第34話「アルテミス」
ヘパイストス様から図々しい奴だと、呆れられ怒られちゃったよ。
そりゃそうだよね。
酒だけで剣も貰ったし、盾と兜も修理してもらった。
アルレースにも鎧兜を造ってもらった。
これ以上何を要求するのかと。
「ヒルト様、仕方ありませんよ」
「そだね」
ヘパイストス様からは十分過ぎるほどのおもてなしはしてもらった。
何せ装備のグレードアップに、お金は掛かっていないのだから。
これ以上要求するのは酷ってものだろう。
気を取り直して先に進んだ方が良い。
北に行けばパルテノン神殿がある。
その神殿がアテナの神殿だ。
女神様なら、アルレースの味方になってくれるかも。
「しかし手土産をどうしようかな」
初対面の相手に、手ぶらで会いに行って話をするには難しそうに思える。
私は移転ステーションの売店で買い込んだお土産を見ながら検討する。
同僚に渡すならともかく、初対面の相手に渡すにはショボイかも。
手ぶらで行ったとしても、アテナを護る
「何ですか?
「間違った情報かも知れないから、アルレースは気にしなくて良いよ」
きっといないよね?
鎧兜を着こんで素手で戦う護衛騎士なんて。
ある意味アルレースも同等なのか。
取り敢えず会って挨拶の一つも出来ないんじゃ事は進まない。
私達は神殿に向かう事にする。
神殿はヘパイストス様の神殿と造りは似た様なものだった。
「護衛騎士はいないですね」
「留守なのかな」
神殿の外にある社務所の神官からは、ただの参拝者と見られている感じ。
神官に聞いても女神アテナの事は解らないだろうし。
しょうがないから門前の食堂で食事をする事にした。
オリンポス神界はギリシャ文明圏だから結構郷土料理は豊富。
「何やら判らない料理が多いね」
「でも美味しそうです」
適当に注文してみた。
肉や米などの具材を野菜や葉で包んだ料理のドルマデス。
ほうれん草やフェタチーズが入ったギリシャのパイのスパナコピタ。
チーズを油で焼いた前菜料理のサガナキ。
ヨーグルトのディップ、ザジキ。
どれも結構美味しい。
腹が満足すると、腹ごなしに運動がしたくなる、
眺め回せば、周りに森がある。
やっぱり神殿は杜の中に在らねばならないのは鉄板だね。
杜を失った神殿は神棚程度の窓口でしかない。
窓口じゃぁ神は居住出来ないのだ。
「腹ごなしに森で魔物狩りでもしようか」
「それが良いですね。
狩禁止じゃなければ良いのですが」
とはいえ大きな魔獣は狩り尽してるから、たいした運動になりそうもない。
でも今は獲物よりも運動が大事。
森の中に入ると、先客がいた。
女官に囲まれた高貴そうな女性。
弓が見えるから、狩に来た事は間違い無さそう。
「こんにちはー、儲かってまっか?」
「ボチボチでんなぁ」
いやいやいや、お約束漫才をしてる場合じゃない。
きちんとボケ返してくれる貴婦人も貴婦人だけど。
「ホッホッホッ、面白い方ですね」
「見た所、弓の稽古じゃないですよね?」
「ええ、今日は獲物が渋いですわね」
それ、私のせいだ。
改めて挨拶と自己紹介をした。
「外国から来られたヒルトさんですね。
私の名はアルテミス」
何と森の中で狩猟女神、月のアルテミスと遭遇してしまった。
「貴女はワルキューレなんですね。
よく判りませんが、死神のような仕事でしょうか」
ちゃうわい!
確かに戦士の魂を戦士の館に連れてくけど、決して死神じゃない。
確か資料によると、女神アルテミスって軍神アレスの妹だったよね。
相談するチャンスじゃん。
「軍神アレスの妹君様と見込んで相談したい事があるのですが」
「何でございましょう?」
アルレースに出てきてもらって事情を話した。
軍神アレスの仕返しによって、アルレースがフェアリーにされた事。
出来ればアルレースを元の姿に戻して欲しい事。
「まあ、お兄様はそんな悪戯を」
月の女神アルテミスは困惑した様子。
どんな力関係があるのか知らないけど、アレスに話をつけて欲しい。
ゲームに乱入したのは悪かったけど、あの時はどうしようも無かった。
当事者の私に仕返しするならともかく、なぜ関係無いアルレースを巻き込んだのか。
「多分私から文句を言っても、お兄様は素直に聞き入れて下さらないかも知れません」
何だか意外とアルテミスは弱気だったりする。
軍神だから強く出られないのかな。
なら同じ軍神のアテナを仲間に引き入れたらどうだろう。
カチ込むのに仲間は多いほど良い。
「さっき神殿に寄ったけど、軍神アテナ様にも相談してみるのはどうですか?
ちょうど留守の様でしたが」
「そうですね。
困った貴女の力になって頂けるよう、私からも頼んでみましょう」
「たいしたお礼は出来ませんが、このままではアルレースも困るので」
「そうですね」
アルテミスが仲間に加わった。
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