第38話「オリンポス神界観光」

さて、次はどうしよう。

私の目的としては旅行を続けたい。

今起こっているアクシデントは旅行中のイベントの一つと思っておこう。

やがてアテナもお菓子とジュースを用意してやって来る。



「私達の力及ばず申し訳無く思います」



アルテミスは私に謝罪をしてくれる。



「皆さんは悪くないですよ。

 悪いのはアレスなんだから。

 私は皆さまに感謝してます」


「その様に言って頂ければ助かります」


「ヒルトさんはこの後どうします?」



アテナは私の予定を気遣ってくれている様だ。



「そうですねぇ、このままだとらちが明かないから旅行を続けようかと」


「そうですねヒルトさんは旅行中でしたね」


「お詫びにオリンポス神界を案内して差し上げようと思ったのですが」



女神アテナの案内でオリンポス神界を観光するのも悪くない。

ここは結構長閑のどかで牧歌的雰囲気が感じられるんだよね。



「そのお申し出、魅力的ですね」


「貴女方はこの神殿に宿泊すれば良いと思っています。

 観光案内なら、私達がお連れしますわ」



おおー、アテナとアルテミスの案内で観光出来るのか。

これは良い。

ギリシャって色々問題あるけど、観光立国なんだよね。


私は地図と旅行ガイドを広げて調べてみる、


フィロンが、七つの見るべきものとして紹介した『世界の七不思議』が知られる。

それが以下の七つ。


①ギザのピラミッド

②アレキサンドリアの大灯台

③オリンピアのゼウス像

④エフェソスのアルテミス神殿

⑤ハリカルナッソスのマウソロス霊廟

⑥ロドス島の巨像

⑦バビロンの空中庭園


①ギザのピラミッドと②アレキサンドリアの大灯台はエジプトだし、

⑦バビロンの空中庭園はメソポタミアになる。

どちらも文明の地で神界が存在する。


ここで案内してもらえるのは四ヵ所。

③オリンピアのゼウス像

④エフェソスのアルテミス神殿

⑤ハリカルナッソスのマウソロス霊廟

⑥ロドス島の巨像


ちょうど祭神のアルテミスもいる事だから、お宅訪問になるのかな。

アテナとアルテミスはジモピーだから穴場も結構知ってるだろうし。


私達はもうしばらくお世話になる事にした。

アルレースは嬉しそうだし、もうしばらくの間良いよね?





私達はアテナとアルテミスに連れられ観光に勤しんだ。

やっぱり観光の楽しみは観て食べて楽しむのが定番だ。


エフェソスのアルテミス神殿にお邪魔した。

オリンピアのゼウス像を観た。

ハリカルナッソスのマウソロス霊廟を観たけど荒れた墓地だった。

ロドス島の巨像は神界の倉庫に解体されて仕舞われてた。


ギリシャと言えば観光立国だから見所はもっとありそうに思う。

他に何かなかったかなと記憶を探す。


ふと思い出したワードがあった。

『アトランティス』

多分この辺の文明圏じゃなかったかな。



「プラトンがエジプトの女神ネイトから話を聞いて『ティマイオス』

 『クリティアス』にアトランティス島の事が書かれていたって噂ですね」



おおー、流石アルテミスは物知りだ。


私達は感心しているとアテナが意外な事を言い出した。



「アトランティスとは私の民が戦ったのです。

 王家がポセイドンの末裔だったけど神性は失われていたし、

 あの時はゼウスが神々を集め、如何な罰を下すか話し合いました。

 会議の結果、アトランティス帝国の敗北と島の破壊が決まったのです」



アルテミスが追随する。


「アトランティス島を海に沈めたのも私達オリンポス神族ですよ」



アトランティスと激しい戦闘になり、女神アテナ率いるアテナイ軍はからくも勝利。

地中海西岸をアトランティス人の支配から解放したという歴史があったという。



「アトランティスって大陸なんじゃ?」


「大陸と言えるほど大きくは無かったですね。

 島と言うには大きい方だとは思いましたが」



アテナは当時を思い出しながら説明してくれた。

そういえば資料の中にもアトランティス島ってあったし。

神々の怒りでアトランティスが一夜で海中に没したという噂も合っている。

丁度この頃、オリハルコンの製法が失伝して伝説の金属と噂された。



「神々の戦いって凄まじい物なのですね。

 いつ頃の戦いだったのですか?」



アルレースはスケールの大きさに驚いている。

開いた口が塞がらない様子。



「アトランティス島を沈めたのは一万二千年前の事です」


「えええええええ、一万二千年前ですかぁ!

 そういえばヒルト様も随分長生きされてましたよね」



目の前のアテナとアルテミスは、一万二千年前の大戦争の頃からいるという事になる。

それは正に不老不死を体現していると言って良い。


とにかく神話を持っている文明はとんでもなく永い歴史がある。

永い歴史の中で記憶も建造物も風化して、伝承も有耶無耶になって行く。

過去に何があったかなど、本当に神のみぞ知るのである。

考古学は過去の遺物の年代測定をし、推測を重ねるしかない学問だ。



「ヘルメスに頼めば、プラトン、アリストテレス、ソクラテス、ピタゴラスとか学問の探求も出来るでしょう」


「それも悪くありませんね」



アテナとアルテミスは面倒臭い事を考え付いたようだ。

流石に頭が膿む事はしたくない。

数学でさえややこしいのに、哲学ともなれば精神が病む。


ヘルメスはひとえに神々の伝令使というだけの神ではない。

旅人、商人などの守護神とか、錬金術にも係わっているくらい知恵者でもある。

伝説的な錬金術師のヘルメス・トリスメギストスの錬金術は「ヘルメスの術」と称されているとか。

エジプトのトート神と共に編み出したのが、有名なタロットカードだったりする。



「うーん、そういうのは遠慮したいです」




程良く観光を終えた私達は次の地を目指す事にした。

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