第14話 敵が連携なんかするわけがないと思ったのに。

(内容を修正しました。以前、13話と重複してしまったものをもとの話に戻しました。)



日が差している。


朝だ。

ちゅんちゅんと鳥が鳴いている。

俺の腕の中には、イトが眠っている。


もうちょっとイトの感触を味わっていたいところだが、今日は、いや今日も起きねばならぬ。

これから16階層以降を攻めるのだ。

何とか、今日中に二十層をクリアしたい。

そうすれば、明日一日かけてイトの故郷へ行っても一日余裕がある。


というわけで起きよう。

さっと顔を洗って歯を磨く。


畑でトマトを取ってきて、包丁で適当に切る。

あとはアジの干物を軽くあぶる。みそ汁はインスタントを使おう。

米は炊けている。

インスタントのみそ汁も、鍋でひと煮立ちさせ、追加でわかめを加えると、結構立派になる。

あとは漬物を刻んだら朝食の出来上がりだ。


イトが起きてきた。

「ソウ、おはよう。」眠たい目をしているが、可愛いから許そう。


「おはよう。顔を洗っておいで。」俺は彼女を促す。


本当に、新婚家庭みたいだな。 

俺は食事を作ることに抵抗はないし、今は時間もある。、


農業でのんびりするのもいいと思っていたが、今はとりあえずイトのためにも黄泉の洞に潜らなければならない。


朝食を食べる。イトは、干物が珍しいみたいだ。

だが骨も頭も全部食べた。


「イト、それは魚の干物だ。食べたことはあるのか?」と俺が聞くと、


「魚の種類は違うし、味も違うけど、干した魚はよく食べる。特に冬場は、魚も肉も干したものしかないから。」


まあ、そういう地域なんだろうな。冬の狩りは大変だしな。


「今日のみそ汁は、味が違う。」おお、イト、わかるのか。


「ああ、今日はちょっと手を抜いて、出来たものを使ったんだ。まあ、これもそのうちに教えるよ。」


イトはうなずいた。



今日も潜る。おにぎりをイトに準備してもらう。具は、かつおと梅だけだ。

昨日まではたらことかソーセージとかあったが、今日は時短なのでこれだけだ。


まあいいだろう。豪勢な食事は、時間があるときでいい。


今日も天気が良さそうなので、イトがおにぎりを作っているうちに俺は洗濯機を回した。

すべて庭に干す。まあ、まだ余分な服はあるんだが、一応早いうちに洗濯をしておく。


アイロンはあとでかけることになるだろう。洗い張りだけでもいいんだが、まあその辺は気分だ。


ちなみに、イトの勾玉モドキで簡易な鑑定ができたので、熊の爪と牙を鑑定してもらった。

なんと、すべて爆薬として使えるようだ。ただし、火の妖術をぶつければ、という話だ。


イトに任せるしかないな。俺のマッチの火のような火の玉では多分無理だから。


そういえば、第15層で、ついにハニワ5体を同時に動かす能力を手に入れた。

これで、農作業がはかどりそうだな。


祖父も、たぶんハニワを使って農業をしていたと思う。

いったいいくつを動かしていたんだろう。


祖父は、二十層で、ハニワの数に制限なく命令できる力を手に入れた、と書いていた。


俺も同じ力を手に入れられるのだろうか。それともまったく違う力ないんだろうか。まあ、今日二十層をクリアすればわかるわけだ。



第16層は、沼地だった。道はあるが、ところどころぬかんるんでいる。それだけではない。道の両側は沼だったり川だったり、水ばかりだ。


通り道に、妙に綺麗になったところがあったんで、そこに石を投げてみたら、ずぶずぶ沈んでいった。たぶん底なし沼の罠だったと思う。

なかなか恐ろしい。



実は、こんなこともあろうかと、今日は板を持ってきていた。


いや、祖父の書類に書いてあったんだけどね。


十六層と十七層の沼地のために、板を持っていけと。足場になるから、大変でも持って9行ったほうがいい、と書いてあった。



確かにかさばって大変だが、無いよりはずっといい。


イトは非力なので、持つのはずっと俺だ。片手に埴輪斬り、片手に長い板を二枚、という結構シュールな外見だ。まあ、誰が見るわけでもないからいいさ。


イトが見るのは構わない。イトは俺がなぜそれをしているかを心の底から理解しているから。


…あれ、こんなに信頼しちゃっていいのかな?ま、気にしてもしかたない。もう深い関係なんだしな。


イトに、蛙の妖怪が襲い掛かる。イトは、火の妖術で対処する。 慣れたものだな。


たぶん、故郷の常闇の洞窟を突破するために、ずいぶん頑張ったのだろう。妖術の使い方が実にスムーズだし、切り替えもできている。


たとえて言えば、刀を振り回したすぐあとでスナイパーライフルのアーマライトM15 をぶっぱなすようなものだ。 ゴルゴ13も真っ青。あ、さいとうたかを先生、ご冥福をお祈りいたします。


むしろ危ないのは俺だった。背の低いハニワが俺に体当たりしてくる。つんのめって倒れそうになるが、何とか持ち直した。 そして俺は埴輪斬りで埴輪を切るか、あとは力だ沼に落とす。


うまく落せばいいが、落されたら絶対悲惨なことになる。 ヌルヌルだ。 ローション相撲の次長課長じゃないんだからなあ。 さ泥レス、ってのもあったなあ。といいつつ聞いたことはあるけど見たことは無い。泥にまみれながら女子プロレスやるんだよね?


