第28話「妖精界からの帰還」
アルレースは特訓の成果が上がって空中戦闘も可能になった。
実力を上げ嬉しそうな顔で話し掛けてくる。
「ヒルト様、これで私も戦力アップ出来ましたので、もっとお役に立てます」
「でも人間に戻ったら、もう飛べないよ?」
「うう、それは悩ましいですね。
ヒルト様のお供出来るから、この姿も捨て難いです」
そうは言うけど、いつかは人間に戻らなきゃ、ご家族は安心出来ないだろうし。
そのためにも軍神アレスに難詰しなきゃならない。
アルレースに空中戦闘の特訓をしてもらったし、妖精鎧も誂えてもらえた。
その間、私は適度にこの世界を観光できた。
だから、そろそろお
私は妖精女王に謁見を申し出て、これからの事を話す。
「ヒルト様は次の世界に旅立たれるのですね」
「ええ、大変にお世話になりました。
早いとこ今回の迷惑の元凶、軍神アレスをとっちめに行きたいので」
とはいえ軍神アレスは上位神で私より神格は全然上なんだよね。
まともに行っても門前払いされて終わりの可能性が高い。
「神をとっちめるのですか。
さすがヒルト様は女神様でございますね。
私共にはその様な事はとてもじゃありませんが出来る事ではありません」
妖精女王は移転ゲートを開き、スヴァルトアルフヘイムに送ってくれる事になった。
この世界は妖精女王の能力で結界が張られ異空間になっている。
今では移転能力が有るから、ここから移転しても良いのだけど。
それだと防衛対策の結界が破られた気分にさせるかもしれない。
私達は妖精女王達に見送られ、一旦スヴァルトアルフヘイムに戻って来る。
そこから移転ステーションに向かって、次の世界に移転する事にした。
「ヒルト様、次はどこの世界でございましょう?」
「次はオリンポス神界にしよう」
今までは上下世界を行き来した。
今度は神界同士存在する横世界の旅になる。
「軍神アレスの本拠地だから、絶対に行かなくちゃ」
「敵軍に加勢した軍神アレスですか、
私の力じゃ軍神アレスに直接カチコミを掛けるのは無理だよ。
ひとえに神界と言っても、様々な神がいる。
先ずは私に協力してくれる神々を味方にしなきゃ勝ち目は無い。
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妖精女王の移転ゲートを潜ると、スヴァルトアルフヘイムの宿の前に出た。
「なるほど、ここに案内された訳かぁ」
まぁ、見知らぬ所に送られ、道に迷うよりはマシだとは思う。
その時、後ろから声がした。
「あー、行方不明のお姉さんだ」
見れば、声の主は宿屋の少女アルテちゃんだった。
宿では朝食の準備をしたのに、いつの間にかいなくなった私達を心配したらしい。
「なんで黙って出て行っちゃったんですか」
「ごめんねぇ、私達クーフーリンに捕まっちゃてさぁ」
「ええ⁈ お姉さん、悪い子なんですか?」
どうやら、この世界『悪い子は妖精騎士に捕まって連れて行かれる』と子供に教えているようだ。
「それは私が攫われた妖精と間違えられたからですよ」
ポケットからアルレースが出て来て擁護する。
妖精女王と話が付いた後だから、堂々と出ても問題は無いはずだ。
しかしアルテちゃんは絶句した。
「妖精さんが……」
「もう大丈夫です。
悪い妖精はヒルト様が
「悪い妖精さんを
「そうです。
騎士である私もヒルト様も強いのです」
「ほんと? すごーい」
アルテちゃんはこれで納得してくれたようだ。
しかし宿の御主人も心配してたなら、一言挨拶に寄った方が良いかも。
案の定、宿の御夫婦は私が姿を消した事で心配してくれていた。
宿に泊まった晩、妖精騎士クーフーリンに連れて行かれた事。
妖精の世界で無事誤解を解き、無罪放免されて帰って来た事を話した。
「良くご無事でお帰りになられました」
「まさか本当に妖精の世界が在るだなんて」
本当だった証拠として、アルレースが姿を披露した。
目の前に本物の妖精が飛んでれば、信じるしかないだろう。
アルレースを見て妖精の存在が御伽話ではなく、本当だった事に驚いている。
宿を辞した私達は移転ステーションに向かう事にした。
次なる目的地はオリンポス神界だ。
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