿に挨拶に来て怒られたのは初めてだ。

それにしても此処の神社の眷属はうさぎなんだ。



「それま済まなかったですね、神獣ドゥンは私の眷属なので大目に見てもらえませんか?」


「貴方様は?」


「私はドゥルガーチャンディー、彼女達の付き添いです」


ドゥルガーチャンディー様ですと? 少々お待ち下され」



侍従長と思しき男性は本殿に駆けて行った。


薄々感じてたけど、チャンディードゥルガー様は引率の先生という立場で付き添ってくれてたんだ。

ただ親切に私をこの国に案内してくれていたんだと思ってたけど。

まぁ、ある意味心強いというか、ありがたいというか。




やがて本殿の奥から侍従長と思しき男性が二柱ふたりの男性を連れて来た。

侍従長が雑事を取り仕切っているんだろうな。



「父上様が出迎えなくとも」


「まあまあ、旧知の女神が訪れてくれたんだ、顔を合わせたいじゃないか」



どうやらお二柱ふたり大国主命おおくにぬしのみこと様と素戔男尊すさのおのみこと様の様だ。


私達を厳しく叱責するような目で睥睨する大国主命おおくにぬしのみこと様。

その横で優しい目で私達を出迎えてくれるのが素戔男尊すさのおのみこと様。


何だろうねぇ、八岐大蛇やまたのおろちを倒して奇稲田姫くしなだひめを救った英雄神なのに荒々しさを感じない。

イメージと違って優しいおっちゃんといった風情だ。

もしかして奇稲田姫くしなだひめ様と結ばれて丸くなったのかな。



「お前達か、アポも無しに挨拶に来た来訪女神は」


「はあ、すみません。一般人のご参拝と同じ気分で立ち寄ってしまいました」


ドゥルガーチャンディーさん、久しいな」


素戔男尊すさのおのみこと殿もご健勝の様で」



二柱ふたりはどこで面識を持ったんだろうね。

チャンディードゥルガー様は世界創造に従事したようだけど。

素戔男尊すさのおのみこと様は国土平定の時代の神様だ。

御子息の大国主命おおくにぬしのみこと様は国土平定後に国家創立を行った神様だ。

まあ、とんでもなく永い年月の間、どこかで出会ってるよね?