相手が女子プロレスラーのローション相撲だったら喜んで相手になるが、埴輪相手の押し相撲なんかごめんだ。


階層をクリアしていくことで、俊敏性が上がったようで、埴輪のスピードの攻撃なら軽く避けることができた。


やっかいなのは、泥の中から埴輪が手を出して、俺の足をつかんでひきずり落そうとすることだ。 最初にそんな目にあったら、マジびびった。何とか振り払ったから助かったが。


まあそのうちに、ハニワが泥から現れる前兆とかわkるようになったので、対処も何とかなっていった。


出てくるを避けつつ、時に埴輪斬りで引き裂いて、何とか16道はクリアできた。


だが17層も泥だった。しかも、今度は泥だらけの大きなハニワが攻めてくる。取っ組み合ったら泥レスになってしまう。かといって、俺に遠距離攻撃能力はないし、イトは妖怪で手一杯だ。


埴輪斬りも、あまり浅くしか当たらないと相手を倒せない。仕方ないので、とりあえず、できる限りヒットアンドアウェイで、ちょっと斬ったらする離れる感じでやってみる。なんだか、フェンシングのようだ。


まあ、埴輪斬りはフェンシングのサーベルのように剣突を前提とするものじゃないから、なかなか難しい。


結局、足を斬ればいいんだとおいうことがわかったので、対応できた。

大ハニワも小ハニワも、足を斬ったら動けない。考えてみれば当たり前だ。


だが、戦いのとき、そういう当たり前をなかなか思いつかないのだ。緊張していると、一歩間違うと息をするのさえ忘れる、などと言われることがある。まさか、と思いッていたが、これは本当にあることなのだ。


ちなみに、小さいハニワは、足を斬るほうがかえって難しい。横なぎで胴を斬れば終わるからだ、。あくまで、対応法を研究しながら戦っていたということだ。


要するに、余裕のよっちゃんだったわけだ。 よっちゃん食品のよっちゃんいかだ。


イカと言っても、イカゲームでもイカレスラーでもないよ。念のため。


時を戻そう。

17層の泥をクリアしたら、今度は不毛の地だ。

ごつごつした岩があちこちにある。草木はほとんど生えておらず、見通しは悪くない。


これから楽勝か、と思って普通に歩いていると、いきなり蛇の妖怪に襲われた。イトが妖術であっというまにねじ伏せたのだが、予期していなかったので驚いた。;


蛇がどこから来たのか、と思って調べてみると、地面に小さな穴があって、そこから出てくるのだった。


あちこちに穴があり、どこから出てくるかわからない。なんとか警戒しながら進んでいると、そのうちに大き目の穴からハニワまで顔を出すようになった。


まさにモグラたたきみいたいになってしまった。

俺は、とにかく埴輪斬りをぶんまわし、頭を出したハニワを斬る。


イトは、とにかくそれっぽい穴を無差別に妖術で攻撃する。


これを繰り返しつつ、奥へと進んでいくと、小屋のようなものが見えてきた。


まだ20層ではないので、ここはボス部屋ではなく、ただの降り口だ。

珠に登録して、そのまま19層に降りた。


第19層はまともな洞窟だった。これはいままでと同じようなkな字で進。ただし、出てくるハニワや妖怪が多い。


妖怪については、まとめて火の妖術で焼き払ったり、水の妖術で押し流したりした。


とりあえず排除すれば、殺さなくてもいい、とイトは言う。

まあそうかもな。


ハニワに関しては、生きてないのであまりそういうことを考えずにすむ。

藁人形や空き缶が転がってるくらいのつもりで対処しているのだが、たぶんそれでいいはずだ。


まあいままで斬りまくっているし、いくらでもわいてくるのでハニワが可哀そう、とか殺さなくてもいいのに、なんて考えない。石ころにつまずくなら、石をどける。それと似たようなものだと思う。



まあ、祖父の書類の中に、ハニワも慣れれば川しい、とかわけのわからないことを書いていたのだが。 たぶん、農作業をやrせるハニワに感謝したからそんな記載があttんだろうな、と思う。



俺とイトは、ハニワと妖怪をそれぞれ快進撃で撃破しつつ、20層の入口にたどり着いた。



ここで弁当を食べ、休憩する。 時計を見ると、もう9時だ。そんな時間になっているとは思わなかった。


たぶん、次はk思想主かつイトの姉だろう。


「まだ時間があるし、明日にしようか?」俺はイトに提案する。


イトは首を横に振った。

「早くお姉ちゃんを助け出したい。行こう。」


祖父の攻略書類によれば、二十層は大ハニワがボス、それに中ハニワ二体、青鬼と狼3頭ということだった。それくらいなら何とかなるだろう。


俺もイトも、敵を甘く見ていたようだ。



第20層は、予想とちょっと違い、大きな頭の大ハニワと、それを守る大ハニワ2体、それに中ハニワが5体。それと、一本角の大きな青鬼、それから狼5頭だった。



こんな物量作戦で来られるとは思わなかった。

狼が5頭で連携し、イトを攻める。イトは結界で防ぐが、そうすると攻撃もできない。


そのため途中で結界を解除して攻めようとしたとき、狼がイトの足を噛んだ。


イトが痛みでバランスを崩す。そこに狼たちが襲い掛かり、イトが必死に防戦していると、青鬼がいきなり狼ごとイトを金棒で殴りつけた。


俺は「イト!」と叫んだ。その俺に、大ハニワの剣が襲い掛かってきた。埴輪斬りで防ごうとしたが、埴輪斬りを持つ右手は、がっちりとハニワに抑えられていた。


そのまま大ハニワの剣が俺に斬りかかり。俺も意識を失った。


ーーー

やはり二十層は一筋縄ではいきませんでした。

でも、創もイトも甘く見過ぎですよね。


なんたって階層主だし、ここは常闇の洞窟への入口でもあるんです。

そう簡単には勝てませんよね…






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