第18話「ギガントバウト」

ポスターで告示さてるのは『ギガントバウト』。

旅行者向けに巨人達が行うイベントのようだ。



私達がいる旅行者用の施設は、ドーナツ状になっているらしい。

ドーナツリングの建物の中に旅館や売店や飲食店など各種施設が入っている。

会場はドーナツリングの真ん中、円形リングで行われるようだ。


出場選手は誰がどうだか私には解らない。

炎のムスペルヘイム巨人と氷のヨトゥンヘイム巨人が対戦する様だ。



「ふーん、巨人同士のプロレスがあるんだ」



対戦内容は三つのクラスに分かれている。


①5mクラス巨人が肉体だけで闘う【マッスルファイトクラス】


②10mクラスの巨人が鎧を着て闘う【ギガントファイトクラス】


③30mクラスの巨人が鎧+兵器で闘う【ギガントウォークラス】

 こちらは合体あり、搭乗員あり戦もあるという。



「ヒルト様、巨人同士の格闘戦だなんて凄まじいですね」


「凄いには凄いけど、鎧戦ってどこかの巨大ロボットアニメみたい」



巨人によるコスプレプロレスという事なんだろうか。

鎧の巨人はまるで巨大ロボットのように見える。

きっと誰かが、あの世界のカルチャーを持ち込んだに違いない。

私はヲタクじゃないけど『合体』ってのはどうなのか興味を惹く。


搭乗員って、まさか旅行者から希望者を募集しないよね?

巨人同士の戦いの中、どこかに搭乗って衝撃で死にかねないと思うの。


心配は杞憂だったようで、搭乗員は会場の疑似コクピットに座るらしい。

巨人の鎧にはコクピット想定位置に、映像送信魔石がセットされているという。

そこからの映像が搭乗者のコクピットに映し出され、操縦者気分に浸れるとか。



「へぇぇ、こりゃ一度くらい体験してみたいね」



なんたって巨人目線での闘いだ、巨大ロボ操縦者の気分満点。

インカム付のヘルメットが有るらしいから、巨人と会話しながら闘いに参加出来る。

ロボヲタクじゃなくても、経験したいだろうね。

必殺技を叫んでいたら、耳元で響かれる巨人には煩いかも。


コクピットに座るには、それなりの料金はかかる。

会場には賭ける巨人の券売機もある。

それで巨人側としても、ファイトマネーが受け取れるみたい。



少々お高いけど、私は搭乗者券を買う。


コクピットの前面にモニターがある。

レバーやハンドルは単なるダミーで、気分を味わえるだけらしい。

そりゃそうか、巨人はロボットじゃないのだから。

だけどコクピットは傾いたり、揺れたりするから臨場感満点だ。


私の乗る巨人はアルヴァルディ。

30mクラスの巨人で鎧+兵器ありの【ギガントウォークラス】



「凄い高さですね」


「30mと言えば、約9階建てのビルの大きさになるのかな」


「王城でもそんな高さはありませんよ?」



アルレースは高さにビビッている様子。

遥か下に見える観客席が小さい。







私達はアルヴァルディの試合時間まで、モニターで他の試合を観戦する。


【マッスルファイトクラス】の闘いは普通に巨人対巨人のプロレスだ。

いや、打撃技を見るにパンクラスに近いのかな。

しかし、闘っているのが巨人だから、始終見上げる目線で闘いは展開する。

観客からの歓声や、巨人同士の衝撃音、地響きが凄い。



「迫力がとんでもないわね」


「軍隊が戦うとしても、あの巨人達相手に倒せる気がしません」



5mクラス巨人までなら、辛うじて投槍や大型弩バリスタが通用するかもしれない。

普通の弓じゃぁ、棘が刺さった位な感じになるのかな。




次は10mクラスの巨人が鎧を着て闘う【ギガントファイトクラス】だ。

先の【マッスルファイトクラス】の巨人より大きいのが鎧を着て闘う。

鎧のデザインのため、巨大ロボット同士の闘いに見える。

正にリアルスーパーロボット戦闘の様相だった。



ドカン ドカン ガキン ドゴーン

   ドシン、ズシン、ズシン ズコーン



「「すごい」」



拳を守る分厚い鉄でできたナックルガードで打ち合う金属音が会場中に響く。

互いのパンチやキックは鎧のためにダメージが入らない。

そのため、関節技や組技が有効になるだろう。

しかしショーマンシップに則ってか、派手な技の応酬が続く。


やがて二人の巨人は組技に移った。

片方の巨人がヘッドロックを決め、ココナッツクラッシュを仕掛ける。

その時、巨人の兜が脱げた。


その姿はロボットの中の人があらわになったような絵面で、何とも言えない気分になった。

そりゃぁヒーローショーの中の人がバレたような気分。



「ああぁぁ、あ、顔がある。

 一瞬、頭がもげたと思ってしまいました」


「そりゃ、ロボットじゃなくて巨人が闘ってるからね」



アルレースはいつしか巨大ロボットと錯覚していた様だ。




次は30mクラスの巨人が鎧+兵器で闘う【ギガントウォークラス】


しかし本番前の前哨戦として、合体ありの試合が始まった。

5mから10mクラスの巨人が合体して、30mクラスの巨人として闘う。


こちらはリアル戦闘より、ギャグテイストの戦闘で笑いを誘う。

いくら何でも数人掛かりの巨人を振り回せる巨人はいない様子。


基本、運動会の騎馬戦フォーメーションっぽいのかな。

そんな巨人タワーが一人の巨人のように動く。


さすがに変形合体は無理があり過ぎの様で、合体までらしい。

巨人達にこの難題を克服できる日が来るのだろうか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る