第74話「厳島神社」
私達は広島に来た。
よほど名物なのか、お好み焼きの店の看板がやたらと目についた。
「お好み焼きって何じゃ?」
「口で説明するのは難しいですね。
全国的にも様々な形態があるみたいで」
「そんなに?」
「それでもラーメン程じゃないようですよ」
私達は目に付いた近場の店に入る事にした。
https://www.jalan.net/news/img/2017/10/20171020_hiroshima1_05-670x443.jpg
https://www.youtube.com/watch?v=m5PtS5mqxLk
「鉄の調理台で作ってるのじゃ」
「へぇ、面白い料理だね」
「
「何か野菜の量が凄い……」
広島のお好み焼きは麺のベースととキャベツたっぷりだった。
ソースで黒く塗られた表面に、白いマヨビームがまた楽しい。
「結構美味しい……」
「わぁ、豚肉が入っていたのじゃ」
「知らずに食べちゃったんなら、後でアッラー様に謝ったら?
きっと許してくれるよ?」
「ううう、そうじゃな」
「ソースとマヨネーズ以外、私の国でも作れそうな。
でも肝心のソースとマヨネーズが無ければ無理ですね」
「この国の調味料を沢山手に入れた方が良さそうですね、
この後、私達は業務用スーパーを探して各種調味料を大人買いする事になった。
無くなったら移転でまた買いに来れば良いか。
しかし、この時私達はまだ鉄板の秘密を知らなかった。
-------------
次には
https://www.miyajima.or.jp/sightseeing/ss_itsukushima.html
御祭神は天照大御神の御子である
赤い建物が凄くキュートだ。
「アイヤー、綺麗な建物ですね、昔の中華の面影があるというか」
「鳥居が海の中に建っておるのじゃ」
「よく観察すれば、いくつかの建物が集まってるんですね」
「水上舞台での舞も良い物ですよ」
「あそこのテラスで踊るんですか」
そしていつものようにお参りをする。
「ごめんくださーい」
「はーい」
拝殿の向こうから女性が駆けて来た。
今風の服装だけど、神族である事は間違いない。
という事は三女神の誰かだ。
女性は奥に向かって大声で姉妹を呼ぶ。
「イッチ―姉、お客様がいらっしゃいましたよ」
やがて
イッチ―姉は三女神を代表して私達に対応する。
「外国の方々、よくお出でになられました」
「皆さま国籍がバラバラなようですが?」
もう
それはしょうがない。
皆それぞれの国で仲間になったのだから。
「私達は観光とお参りに」
「そうでしたか、ぜひ御ゆるりと御過ごし下さいませ」
「ささ、どうぞ奥の間に」
「ぜひ外国の事をお聞かせくださいな」
私達は厳島神社にお邪魔する事になった。
長女の
次女の
三女の
と姉妹の間で仲良く愛称で呼び合っているそうだ。
そりゃぁ事ある毎に長ったらしい名前で呼んでいられないよね。
イメージしていたような巫女姿じゃなく、今風の私服なのは、巫女衣装は仕事着だという。
言われてみれば、確かに祭儀の場は彼女達にとって仕事場になる。
プライベートな日常を仕事着で過ごすのは問題だ。
私だって戦場に向かう仕事着というか、鎧兜は別にある。
人であれば拝殿でのお参りしか許されない。
しかし私と
そして神からお招きも受けられる。
これはどこの神殿でも同じようなものだね。
主神の名代ではないジブリールは準神扱いになるのかな。
それにしても三女神様かぁ、アスガルズ神界でも運命の
会った事無いけど。
そういえばデーヴァ神界でも
3って何かの神秘数字だったりして。
厳島神社の三女神達は私達の旅の話を喜んで聞いてくれる。
普段業務が忙しくて、私の様に休暇が取れないのかも。
と言うより、経営者側が長期休暇を取ったなんて聞かないか。
