第16話 常闇の洞窟を通れるわけがないと思ったのに


ここまで来ればもう簡単だ。

ただ、イトのお姉さんを助けなければならないのだが。


戦力は俺とイト、大ハニワ2,中ハニワ2だ。


俺はいったん普通の大ハニワをリリースさせ、再度中ハニワ2体に抑えさせる。

そこで、前回手に入れた鬼の角を、大ハニワの頭からひっかける。



ずん胴だから、輪を作って上から掛けると、手のところで止まる。簡単だ。



そこで俺は中ハニワを下がらせる。

「イト」俺は声をかける。。



もう十分に役割をわかっているイトは、中ハニワが離れたところで妖術を準備していた。


俺の声と同時に、イトが火の妖術を放つ。

ドーン!

すごい音がした。地面や天井が揺れる。


大ハニワはそのまま爆散した。さすがは鬼の角。熊の牙なんかよりよっぽど爆発力が高い。


それを見た頭でっかちの大ハニワがビビっている感じだ。

まあ、もしイトのお姉さんの意識が残っていたら怖いだろうな。




いよいよ頭でっかちの大ハニワだ。大詰めだ。

俺は2つの中ハニワに、両方から相手を抑えさせた。

そして大ハニワたちに、頭を固定させた。



これで大丈夫だ。

俺は埴輪斬りを上段に構え、大きな頭の右から五分の一くらいのところにきっちりと振り下ろした。


ガッシャ―ン!

音がして、大ハニワが崩れ落ちた。



そして、中から長い黒髪の女性が現れたのだった。


イトの姉だろう。

イトが彼女に駆け寄る。


「●★==1」

イトが俺にわからない言葉を放つ。


やはり、イトの姉のようだ。

彼女は動かない。

衰弱しているのだろう。


家に連れ帰ると時間がかかる。

俺は、持ってきた毛布を地面に敷き、彼女を横たえる。


イトは濡れた手ぬぐいで姉を丁寧に拭いていく。

俺は、水筒を出し、イトに渡した。


「中に温かいお茶が入っている。少しさまして飲ませてやれ。」

イトはうなずいた。


イトに看病を任せ、俺はあたりを見回した。



大きな赤い勾玉があった。それから、巻物が大量に落ちている。あと、兜と帽子のようなものも落ちていた。

さすが、階層主の討伐だ、


この勾玉をイトの村に持ち帰って奉納する。それで、イトの村は助かることになる。


巻物は15本もあった。火が3本、水が3本、風が4本、土が5本だ。

今回、火以外は結局使わなかったが、これで俺もほぼオールマイティだ。


あとは兜と帽子は何だろう。あとでイトに鑑定してもらおう。



転移の珠がある。これでいつでも戻ってこられるな。

俺は先に珠に触り、帰り道を確保する。


ふと見ると、神棚がある。開けてみると、封筒が入っていた。

上に勾玉が乗っている。これで劣化を防いでいるのだろう。



封筒には「羽庭創へ」と書いてある。

もちろん、祖父の字だ。


なぜ、ここに追加で手紙を書いてあるのだろう。

俺は、封を切った。



…創へ。二十層到達おめでとう。

かなり時間がかかったのではないかと思う。


これでお前は名実ともに羽庭一族の当主としてすべての力を入手したことになる。


ただ、最後に入手する力は、何になるかはわからない。儂の場合は、黄泉の洞の二十層までにいるすべてのハニワを統率する力だった。


これのお陰で、畑仕事などはハニワにやらせることができた。だから、自給自足ができていたのだ。お前の力は、お前自身がすでに認識しているだろう。


その力を使って、できれば子孫繁栄につなげてくれ。羽庭一族の再興を期待している。まあ、あまり大きな負担をかけるつもりはないのだが。


ここの層は、実は別の世界につながっているようだ。


また、ここよりも下の層が存在しているらしい。

ただ、行き方がわからない。


下の層はわが一族も長いこと降りられていない。

どこまであるのかわからないが、過去の言い伝えでは、三十層まで行くと、黄泉の洞にかかわる能力が手に入るそうだ。 機会と協力者が出来たら、挑戦してみるといい。儂は、二十層制覇で一応満足し、日常生活を送っていたのだが、お前はまだ若い。挑戦してもよいだろう。


