第60話「ホータン」
私達はホータンにやって来た。
シルクロードの一つ西域南道沿いにあった仏教王国だった所だ。
タリム盆地のタクラマカン砂漠の南に位置する。
現在では中華人民共和国新疆ウイグル自治区にあたる。
旅行ガイドによれば、その後11世紀始めにイスラムの侵攻を受けた。
その支配下に入ってから、住民もイスラム化してきました。
またホータン北方のタクラマカン砂漠にあるダンダンウィリク遺跡で、ホータン王に嫁いで来た中国の王女が、髪の中に蚕の卵を隠していたと見られる壁画が発見されている事から、中国以外で絹が生産された初めての場所とされています。
伝説によると、インドの仏教徒皇帝アショーカの長男が、紀元前三世紀初めに国の基礎を建てたという。
これより数世紀前から月氏による西域を除く地域との軟玉、硬玉の貿易があった事が知られている。
ホータンで産出する玉は「禺氏の玉」と呼ばれ、貴重な上あまり産出しない中国では珍重された。
これが和田玉である。この禺氏は月氏のことである。
その後、ホータン王国は仏教とりわけ大乗仏教の中心地の一つとなった。
これに対して砂漠の反対側にある亀茲国は縁覚系の仏教王国だった。
中国の僧法顕が、五世紀始めにホータン王国にある大小十四の僧院を訪れている。
文化交流により、中国語、サンスクリット語、プラークリット語、チベット語などが使われていた。
十一世紀のトルコの学者マフムード・カーシュガリーは著書の中で、ホータンへのイスラム教伝道について川が物を押し流すように、我々は都市に押し寄せた。我々は仏僧院を破壊した。葉の上に立っているブッダの彫像もと述べている。
「ふーん、ここでも仏教遺跡は破壊されちゃったんだね」
「それはじゃな、仏教とやらが間違った宗教だからじゃ。
偉大なるアッラーがムハンマドに伝えたクルアーンを守っておれば間違いが無いのじゃ」
ジブリールは誇らしげに胸を張る。
「間違っているか、どうかは置いといて、
貴女達は開祖ゴータマ・シッダルタが何を教えていたのか知っていますか?」
「さあ?」
「そんなもん知らん。知る必要も無いのじゃ」
「まぁ、興味の無い人にはそうでしょうね」
「貴女達だって困ったり、悩んだり、苦しんだりするでしょう?」
「まあ、そりゃ」
「そんなの誰だってそうじゃろ」
「物事には何事も原因と結果があるのですよ。
困ったり、悩んだり、苦しんだりする事が結果だとして、原因があるはずです」
「そうですね」
「その通りじゃ」
「だから何が原因なのかを見極めれば、解決の道も開かれます。
苦しみを生む原因を最初から見極めて選択しなければ、その苦しみは発生しないでしょう?」
「そうですね」
「うん、その通りじゃ」
「だから、それを知るようにしましょうと言うのが仏道なのですよ」
「解り易いですね」
「なんじゃ、我を教化しようと言うのかや?」
「知恵ある者は、自分を見つめ考えれば良いのですよ」
「仏教ってそういうものなんですか?」
「まだまだ奥が深いですが、今回はここまでですね」
さすが
難しい事を解り易く説明が出来るんだ。
「
「知恵ある者は、自分を見つめ考えれ、だよ」
「それじゃぁ、我が阿保みたいじゃないか」
マリクワト遺跡と言われるマリクワット古城の観光に行った。
遺跡の周囲はゴビが広がっていいるから、遺跡の入り口から電気カートに乗って訪れた。
ホータン市の南25km。漢代から唐代にかけてのウテン国の都跡で、南北1.5km、東西800mの規模をもつ遺跡。
地上には陶器片が散乱しているらしい。
日乾しレンガで建てられた遺跡はあまり残っていなく、伽藍跡と考えられる建物が見える程度だった。
次に私達は玉門関を観光しに行った。
玉門関は敦煌市内から西北に80km、東西24m、南北264m、高さ9,7m。
西・北面に門が設けられていた。
前漢の武帝の時代に西域北道への関所として、長城とともに築かれたそうだ。
「玉門関」の名前は、ホータンで産出された「玉石」がここを通り、中国へ入ってきたことに由来するそうだ。
スタインが「玉門都尉」と記載された木簡を発掘した事から、史書に記載された遺跡であることが特定されたそうだ。
漢代に西域に汗血馬をもとめた李行利が遠征に失敗し、玉門関まで戻ってきた際に武帝が怒りのあまり門を閉じたというエピソードは有名らしい。
「『玉石』って何ですかね?」
「『玉石』と言うのは翡翠ですね。
ターコイズも玉と扱われていたようで、今の世の中でも装飾品などとして愛用されていますよ」
「宝石の事でしたか」
「腕の多い女神様は、物知りなのじゃなぁ」
ホータンはシルクロードの要衝だから絹も有名らしい。
「シルクロードって何処まで続いていたんでしょうね」
「東は豊葦原瑞穂の国までですね」
「え?」
「だって、豊葦原瑞穂の国って金が採掘されたんですよ。
世界中、その金が目当てで交易を行ってのですよ」
「何だか要所要所で豊葦原瑞穂の国の名が出てきますね」
「だって、私達が今いるこの星はピラミッド状の形をしていたのですから。
豊葦原瑞穂の国の位置は、その頂点部分に当たりますね」
実際に世界の地脈線を引いてみれば、それは面を構成する。
偏にピラミッドと言っても、各面は球状の集まりだから、大まかに見れば歪んだ球体になる。
「え?」
「我等のいる世界はピラミッドだと言うのかや?
何故そんな事を知っているのじゃ」
「世界を創造する時に私も参加しましたから」
「いいい?」
「う、嘘じゃ、世界は偉大なるアッラー様が創られたのじゃ」
「いくら私達が神でも、世界創造なんて大事業は
「我はそんな事信じぬ。信じぬぞ」
「なら、
女神の言葉を聞けず、調べず、感情で歪曲する天使なんて要らないから」
「う、そ、それは……」
「先にも言いましたよね?
信じるも信じないも貴女次第だと。
私は貴女に宗教替えを促しているつもりもありません。
別に信じなくても良いのですが、せめて公正に正否を調べてみようという姿勢は欲しいですよね」
「そ、その通りですのじゃ。
すみませんでした、女神
「何事も
「は、はひ、その通りですじゃ」
何なんだろう、女神
我の仲間の大天使達は信じろ、背信するなとは言うけど、公正に正否を調べてみよとは言わなんだ。
よほど自信があるのだろうか、もしくは……。
ひょっとして、我は付いて来た事が失敗だった?
でも我には正論に返せる言葉が無いのじゃ。
ジブリールは俯いて黙ってしまった。
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