第44話「女神ドゥルガー」
「恐れる必要はありません」
九人の巫女達はそれぞれの色の光にに包まれ始めた。
円陣の巫女達を線で繋げば、九芒星形と言っても過言じゃないだろう。
星形の頂点に一人づつ立っている。
そうだ、これはまるで魔法陣と変わらない。
やがて九人の光は私の上空で一つの光の塊になった。
光の塊が人の形を取り始める頃、九人の姿は光に消えて行く。
「ようこそ、デーヴァ神界の私の元に」
人型となった光の塊は
その女神の名はドゥルガー。
神像で見た物と同じ、十の腕を持っていた。
「貴女様は女神ドゥルガー!」
「あ、あの、巫女の方々はどうなったのですか」
突然の展開にアルレースも動揺を隠せないようだ。
「あの九人は私自身、シャクティなのです」
「へぁぁぁ?」
「何でこんな、回りくどい事を」
「丁度今、私の祭りを行っていたでしょう。
私の臣民を見て回る必要があった。
その中に神族の者がいたから、茶会に誘って進ぜようと思ったのです。
もう少しすれば、友の女神達も集まるから楽しんで行きなさい」
私達は女神ドゥルガーの神殿に案内され、茶会の席に招待された。
女神ドゥルガーも戦女神と知って警戒していた。
だけどカーリーのような凶暴な姿じゃない事に安心感を覚えた。
どちらかと言えば、色白の肌で民族的顔立ちはきつそうな感じはする。
彼女の説明によれば、チャンディーガルという都はドゥルガーの別名チャンディーに由来するらしい。
アテナの名に由来するアテナイと同じような都市なんだ。
「何だかドゥルガーと言うより、チャンディーの方が可愛い感じがします」
「どちらで呼んでもらっても良いのですよ」
アルレースの感想にドゥルガーは微笑んで返してくれる。
有名な神様って別名を持つ方って多いんだよね。
そういえば参拝巡礼の最後の日に聞いたマントラを思い出した。
『ナモサッタナン・サンミャクサンモダクチナン・タニヤタ・オン・シャレイ・シュレイ・チュンディ・ソワカ』
この中にあったチュンディってチャンディーと同じなんだ。
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シャラド・ナヴラートリのお祭りも終わり、都も落ち着きを取り戻し始めた頃、チャンディー様の友人達がやって来た。
女神様の友人って、やっぱり女神様なんだよね。
皆、デーヴァ神界の上位女神だったりする。
有名な最高神の一人、シヴァの神妃のパールバティ。
腕の数は二本で全身金色をしている。
最高神の一人、ヴィシュヌの神妃ラクシュミー。
吉祥の女神様らしいけど、腕が四本ある。
どうしてデーヴァ神界の神様達って人間離れしてるんだろ。
「あら、ドゥルガーはこの方々にチャンディーと呼ばれているのですか」
「愛称の様で良いですね、私達も別名で呼んでもらいましょうか」
パールバティとラクシュミーはそんな事を言い出した。
パールバティの別名はウマー、
ラクシュミーの別名はシュリーらしい。
やっぱり長い名前を言うより、短い方が話し易いよね。
茶会の話題は私の旅の話題が中心になった。
そんな時、別の神界からの来訪者である私、ヒルトが注目される。
「貴女は妖精フェアリーを連れているのですね」
「まあ、妖精フェアリーとは珍しいですね」
「私の本当の姿は人間で、アレクロウド王国の女性騎士をしていたんです」
「女性騎士ですか、どうして妖精フェアリーの姿に?」
「軍神アレスにこの姿に変えられてしまったのです」
「軍神アレス?」
「オリンポス神界の軍神アレスです」
女神たちはアルレースに同情し、軍神アレスに怒りを感じてくれた。
やっぱり女神だけあって女性の味方をしてくれる。
「ヒルトさんでは
「私は神族でも下級の者なので」
「オリンポス神界のアテナ様とアルテミス様が怒りに行ってくれたのですが、力及ばなかったのです」
「ふうん、アレスってのは女の敵ですね」
「アルレースの話を聞いていたら私も許せなくなりましたわ」
「私達も乗り込んでアレスとやらを叱り付けてやりません事?」
「そうですね、それが良い」
「あの、他所の神界に怒鳴り込むのは国際問題になり兼ねないと思うんですが」
私の心配は女神の一言で一蹴される。
「心配無用です。
私達を誰だと思うのです?」
「デーヴァ神界の女神様だと」
「私の怒りの力の具現はカーリーなのです」
「私の戦闘力がカーリーでもあるんですよ。
逆らう者は全て力で捻じ伏せるのみ!」
「どっひゃああぁぁぁぁぁぁ~~~~~~!!!!!!」
カーリーは女神の二面性を体現した姿のようだ。
今、アレスは決して敵に回してはいけない女神から敵と認識された。
「お二人とも殺戮の権化だったのですかぁ」
この女神達の暴虐に屈する事が無い神なんているだろうか。
例え他所の神界と戦争になっても討ち勝てるのかもしれない。
「では
「え? 別の神界まで走る???」
「ヒルトさん達は私の神獣ドゥンの背に乗りなさい」
神獣ドゥンはドデカいライオンだった。
義憤に駆られた三女神は移転を使わず、オリンポス神界まで駆け抜けるつもりの様だ。
よく見れば皆さん靴を履いていない。
裸足で駆け抜けるつもりなんですかぁ。
「なんちゅぅパワフルな」
「インドの女神様達は恐いです」
三女神と私達の乗せた神獣ドゥンは、息を切らす事も無く疾走した。
アルレースは女神達の神気と存在感に圧され、顔が青ざめている。
ゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッゴッ
と駆け足を響かせ、空間も次元も押し退け、ぶち破り、オリンポス神界を目指す。
走破の途中、視界の端で時々何かが弾け飛び、断続的に閃光が瞬いた。
何処を走っているのか判らないけど、人や建物など障害物があっても踏み砕かれているかも。
この圧倒的破壊力は正に破壊の女神の名に相応しい。
せめて最高神ゼウスに話を付けなくて良いのだろうか。
いくら女好きのゼウスでも、あのカーリーに手を出せるとは思えない。
いや、それ以上に手を出したいと思う男神っているんか?
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