第42話「デーヴァ神界」
次に私達が来たのは、インドのデーヴァ神界だ。
ここの神界にも非常に多くの神様達がいる。
「ここも暑いですね」
「ここの神々は今までと同じように民俗学的背景もあるけど、哲学的背景もあるんだ。
インドは0を発明した国だから凄いよ」
「0の発明が凄いのですか?」
アルレースは解らない様子。
まぁ、数学の世界で凄いという事なんだけどね。
「それにしても街中の雑踏が凄いです。
こんなに多くの人を見るのは初めてというか。
何故か人混みの中に牛までいるし……」
「ここの世界で牛は聖獣と
「聖獣なのですか、でも聖獣の臭いも酷いと思います」
ヒンドゥー教徒は牛を食べない。
なので道路や駅など
畑を持ってる農家の人は皆、農作業に牛を使う所が多い。
そういう牛も野放し状態なのはざらにある光景だったりする。
ここは暑い国だからガンジス川は生活や信仰に切っても切り離せないのだろう。
多くの人達が水泳(沐浴?)していたり賑やかだ。
少々衛生的に心配になるけど。
山王ヒマーラヤの娘、
破壊と踊りの神シヴァの神妃と言われている。
時々食堂でチャパティと香辛料の効いた料理を食べた。
殆どの人はナンを食べないんだね。
どうやらタンドリーという窯を持つのは上流階級の者位しかいないらしい。
言われてみれば、ナンはタンドリーが無ければ焼けないね。
「クセの強い料理ですが、悪くないですね」
「でも毎日の食事だと、体がカレー臭くなりそう」
間違いなく体臭が変わると思う。
私達は観光であちこちの寺院を巡った。
多くの神々のそれぞれの寺院がある。
寺院は原色でケバケバしい色が使われ目が痛い。
「この世界では神殿と言わないのですか?
神殿と寺院って何が違うのででしょうね」
寺院にはヒンズーの神々が祀られてるけど、確かに神殿とは言わない。
何が違って区別してるのかな。
神殿は神を祀る場所で、神に仕える者の施祭祀設?
寺院は神仏を祀る場所で、神仏に修行の助力を願う者の活動の場?
どちらも祭神を祀ってるし、儀式や祈祷してるよね。
「うーん、考えてみたけど判んないや。
一つだけ判るのは、寺院には修行者やサドゥと呼ばれる苦行者がいるって事かな」
「修行者や苦行者は何をしてるんでしょう?」
「ヨーガとか瞑想かな。
目的や行法は人それぞれだとは思うけど、よく解らない」
「女神であられるヒルト様にも、解らない事が有るのですね」
「私は全知全能と言われるほど上級の者じゃないし」
「すみません、口が過ぎたようです」
胸ポケットの中でアルレースは畏まってしまった。
アルレースは知らなくて聞いてるのだから、怒れるほどの事じゃ無い。
その後もタージ・マハルや太陽の神殿、コナラークとベンガル湾の聖地を観光した。
次なる観光地はカーリー寺院だ。
「カーリー様はどの様な女神様なのですか?」
「どれどれ、血と殺戮を好む戦いの女神らしい」
「えええ! 戦いの女神ですか、そういえばアテナ様も軍神でしたね」
カーリー寺院観光でアルレースは絶句した。
「ななな、何ですか、あの女神様は、悪魔? 魔神でしょうか」
青黒い肌で四本の腕、長い舌を出し、生首の首飾り姿。
それが血と殺戮を好む戦いの女神カーリー。
軍神アテナを指揮官とみるなら、女神カーリーはONEWOMAN ARMY(一人だけの軍隊)といった所か、最終兵器といった所か。
神々の戦いにおいて
誰にも女神カーリーの殺戮を止められず、破壊神シヴァが踏み付けられた事で正気を取り戻したという。破壊神シヴァの神妃パールバティの怒りの姿が女神カーリーとも言われている。
「恐ろしい女神様ですね。
絶対に近寄りたくないというか……」
今でも寺院で
カーリー像の前で清めた子山羊の首を固定し、斧で一気に首を切断する。
血が噴き出て、残った胴体がよたよた動いて歩く。
「ひぃ! 何て惨たらしい儀式を」
アルレースはショックを受けたようだ。
でも彼女の世界で罪人の斬首刑は珍しく無いんだよね。
さすがに貴族のお嬢様であるアルレースは見た事が無かったのかも。
幸いな事に、ここの寺院に女神カーリーの気配は無い。
神族の私でも、まともに話が出来ると思えないよ。
今日は酷い物観ちゃったから、今度は綺麗なものを観たい。
そんな訳で、次にはインド北部チャンディーガルという都に行ってみる事にした。
「チャンディーの砦」という意味だそうで、ル・コルビュジエ、ピエール・ジャンヌレのニュータウンモダン建築計画が数多く存在し、世界遺産「ル・コルビュジエの建築作品-近代建築運動への顕著な貢献-」の構成資産とされているらしい。
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