第21話「スヴァルトアルフヘイムへ」
アルフヘイムで私達が泊れる宿屋は無くなった。
むしろ、何処にいてもクーフーリンに襲われかねない危険人物と認識された。
森の中での野宿も考えたけど、やっぱり夜行性の獣は危険だよね。
仕方無いから大森林地帯のアルフヘイムを出て、スヴァルトアルフヘイムに行ってみるのも良いかもしれない。
それからドワーフの住むニダヴェリールを観光する。
「うん、それが良い」
せっかくの旅行だ。
ただ困って立ち竦んでいるより動いていた方が良い。
何処かでクーフーリンに出会えれば尚良しという事で。
スヴァルトアルフヘイムへ行くには川を逆上るらしい。
そのために船着き場に向かう。
船着き場の待合所はアルフヘイムの門を兼ねているようで門衛がいる。
門衛さんは私が異人種と見たのか、話し掛けてくる。
「お嬢さん、出国するのかね」
「スヴァルトアルフヘイムにも観光に行こうと思って」
「スヴァルトアルフヘイムだって?
あそこは
門衛さんから説明をもらった。
白いエルフと
激しい種族対立の原因の一つとして、対立問題の一つに森林伐採があるという。
「我々誇り高い白いエルフは、森の守護者であると自負しておるのですよ。
森林を失えば文明は滅ぶ。
だからこそ森林は守られなければいかん」
「そうなんだ、だからエルフは誇り高い民族なんだね」
「その通り。
お嬢さんは良く解っていらっしゃる」
本当の事はあちらも見て、話してみなけりゃ解らない事だろうね。
少なくとも私はそう思う。
言い分は誰にでもある。
片方だけの言い分しか聞かないまら、判断の正確さを欠く。
言い分の中には嘘や偏見だって混ざるだろうし。
「仲裁者っていなかったのでしょうか」
ポケットの中からアルレースが
国家同士の衝突で近くに第三者となる国がなければ難しいと思う。
ドワーフの世界ニダヴェリールは無関心だったのかな。
目の前の河は大きくて対岸線が見えないほど。
まるで海でも見ているようで流れは雄大だ。
私達の乗る舟は50人乗りと結構大きい。
そんな舟は馬で上流まで曳かれて行くと聞いた。
意外と河の端は流れが強くないんだね。
舟は上流まで行き、河幅が狭くなった所で対岸に渡るらしい。
結構な長旅になりそう。
何でこんな長旅になるかといえば、交易が関わっているとか。
どうりで乗客の後ろに荷物が積まれてる訳だ。
舟で遡上していると、時々水上マーケットの舟がやって来る。
私達は、その舟から食料や水を買う。
やがて山が見え始め、川幅も狭くなり、対岸も良く見えるようになってきた。
岸と岸を繋ぐロープを船頭たちは手繰って対岸に行く。
対岸に渡ったら、今度は街道を平地まで歩く事になるそうだ。
「何だかなー。
こういった辺り、海の民族と違うんだね」
バイキング達は一応帆船ではあるけど、櫂で漕いでいたんだよ。
それでもって入り組んだフィヨルドの中を縦横無尽に航行した。
漕ぎ手は皆、戦士達だから強くなる訳だよね。
「そうなんですか?」
内陸地に住んでいたアルレースには、舟の経験は初めてだったようだ。
きっと船上戦闘の経験も無いんだろう。
私達は対岸に渡り下船した。
平地に向かう街道は山間地を歩く事になる。
「山間地を歩くのかぁ。
もしかしてドワーフの世界ニダヴェリールに立ち寄る方が近くね?」
「ドワーフの世界を見るのも良いですね」
「じゃぁ、どっかで休憩しながら地図を見て考えよ」
「そうですね」
船着き場の前には宿場町がある。
そこにはエルフばかりか、
交易所って事もあって、争う様子は無いようだ。
「いる所にはいるんだ」
「私はエルフも、
私達はいつも通り安宿を探す。
「ここの宿場町って、結構土産物屋が多いね」
「そう言われれば、飲食店より多いです」
ドワーフも来る交易所だから、ドワーフ製の工芸品も結構な数を売っている。
中にはフィギア専門店なんて物もある。
これは絶対にあの世界の影響入ってるよ。
誰が何処からカルチャーを仕入れて来てるのか知らないけど。
ホビーショップ『ヴィンダーヴル』という店に入ってみた。
アニメ系はあまり無いけど、リアル系が多い。
ドワーフが創るだけあって、ものすごく造りは精巧でリアルだ。
一つの素材で装備のすべてを創っている訳じゃない。
様々な素材で装備品などが創られ、精密に表現されている。
これはもうフィギアというより、人形そのものといった感じ。
こういう世界だから、リアル路線の方が受け入れられるのかな。
「凄いですね」
「こういう店なら、アルレースの鎧も作れるかも」
「あ、それ良いですね。
このままじゃ私、騎士を忘れそうで」
店主のヴィンダーヴルさんと相談してみる事にした。
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