大国主命おおくにぬしのみこと様のイラ付きは、チャンディードゥルガー様の顔に免じてという事で怒りを収めてもらえた。

厳格なのは現皇統に繋がるお方だから、格式も高く厳しいんだろうね。


どうしてこの神社の眷属が『うさぎ』なのかといえば、大国主命おおくにぬしのみこと様が助けたうさぎが眷属となって縁結びと病気平癒の神使として仕えているからだそうだ。


因みに大国主命と大黒様とシヴァはこの国で混同されているけど別神べつじんだ。

昔、この国に入って来た情報は、不確かな上にバラバラだったんじゃないかと思うよ。

そもそも海の恵みの神『恵比寿』様と国造りの神『大国主命おおくにぬしのみこと様』が横に並ぶ意味が無いし打出の小槌なんて物は持っていない。

そして大国主命おおくにぬしのみこと様は大黒様の様に福々しく太ってもいない。

もちろんデーヴァ神族のシヴァも福神じゃないし、太っていないし色白でもない。

という事は、言葉のこじつけ以外共通性が無い大黒様ってホント、何者だろうね。



「それにしても子供まで混ざっていると思えば天使ではないか」


「はい、天使ですけどいけませんか?」


「下級神分際で気安い口を。

 天使とは神の僕、言わば眷属と同列の者であるな。

 我ら神々と同列に置いてはならぬ」



大国主命おおくにぬしのみこと様の厳しい言葉に項垂れるジブリール。

何だか小さい子が叱責を受けて泣きそうにしているようにも見える。

別にジブリールは悪い事をして厳しい事を言われている訳じゃない。

そんなのは可哀想だ。



「私の側近とでも思って、そこを何とか」


「我はお前の側近などじゃないのじゃ」


「今はそんな意地を通しては駄目ですよ」


「ほう、中国の者は神仙であるのか、珍しい事だ」



どうやら何仙姑かせんこは神々の仲間入りらしい。

流石八仙の一人、実力で神々に並べる実力者というのは凄いね。



大国主命おおくにぬしのみこと殿、ここは私の顔に免じて拘らないという事に願えませんか?」


「う、うむ、ドゥルガーチャンディー様がその様に仰るなら致し方あるまい」


「そうだぞ、大己貴おおなむじ、せっかくご挨拶に寄ってもらったんだ、場の空気を悪くしてどうする」


「すまぬ、父上」



チャンディードゥルガー様の執成とりなしで事は収めてくれる事になった。

外来神といえども、これが上級神の御威光というやつか。

下級神の私じゃぁ、何の抵抗にもならなかったね。

一般神いっぱんじんと上位者はこれほど違うんだよ。




その晩、本殿の奥で私達を歓迎の宴を催してくれる事になった。


上座では素戔男尊すさのおのみこと様、大国主命おおくにぬしのみこと様、チャンディードゥルガー様が昔話と旅の話題で盛り上がる。


私達は下座で大人しく御馳走になる。

しょうがないよね、何たってエライ上級神方々の宴会のご相伴に与っているのだから。




あちらで聞こえてくる話で大国主命おおくにぬしのみこと様の長男である賀茂建角身たけつぬみの命は日向では味耜あじすき高彦根命という別名を持っていて 神武天皇の東遷に活躍した八咫烏やたがらすとして記されて有名な人で、 京都を開発して賀茂氏の祖となったそうだ。

秘密結社八咫烏やたがらすという組織は今でも現存するという。


おお、噂に聞く八咫烏やたがらすとはその方だったのか。




上級神様達の話は、他愛の無い話題を挟みながら時々重い話題が出る。


この国は今、外国から悪神の攻撃に晒されているという。

スラブから「黒い 不幸の神チェルノボグ」は昔から脅威はあったそうだ。

最近は特に中国からの九尾が世界征服を目論んでいるのを阻止しなければ危ない。


そのために人間界で封じ込めるために、日本日・アメリカ・インド・豪州・台湾・EU連合を組み始めるように働きかけている最中らしい。

他にもフランス、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本、イタリア、カナダのG7諸国、日米豪印4カ国のQUADなど各団体で対中包囲網を敷いて封じ込めを図っているのだとか。


そのために神界の思惑は、神一厘の仕組みを補完するのに忙しいらしい。


「今のこの世界は【】から【】を修める【阿修羅】道である。

 誠に困ったものだ」


「人も神々も「あ」行から「ら」行までは学んでも、「わ」行は学んでいないからの。

 「わ」が無いという事は、本当の和、輪、話、環、吾、を知らない事になる。

 今、人の世は金で回る我欲の世界が広まっている」


とは、世界は自分一人で、他は全て自分とは関係ないという認識の事だ。

皇室もそれでおかしくなりそうになっているそうだ。


神々はまず神の世界から改革して人の世を動かしていく仕事をしているそうだ。

私達の主神オーディン様は、そんな仕事をしてるのかな。



「上級神様達は何のお話をしておるのじゃろ」


「あー、あの話題は言霊学を知らないと、さっぱり解りませんよ。

 私に判るのは、言霊学は魔術の原型という事だけですね」


「魔術の根源?

 じゃあ、私の神聖ルーンも」


「そうだと思います」



この国には 言霊の神様の后神・己等乃麻知比売命ことのまちひめみこと様が居られる

言霊神社『事任ことのまま八幡宮』があるのだとか。

この言霊と神代文字『カタカムナ』にも関連性があるらしい。


私も神聖ルーンを極めたいと思ったら、一度訪れた方が良さそうだ。

これを知ってればオーディン様も、首吊って槍で突かれなくて済んだだろうに。

ご苦労な事だと思わずにいられない。

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