第72話「九州観光④」

私達はガイドブックに紹介されている白川水源に来た。

https://kumamoto.guide/spots/detail/219

環境庁の「名水百選」に選ばれるほど有名な水源らしい。



「おおおぉぉぉ-、なんという美しい水なのじゃぁ」


「凄いです、底が見える池だなんて」


「これは絵になりますね」



底が見える綺麗な池のある白川水源では水に綺麗さに驚いた。

流れる川の水でも、そのまま飲めそうなほど透明度が高い。

泉の女神なんてのがいても不思議じゃないね。


……本当に飲んでも良いのかな。



「美味しい……」



飲んでみると水がこんなに美味しい物だと初めて知ったよ。

皆水のおいしさに感動をしてしまったようだ。



「ああ、ガンジスの流れですら、この水には敵いませんね」


「なぜ中東にはこれほどの水が無いのじゃぁ」


「アイヤー、仙境の水より清らかだなんて」



私は空いた酒瓶にここの水を入れて持ち帰ることにした。







次に来たのは熊本が全国に誇る3333段の石段で有名な釈迦院御坂遊歩道。

https://www.jalan.net/kankou/spt_43346aj2200131828/



「ずいぶん折れ曲がって続いていますね」


九十九折つづらおりっていう形らしいね」


「歩いて上るときついのじゃ」


「結構高い所まで続いていますね」


全段登り切ろうとチャレンジする人が多いという噂通り、何人も速足ですれ違う人がいた。

途中に休憩所やトイレなどもあるから休めるのがありがたい。


階段が終わると山門があり、奥に釈迦院が見える。

この国でもゴータマ・シッダルタさん有名人だね。

いくら釈迦院といっても開祖に逢える訳じゃないけど。


お寺の参拝ってどうやれば良いんだろ。

きっと神社での作法とは違うよね。

そもそもお寺には山門はあるけど鳥居は無い。







私達は更に北上する。

何仙姑かせんこの強い勧めもあって福岡に辿り着く。

と言うより、強引に福岡行になったんだけど。


人の目についても違和感を感じられない程度に皆姿を取り繕った。

中国人の何仙姑かせんこは今風の衣装で終わる。

腕の多いチャンディードゥルガー様は隠すのが大変そうだ。

ともあれ、これで誰が見ても、子連れの外人さん一行に見てもらえるだろう。



「福岡県久留米はトンコツラーメン発祥地何ですよ。

 博多ラーメンの聖地なんです、なんて素晴らしい事でしょう」


「ラーメンの聖地かい!」



長浜ラーメンは長浜にある魚市場の前に出来た屋台「元祖長浜屋」が発祥らしい、

細麺・替玉文化の発祥地で、一般的な「博多ラーメン」のイメージのルーツとなっているのだとか。

ガイドブックによれば、博多では屋台が有名なようだ。


数多くある屋台は全部回る事は出来そうもないね。



「屋台って何じゃ?」


「ストリートフードの露店って言ったら良いのかな」


「幕屋の中でお酒を呑みながら色々食べられるそうですよ。

 『おでん』という煮込み料理や『ヤキトリ』も美味しいと聞いてます」


「また酒を呑むのかや?」


「何事も適度に楽しめれば良いのです」


「この国のお酒は甘くて美味しいですよ」


「米で作られたお酒なのかぁ、焼酎のカクテルも美味しいよ」



私は調べたところ、麹菌というのが重要なようだ。

調味料として使われる醤油・味噌も麹菌が大きく関係している。

そもそも菌は黴菌ばいきんと呼ばれるように、人体に良く無い物が多いはず。

この国の人達? または酒の神がどうやって無害な菌を作ったのか不思議だ。

あちらの世界でカビが付いた食物はチーズくらいしか知らない。



「ヒルト、菌は麹菌だけではないですよ。

 納豆菌やビフィズス菌も健康に良いと聞いています」


「菌を使いこなしてるんですかぁ、何にしても最先端の国というか。

 菌で役に立つのはペニシリンしか知らなかったですよ」


「ヒルトさん、キノコだって菌類ですよ」


