第1話 闇への誘い、秘密結社シャフト⑵
それから、オロチ大佐と呼ばれる男のメッセージが長々と続いた。
先ほどまでの動揺は、長い話を聞くにつれ、ちょっとずつではあるが、落ち着きつつあった。
オロチ大佐の話を要約すると、秘密結社シャフトとは、人間の能力を超越した異能の人間、いわゆる“怪人”たちによって組織されており、その目的は、日本国内における怪人組織の統一だそうだ。なお、世界征服とか人類
その組織構成をやくざ組織に例えると、組織のトップである “
本来、やくざ組織における“若頭”とは、一人しか就任しないらしいが、このシャフトには、大幹部と呼ばれるお偉方が7人もいるらしく、それに加えて特別幹部と呼ばれるお偉方も1人いるそうだ。ちなみに、特別幹部は、首領の相談役といった存在で、他の大幹部とは少々地位が異なるらしい。
う~ん。「首領」とか「幹部」とか「怪人」とか、ヒーロー特撮の悪の秘密結社を想起させるような組織だ……
そして、今回、俺がここに監禁された経緯であるが、それはシャフト内における大幹部同士の内紛に起因しているらしい。
シャフトのトップである首領が半年ほど前に亡くなった際、首領から大幹部7名それぞれに対して、遺品の宝玉が1つずつ与えられたそうだ。
一目見ただけでは、ブリリアン・カットされた光り輝く宝石らしいが、これを7つ集めると、首領になるための儀式を執り行う祭壇の在り処が分かるとのことだ。そして、その
なので、現在、シャフト内では、その宝玉を巡って大幹部7人が互いに鎬を削って争っている……らしい。ちなみに、特別幹部と呼ばれるお偉方には、宝玉は与えられていないそうだ。
オロチ大佐のメッセージも終盤に差し迫ってきたようだ
「長くなってしまったが、つまり、私は今、他の大幹部たちと宝玉を巡って争っている状況だ。しかも、敵はそれだけではない。大幹部の下に付くことなく、独自の勢力を築いて宝玉を狙う不届き者たちも出てくる始末だ。海外の怪人勢力の動向も気になる。はぁ、なんとまぁ嘆かわしいことだ……。首領の死後だからこそ、組織一丸として敵対勢力に対処しなくてはならないというのに………………」
その声には悲痛の念が込められており、組織の現状に対し、思うところがあるようだった。
「だからこそ、私のような優秀な指導者が頂点に立ち、組織を立て直す必要があるのだ。そのためには、他の大幹部たちを倒せるほどの強い戦闘力を持った怪人たちが必要なのだ。「オロチ派」とっ、“我々”のことを他勢力は呼ぶのだが、正直に話すと、他勢力と比較して我々はまだまだ弱い。強い怪人が少ないのだ。よって、君のような素晴らしい人間を怪人としてスカウトし、我々の同志として迎え入れる必要があるわけだ」
オロチ派は他勢力に比べて弱いから、優秀な人間を怪人にして回っているということか。でも、何がスカウトだ、
しかし、待てよ! 今、『怪人としてスカウト』とオロチ大佐は言ったよな……。まさか…もう俺は……。
オロチ大佐の長話で少しずつ落ち着きを取り戻してきていた俺だが、また内心に焦りが募ってくる。
「ぜひ、新しいシャフトを築くため、我々に協力していただきたい。共にシャフトを規律ある素晴らしい組織にしようではないか! 良い返事が聞けることを期待しているよ。横田君、あとのことはお任せする。では、諏訪君、直接会えるその日まで、楽しみに待っているよ。さようなら」
音声はここ途切れた。ようやくオロチ大佐の説明は終わったようだ。
しかし、冷や汗は止まらない。
俺は……怪人になってしまったのだろうか……。
怪人って具体的にはどんな存在なんだ……。
ヒーローモノに登場する、人型の動植物みたいな奴らなのか……。
これから俺は、こいつらに何をやらされるんだ……。
人殺し? というか怪人殺し?
俺は人間に戻れるのか……。
心の中で様々な不安が想起される。ドロドロした真っ黒な液体が胃の中を暴れまわっているようで、とても気持ち悪い。
そんな俺を見て、横田はニヤニヤ笑いながら言った。
「今お前が考えていることがビンビン伝わってくるぜ。しっしっしっ。安心しろ。今から俺がしっかり説明してやるよ」
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