第33話「ヘパイストス③」

「それは噂に聞く妖精のフェアリーなのか?」



ヘパイストスは実物に出会った事は無いようだ。



「私はヒルト様の護衛騎士なのです。

 昨日は私に暴言を吐かれました、でもヒルト様に無礼は許せません」


「暴言? 覚えが無いんだが……」



昨日の酒盛の記憶が朧気の様子。

まぁ、酔っぱらいってのは大概そんなもの。



「昨日はデュオニソスと盛り上がっていたのは覚えがあるが。

 もし何か言っちまったなら、済まんかったな、騎士殿」



上級神が詫びてくれたから、私は剣のお礼も兼ねてもう一瓶『アクアビット』を進呈する事にした。



「おおう、また酒をくれるのか、嬉しいのぅ」


「あ!」



お酒を取り出した時、アルレース用の鎧兜の箱が転がり出てしまった。



「その箱は何が入ってるんだ?」


「アルレースの鎧兜ですよ」


「ほぅ、妖精の鎧兜か、ちと見せてくれんか?」



ヘパイストスは珍し物好きなのか興味を惹いたようだ。

私は二つの箱の蓋を開けてヘパイストスに差し出した。



「どうぞ」


「ふーむ、どちらも興味深いな」



特にヴィンダーヴル製の鎧兜に注視し始めるヘパイストス。



「これは誰が造ったか解るかね?」


「あ、こちらはドワーフのヴィンダーヴルさんが造った物で、

 こちらの妖精鎧は妖精女王から頂いた物です」


「ふむ、ドワーフが造ったのか。

 知識としてドワーフを知っている程度だが、仕事を見るのは初めてだ」



何だか妖精鎧より、ドワーフ製の方に興味があるみたい。



「儂にも造らせてもらおうか、その妖精騎士殿の鎧兜を」


「え? ヘパイストス様が造って下さるのですか?」


「儂とて物造りの神だ、この鎧兜に込めた職人魂には揺さぶられるものがある。

 ふふ、小癪なドワーフめが、小さくとも隅々まで本物ときたか。

 本物のミニチュアにチャレンジしたくなったぞ」



職人魂に通じるものがあるのかな。

やる気になったヘパイストス様にお願いしてみる事にした。

私はグレードが数段上の剣を貰い、兜と盾も修理された。





そして待つこと三日、出来たと知らせが来た、



「どうだ、悪くない出来だと思うが」


「何か凄いです、黄金色に輝いて」



鍛冶の神ヘパイストス様が本気で造った物だから、Godsゴッズアーマーになる。

オリハルコン製で自動修復機能・自動調整(大きさは自由自在)・防御力大幅アップ・軽い・あらゆる魔法耐性・特殊攻撃無効とオプションが盛沢山だ。


鎧に合わせ、剣も鞘付きで拵えられている。

材質はオリハルコン製、自動修復機能・自動調整(大きさは自由自在)・攻撃力大幅アップ・軽い・あらゆる魔法耐性・特殊攻撃に無効というオプションの付いた神剣だった。


オリハルコンといっても真鍮しんちゅうの系統とは別物になってるんだろうね。

ヘパイストスが手を入れただけあって錆びないらしいし。



「ドワーフ如きの逸品とは物が違うだろ」


「凄過ぎだと思います。

 これを買うには無理そうですね」



私とアルレースは買う事を諦めるしかなさそうだ。

至宝級の逸品だ、買ったとしていくら掛かる事やら。

きっと数十年分の国家予算をつぎ込んでも足りないだろう。

そんな稼ぎは無いし。



「習作だ、金はいいから持っていけ」


「え?」



ヘパイストス様は意外な事を言う。

彼にとっては、まだまだ物足りない出来だと言う。

物造りにどれだけ打ち込めば気が済むんだろうね。


ともあれ、アルレースの鎧兜は三つになった。

儀礼用にヴィンダーヴル製の鎧兜。

普段使い用に妖精鎧。

最終決戦用にヘパイストス謹製Godsゴッズアーマー。



「もう、どんなに感謝しても、感謝し切れません」



ここまでしてもらって、更にお願いするのは何だと思う。

けど、私達には本来の目的がある。

軍神アレスをとっちめるために、味方を作らなきゃいかん。

さすがに望み過ぎかな?


鍛冶の神ヘパイストス様は仲間になってくれるだろうか。

取り敢えず相談してみる事にした。

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