「野菜じゃないのは知ってたけど、言われてみればその通りだわ」


「日が暮れるまで時間はあります。

 それまでラーメンを食べに行きましょうよ皆さん」



何仙姑かせんこはそればっかりだ。

長崎には有名な『長崎ちゃんぽん』があるらしい。

まぁ、彼女の当初の目的がラーメン旅行だから仕方が無いけど。

そんなもんばっかり食べてると終いにゃデブるよ?


でも本当に店毎に違う料理なんだよね。

ある程度のベースは同じだけど、割と違いがある。

何より食感が違うのが面白いというか。

ドンブリというボウルに入っているだけじゃなく、汁が無い物やディップして漬けて食べる物もある。

この国って食に対する追及心が凄いのかな。



「ヒルト、追及心が凄いのは食文化だけじゃありませんよ」


「そうなんですか? チャンディードゥルガー様」



食文化どころかマンガやアニメの文化や工業力も凄いらしい。


16世紀にヨーロッパから東アジアへ鉄砲が伝わった。

と言うより、貿易で訪れたポルトガル人が、2丁の鉄砲を置いて帰った。

文化力の誇示という意味もあったようだけど、数年後に再訪した時、鉄砲は量産されていたという。

地の工業力が劣る他の国ではそんな事は出来なかった。

その事実に唖然としたポルトガル人は征服を諦めるしかなかったという。



「何だか凄い国なんですね」


「ピラミッドの頂点にある国、その意味は追々知る事になるでしょう」


「はあ、そうなんですか」



チャンディードゥルガー様はまだ何かを含んでいる様だ。

ひょっとしてただの観光旅行じゃ済まない事になる?



「またそんな難しい事を」



何仙姑かせんこが話題をぶった切ってくれたお陰で話題が変わる。

それは良いんだけど、行き先はラーメン屋なんだよね。

地域柄どこの店もトンコツラーメンが殆どだった。

不貞腐れるジブリールを他所に私達は堪能する。




やがて夕方になり、開店する屋台が増え始めた。

私達は珍しい料理をチョイスしながら屋台をハシゴする。


https://fukuoka-bocco.com/wp-content/uploads/2016/12/taka-food1-600x398.jpg



「ヤキトリって色々な部位を食べられるんですね」


「七味というスパイスをかければ私好みの味になりますよ」


「これなら我にも食べられるのじゃ」


「んー、これはビールが美味しく飲めますよ」



料理の一串一串小さいのがどうかと思ったけど、お酒を呑みながらチビチビやるのが丁度良いサイズかも。

これはご飯のおかずじゃなくて、酒の肴そのものなんだ。

軟骨というのも初めて食べた。

味は無いけどコリコリとした食感を楽しめるんだね。







https://yokanavi.com/assets/uploads/2018/05/720a58558aad1db00de3e7faf1bc33e8-1024x683.jpg



「このおでんと言う煮物料理も良いですねぇ」


「具材破何でしょう」


「魚のり身が多いと聞きましたけど、色々種類がありますね」



材料が見抜けなかったほど面白い料理だと思った。

これらの煮物の材料は魚で出来てるんだ。

全然魚臭く無いし食感も魚とは思えない。

でもどれも不味い物は無い。



「我はこの店の雰囲気が好きになりそうじゃ」



屋台の店は店主と客の距離が近いせいか、ジブリールの言うように暖かい人情味を感じられる。

私も市井の者なら、こんな店を出してみるのも面白いかも。


そして屋台でもラーメンを食べる何仙姑かせんこ

何が彼女をラーメンに駆り立てるのか。





次は関門海峡を見て下関に渡る事にする。

九州から本州にに入るんだね。

https://www.pa.qsr.mlit.go.jp/kanmon/2kanmon/images/kanmon_kyou.jpg

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