第27話「アルレースの想い②」
※引き続きアルレース視点語りです。
夢の中のヒルト様は『聖女』ではなく、旅行者でした。
私はあの戦場以外で街の外に出た事がありません。
外の世界はどうなっているのか知りません。
しかし今、ヒルト様と共に未知の世界を観る事が出来るのです。
神様の世界、巨人の世界、エルフの世界、黒い(ダーク)エルフの世界。
全て神話や御伽話でしか知らない世界ばかり、それを初めて見聞きしています。
夢にしては臨場感が凄くて、現実だと勘違いしそうです。
少し近未来的な神様の世界。
巨人の世界では、山のように大きな巨人達の格闘戦を観戦しました。
この世界は本当に暑いですね。
暑さでバテて体がダルくなりました。
それでも巨人達の熱闘は気温の暑さを吹き飛ばさんばかりの凄さでした。
変な鎧兜姿の巨人同士がぶつかり合う物凄い衝撃音。
組み合う時の地響き。
観客席からの声援の大きさ。
巨大な力と力がぶつかり合うのが、五感に凄さを訴え掛けて来ます。
ヒルト様と乗り込んだ『操縦席(コックピット)』という特別な観客席。
巨人の目線で見る風景は、あれほど周りは小さく見えるのですね。
揺れ動く『操縦席(コックピット)』に座るヒルト様は殊更熱狂していらっしゃいました。
次に周りが森しかないエルフの世界。
森林の中があれほど心地良いのを初めて知りました。
木々の匂い、清々しい空気の香り、どれもが素晴らしかった。
そして初めて見る実物のエルフ達。
残念ながら私の姿を見ると、宿を追い出されましたが。
本来は良い人達なのかもしれません。
黒い(ダーク)エルフの世界へ行くために舟に乗った事。
舟に乗ったのも私には初めての経験です。
舟ってあんな風に揺れるんですね。
そして時々かかる水飛沫(みずしぶき)の冷たさ。
船着き場にある宿場町でドワーフも初めて見ました。
ドワーフの人形屋でヒルト様は私に鎧兜を誂えて下さいました。
そうです、今の形(なり)はこんなだけど、私は女性騎士だった筈です。
赤く綺麗な鎧兜は、私に騎士を思い出させてくれます。
そして黒い(ダーク)エルフの世界。
この世界の宿で私達は妖精騎士達に捕まりました。
私はヒルト様の騎士として、妖精騎士の横暴を許せません。
私達は妖精の世界に連れていかれました。
妖精城や妖精女王というのも見るのは初めてです。
妖精を攫う者を許さないという妖精騎士クーフーリン。
ヒルト様に私を返せと迫ります。
私は攫われた妖精ではありません。
どうして妖精の姿になっているのか解りません。
しかし夢の中なら、そういう事もあるのかもしれませんね。
しかしヒルト様は妖精達に女神様である事を示します。
それを見た妖精達の驚き様は見事です。
本当の意味でヒルト様は女神様で間違いないのです。
詫びる妖精達にヒルト様は私用の妖精鎧兜を要求しました。
どこまで私の事を大事にしてくれるのでしょう。
更に私が飛べるようにコーチを要求します。
そうでした。
私は妖精の姿で、背中には透明な四枚の羽があるのです。
私が飛べるようになれば、機動力は大幅に拡大出来るでしょう。
私はもっとヒルト様の騎士に相応しくならねばなりません。
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そして今、私は飛翔の特訓を受けています。
最初は足が地面から離れるだけで怖いと思いました。
妖精や虫の飛び方って鳥の飛び方とは違うのですね。
私は教官から羽の動かし方や飛び方を教わります。
四枚の羽は微妙に羽ばたき回数を変えるだけで、方向を変えられるのですね、
「基本は『ホバリング』『前後横上下移動』『ローリング』『回転降下』である。
わかるか? それら組み合わせで『木の葉落とし』という飛び方を学ぶのだ」
「『木の葉落とし』ですか」
『木の葉落とし』は垂直上昇中に推力を徐々に落とすことで、頭を上に向けたまま減速・空中静止し真横に失速反転し垂直に降下する技だそうです。
頭が上に向いた直後に失速反転し素早く水平飛行に移るやり方もあると聞きました。
「凄く難しいです」
「妖精として空中戦を行う際の基礎だと思ってもらいたい。
良いか、11000まできっちり羽ばたけ」
空中戦!
そのように言われると騎士として是が非でも身に付けなければなりません。
高速で突っ込んで一撃入れて離脱するヒットエンドランは初級の戦法とか。
講義ではインメルマンターンも教わりました。
ピッチアップによる180度ループ、180度ロールを順次、あるいは連続的に行う事で、縦方向にUターンする空戦機動を行うのです。
飛ぶ事の出来る者達の空中戦は三次元認識が無ければ戦えません。
目の前の景色がグルグル回るので、今どのように飛んでいるのか解らなくなります。
私の知る地上戦は平面的な戦闘だったのですね。
これら知識を本能的に動ける妖精は本当に凄いです。
最後に他の妖精フェアリー達と空中戦の訓練をします。
戦い慣れしている皆さんは強いですね。
ヒットエンドラン攻撃を受けてボロボロに負けました。
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