もちろん、入口が見つかればの話だが。


それからもう一つ大事な話がある。



…俺の予想していなかった話だった。しかも一つじゃないし。



イトが言う。

「ソウ、お姉ちゃんが目を覚まさない。一応なんとかお茶は飲んだけど、意識は戻らない。このままでは歩けない。」


まあ、助け出したときは、イトも寝込んでいたからな。半日や一日かかっても不思議はない。


イトが時計機能を持つ勾玉マシンを確認する。

「ソウ、あとちょうど一日。 うちの村までは、歩いて一日かかる。一日といっ

ても、実際には休みながら歩いて、日の出前から夜まで、という感じ。だいたい15時間くらいだと思う。


今から出ないといけない。そうでないと間に合わない。ソウ、お姉ちゃんを看病しておいて。イトが勾玉を持って村に行ってくる。」



俺は首を横に振った。


「いや、だめだ。お姉さんと一緒に村に戻ろう。俺が、お姉さんを連れて行こう。なあに、背負って歩けばいいさ。」


イトは驚いたように言う。

「ソウ、その話はとても嬉しい。でも無理。 常闇の洞窟は、長の一族と巫女しか入れない。ソウは弾き飛ばされる。どこへ行くかもわからない。だから待っていて。」


俺はイトに言う。「俺だって、この黄泉の洞のこっち側を統括する羽庭一族の人間だ。向こうへ行く穴だって使えるかもしれないだろ。


試してみればいい。行けるようなら、お姉さんを連れていく。無理なら、お前だけで行け。ただ、妖怪やハニワに気を付けないとな。


常闇の洞窟で弾きとばされると、勾玉も無くなるって言ってたよな。


だからこそ、できればついていきたい。」


俺はイトに転移の珠の登録をさせるとともに、この空間の奥のほうに広がる穴に、試しに腕を入れてみる。大丈夫そうだ。今度は片足入ってみる。

何の問題もなく、すんなりと入れた。そのまま体ごと入ってみたが、まったく問題ない。


「ほらイト、行けるぞ。一緒に行こう。」

イトは嬉しそうな顔をした。


「ソウと一緒に行けるなら嬉しい。お姉ちゃんだって一緒だし。」



「決まりだな。なら、さっさと準備をして、とっとと出発だ。」


とりあえずさっきの帽子と兜を、イトに勾玉マシンで鑑定してもらう。


驚いたことに、帽子は、ハニワよけの帽子、といってこれをかぶるとハニワが襲ってこないそうだ。また、兜は「結界の兜」と言って、かぶっている者と触れている者を守る働きがあるそうだ。


俺が兜をかぶり、イトと手をつないで歩けば、結界がイトにも及ぶ。 また、手を離しても、イトが帽子をかぶっていれば、ハニワが襲ってくることは無い。妖怪はイトが対処できる。


こんなチートアイテムがあれば、攻略が楽になっていだだろうに。


まあ、攻略のご褒美だからな。

いつか、他の人が使えるだろう。


そういえば、俺には縁があるものではないが、高校生の英語スピーチコンテストというのがあって、優勝の賞品が、英会話CDのセットだった。 優勝するのは英語できるやつなんだから、そんな物もらってもしょうがないのにな、と思ったものだ。そういうのは予選落ちしたやつにでもあげて、能力向上させてやれよ、ってなものだ。


まあスポンサー的には無理なんだろうけどな。


俺は、イトの姉を毛布でくるむと、持ってきていたロープで俺の背中にくくりつけた。

最悪、いざとなったら片手くらいは武器を持てるようになるだろう。


俺は、右手でイトの姉を後ろ手に支え、左手でイトの手を握り、常闇の洞窟に入った。



ーーーー

やっと攻略できました。

秘密は何だったんでしょうね。


すっごい謎だな~(棒読み)




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