悪の秘密結社によって改造人間にされた俺は、悪の手先として悪と戦うことになりました

望月ミナキ

第1話 闇への誘い、秘密結社シャフト⑴

 大きな倦怠感と違和感の中に、俺はいた。


 意識がボーッとする。何だか気分が悪いし、何より手足の自由が利かない。なぜか手足を動かすとガチャガチャ音がする……なんでだ……?


 寝起きの頭で考えるが、よく分からない。

 よく分からないけど、何かに拘束されている…。

 何に…?。

 金属がこすれる音…。

 そうか…くさり…。これ鎖だ…。

 ん…? でも何で鎖…? 

 ……………………………………………………。


 ええーーーーーーー!! 鎖で繋がってるぅぅぅぅぅ!!!!!!??????


 心の中でそう叫び、ハッとなって目を開けると、俺は仰向のまま、円形の台座に手首と手足を鎖で固定されていた。


 薄暗い部屋。周りを見渡しても、部屋の奥がはっきり見えない。奥行きがありそうだ。

 天井には、小さな電灯が弱く揺らめいており、青色になったり、緑色になったり、赤色になったりと、数秒間隔でいろんな色に変化している。とても不気味だ。

 

 そして、周りを見ると、数人の男が俺を拘束する台座を囲むように立っている。皆一様に不気味な笑みを浮かべている。誰なんだこいつら……。


 俺が混乱していると、一人の男が声を発した。


横田よこたさん、目が覚めたようです」


「やっとか……」


 横田と呼ばれた男は、部屋の奥の方からこちらに向かって歩き、台座に固定された俺の頭側に立つと、俺に話しかけてきた。


「気分はどうだ。名前は、えー、諏訪茂すわ しげるだったか?」


「あ……えっと……」


「名前間違えたか? こいつの名前、諏訪であってるよな?」


「はい」


 隣の男に確認を取る。俺の名前は諏訪で間違っていない。


「まだ意識がぐちゃぐちゃなのか? そういえば俺も初めて連れて来られたときはそうだったな~」


 感慨に浸りながら話しかけてくる横田を、俺は冷めた目で見つめていた。

 こいつ、何言っているんだ?


 その後、横田は、隣にいた男と小声で何かを話し合ったかと思うと、俺の顔の上に右手の掌を持ってきて、開いたり閉じたりしてみせた。ジャンケンのグーとパーとを繰り返す動作だ。


「どうだ、俺の手は見えてるか?」


 俺が頷くのを確認すると、横田は次に、右手の指3本を立てて俺に見せつけた。


「じゃあ、この数字は?」


「さ……ドライ」


「なんでドイツ語に言い換えた? まぁいい、思った以上に意識はしっかりしてるようだな」


 横田はニヤニヤ笑いながら言った。


 俺は横田の顔を改めてしっかり見る。

 年齢は俺の少し上ぐらいだろうか? そうだとすると、20代の前半か? 顔立ちは整っているが、彫りが深く、何より目つきが寝不足か? 、っていうぐらいとても悪い。

 部屋が暗くてよく分からないが、紅色? のスーツを身にまとい、ドクロ模様とハート模様がたくさん付いた趣味の悪いネクタイをしているのが印象的だった。


 普通の人とは雰囲気が明らかに違う…。こいつらはヤクザや半グレといった連中の一味なのだろうか? 

 東京に来たら、こういう反社会的な連中とだけは絶対に接点を持ちたくないと心に誓っていたのに、大学に入学して早々、お近づきになってしまうとは……。


 ていうか、今はいつで、何でこんな所にいるんだ? たしか今日は、入学式の当日で、大学のキャンパス内にいたような……。


 そんな俺の心情など露知らず、横田は話し始めた。


「ようこそ。諏訪茂。俺は横田。安心しろ、ここは俺のアジトだ。そう簡単には見つかりはねえ場所だ」


 こっちは拘束されているのに、安心しろというのか?

 横田は話し続ける。


「いろいろと混乱しているだろうから、俺が一からしっかり説明してやる。だが、その前にボスからのメッセージだ。いいか、今から俺らのボスのメッセージボイスを流す。ボスのありがたいお言葉だ。一言一句しっかり傾聴しろ!」


 そう言うと、横田はポケットからスマホを取り出して音声を再生する。

 スーっという音が聞こえた後、男の声が聞こえてくる。


「ようこそ、諏訪茂君。君への挨拶は対面でと思っていたのだが、急用が入ってしまい、そちらに赴くことができなくなってしまった。我々の敵が動き出したようでね。私は、その対応をしないといけない。直接会うことができず、誠に申し訳ない」


 聞こえてきた声は、丁寧な口調であるものの、言葉の端々から残忍さが垣間見える、不気味な声だった。年齢は30代から40代だろうか。


「私はオロチ大佐たいさ。秘密結社シャフトの大幹部を務めさせていただいている。おめでとう、諏訪茂君。君はシャフトの優れた怪人として新たな人生を歩むことになったのだ! これからは我々の同志として、このシャフトをまとめ上げるのに協力してもらうよ!」


「は??????」


 オロチ大佐が何を言っているのか、俺は全くもって意味が分からなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る