そもそも厳島神社という職場に住んでるし。
「他所の神界を訪れられるなんて、とても楽しそうですわ」
「私も外国の女神様方にお会い出来るだけでも嬉しいのですよ」
「アレクロウド王国のお話しも面白かったです」
三女神が用意してくれたお茶菓子はじきに底をついた。
それじゃあと私の方からアクアビットや果物を持ち出した。
「その果物は仙境の桃園で採って来た物ですね」
「うん、そうだよ
「仙境の果物とは、これまた珍しい物を」
「アクアビットは酒精が強いから果物を絞って混ぜれば美味しくなると思うんですよ」
「では、私共の方からもお神酒を注いで進ぜましょう」
「あ、ありがとうございます、
この国のお酒は甘くてフルーティーだから好きですよ」
「私の事は気安く『タッちゃん』と呼んで頂いた方が」
「なら私の事は『タッキー』と呼んで下さいませ」
「そんな呼び方したら、私なんか『ヒーちゃん』になっちゃいますよぅ」
「みんな楽しそうで羨ましいのじゃ、お酒が飲めないのはつまらないのぅ」
「ガウガウ」
「あらやだ、こんなに大きな獅子がいたのに気が付きませんでしたわ」
「この子は私の神獣ドゥンですから、恐がらなくて大丈夫ですよ」
こんな具合に女神達の酒宴は夜遅くまで続いた。
ドゥンが酔っぱらうのはマタタビだけじゃなかったんだ。
ああぁ、後ろにこっそりキュウリを置いてみたい。
やがて盛り上がりも終わって終盤に近づいた。
いつの間にかジブリールは隅で寝ているし、私も眠くなってきた。
「皆様、宜しければ、当神社にお泊り下さい」
「そうですね、今布団を用意させますので」
「今客間を用意させますね」
「ああ、すみません」
「よろしくお願いします」
こんな具合に私達は厳島神社で一泊させてもらう事になった。
布団は畳の上に敷かれている。
ベッドじゃない寝床で眠るのは初めての経験だ。
いままではホテルに泊まったからベッドで寝てた。
でも、こういうのも悪くない。
いくら寝相が悪くても落ちる危険が無いのだから。
畳の香りも懐かしい干し草の香りを思い出す。
☆
「うわぁ、海の向こうから日が昇るのが綺麗なのじゃ」
部屋の外で大声で感動するジブリールの声で目が覚める。
部屋の外に出ると海にそそり立つ鳥居の向こう、水平線を赤く染めながら日が昇って来たのが見える。
こんな風景もこの国の神の世界を十分に感じさせてくれる。
「なんとも心地良い世界だねぇ」
「アイヤー、如何にも『日出る国』と自慢するだけありますね」
「多くの神々が移住する気持ちが解るでしょう?」
「そうですね、私も
私達は朝食を頂いてから、次の観光地、出雲を目指す事にする。
私は用意された朝食を見て思わず引いた。
毎度お馴染みの白米に味噌スープ。
これは良いんだけど、
黒い紙のような海苔。
噂に聞いていた生卵。
悪評高い納豆。
忍者の薬と聞いた梅干し。
どれも初体験の食材だ。
世界的に見て海藻を消化出来るのは、この国の人位しかいないと聞いた。
卵を生で食べるのは、蛇と日本人しかいないとも聞いている。
納豆は臭いチーズに慣れた国の人でなければキツイらしい。
アフリカの人にはチョコレートの味がするらしい。
世界一酸っぱい梅干しは慣れれば美味しいらしいけど。
私達は全員ギブアップした。
「では、私達はこれでお暇して次の観光地に向かいますので」
「この国を楽しんで下さいね」
「これはお土産です」
ここでも御朱印をお土産に貰った。
聞いてみた所、御朱印は神殿への立ち入り許可と、神への面会許可状だったらしい。
つまり、神より下賜された御朱印は、親愛と関係を認めた信用状のような物なのかも。
何かで困った時に御朱印を見せれば、融通を利かせてくれるのかな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます