第12話 ヘイトを稼いでタゲを取るなんてやるやるわけがないと思ったのに。

日がさして


俺は、第十層で、ハニワを一体あやつる能力を手に入れた。


この能力は、征服した階より上のハニワを1つ、自由に動かせることだ

たとえば、第4層では、大小二種類のハニワが出てきていたが、、第五層を制覇した後は、第四層の大ハニワに命令すれば、もう一つの小さいハニワを叩き潰したりしてくれる。


まあ、進んでいる最中の階層のハニワには使えない。だから、これは戻ってからどう使うか検証することにしている。


そして第十層を突破して得た力は、過去に制覇した階層のハニワを三体自由に動かせるというものだった。正直、同時に三体動かすのはしんどい。


まあきっと、これも慣れの問題だろう。毎日やっていれば、そのうち無意識のうちに操作できるようになるような気がする。


まあ、今はそれを練習する暇はないんだが。


第十層をクリアしたところで、今日は終わりにする。

もう夜の10時を過ぎている。


イトにも疲れが見えるし、俺も疲れた。やはりダンジョ、じゃない黄泉の洞は体力を消耗するのだ。おにぎりなんかとっくに食ってしまった。


第十層から珠に触って帰り、手早く風呂に入って寝る…のだが、二人で寝たので、また運動してしまった…。


大丈夫かな。いろんな意味で。




翌朝、いい匂いで目覚めた。いや、イトの匂いじゃなくて、みそ汁の匂いだ。

なんと、イトがみそ汁を作っている。


え?イトにコンロの使い方も、出汁の取り方も教えてない。よく作れるな。


…どうやらこれも勾玉マシンのおかげらしい。たまたま、子供むけクッキングの番組と、おばちゃんのおしゃべりしながらクッキング、それに今日も料理、という料理番組を勾玉が見ていたらしい。それで、みそ汁の作り方を知ったようだ。



惜しむらくは、ご飯がない。炊飯器の使い方を教えていなかったからだ。


俺は、パックのごはんを出し、湯煎する。電子レンジもあるんだが、いちおう気分でこうしてみた。


みそ汁には庭のナスを入れた。あとはキャベツの千切りを作り、ソーセージも焼いた。


まあ、それなりの朝食になったな。ちなみに、朝食を食べながら、別途炊飯器で米を炊いている。昼と晩の弁当用だ。



昨日の階層主からの戦利品を見てみる。巻物三本だ。見ると、風と、水と、土。これで、4大属性がそろったことになる。だがそのかわり、すべてパワーが無く、使い物にならない。


祖父の手紙では、5つ集めれば、とのことだだが、なかなか難しそうだ。



時間があれば階層主との戦いをを周回して、戦利品を稼ぎたいところだが、いまは時間が許さない。今日、潜ったときに最初の踊り場で装備しよう。  あ、土はイトも持ってない。イトに使ってもらう手もあるな。まあ中途半端だからすぐ装備しなくてもいいか。。


そういえば、鬼の角も手に入れた。もっと言えば、最初の第五層でも戦利品があった。二つがつながった鈴だ。


勾玉マシンで調べてみた(マジ万能!)。


どうやら、鈴の片方はハニワを、もう片方は妖怪を呼ぶ鈴らしい。



ヘイトを稼ぐのに良さそうだ。


ヘイトって何かって?

冬に女の子が追加で履くパンツの素材。それは毛糸。


男女が連れだって遊びにいく。それデイト。

学校で学んでいる人。それ生徒。


…まあこの辺にしておこう。

ヘイトとは憎悪のことだ。


ゲームとかでは、戦う相手に対して抱く感情を言う。


要するに、「お前の相手は俺だ!」と言って相手を引き付けるわけだ。そうしておいて、仲間が横からそいつをやっつける、という考えてみれば実に卑怯な戦術だな。


ヘイトを稼ぐって、実は大変なことだ。相手からの攻撃を受けるわけだから、防御が固くないとやっていられない。そういうのを盾役とかタンクとか言う。


ちなみに、相手からターゲットにされることを「タゲを取る」何て言い方もする。


だから、「盾役になって、ヘイトを稼いでてタゲを取ってくれ」なんて言い方をするわけだ。


なんて、こんな話はラノベ読んでりゃ誰ても知ってるわな。


知らないと、意味がわからないことは結構あるな。


たとえば「オーバーチュアから盛り上がったんだが、隣にウリャノフがいて、彼についていってうまくノレたよ。俺は箱推しだが、その兄ちゃんはプニノフだった。」


と言って、通じる人間は、まあ日本に数十万人はいるんだろうけど。


…なんの話だっけ?


そうだ。ヘイトを稼ぐ鈴だ。

片方を振ると、ハニワが寄ってきて攻撃してくる。


もう片方を振ると、妖怪が寄ってきて攻撃してくる。


両方振ると、一遍に攻撃してくるわけだ。

まあ、あまり敵が沢山いると、袋叩きにされちまうな。 少なくとも羽織袴姿の俺には、ちょっと使いどころが難しい。


甲冑でも付けてればいいんだろうけどな。


巻物のほうは、一つではあまりに効果がしょぼいから、せめて3つ以上集まったところで一遍に使おうかと思う。


下手に魔法じゃない妖術に頼っても、結局使えないんだったら期待しないほうがいい。時間もないし、効果のない妖術を練習するくらいなら、先に進んだほうがいいと思う。


というわけで、二日目は第十一層からスタートだ。


第十一層は標準的な洞窟だった。分かれ道や上下があるが、まあ普通の迷路だな。


第十一層になると、人の大きさのハニワと、そのハニワに使役される狼のハニワのペアが出てきた。


ハニワのくせに、狼はすばしこい。なかなか斬りつけられず、翻弄されていく。


で、イトはどうかと言うと、やはりペアで出てくるイノシシの妖怪と鳥の妖怪のペアに翻弄されている。


鳥が飛んでくるので、それを風の妖術で止めようとすると、イノシシの魔物が体当たりしてくる。よけきれないで倒れたりしている。まあ、イトも敏捷だから、戻ってくるイノシシに踏まれることはないが、イノシシを攻撃しようと立ち止まって呪文を唱えようとすると、鳥の魔物が気をそらす攻撃をしてくるのだ。


そのため、イトはうまく相手を攻めきれないでいる。妖怪はなかなかの連携プレイだ。


まあもちろん俺もそれで引き下がるわけではない。


ハニワは妖術を使わないようだ。少なくともこの階層では妖術を使うハニワはいないようだ。であれば、物理的に屠ればいいということになる。 


もちろん埴輪斬りが近距離では活躍するが、遠距離攻撃能力もちゃんと欲しいところだ。

たぶん、俺に強い妖術があれば、鬼にカネボウ、じゃなくて金棒だな。

アスラン・ザラだって遠距離攻撃できる味方がいたほうが効果的に戦えたわけだしな。


とりあえず、人型のハニワを埴輪斬りで倒す。とっととハニワを片付けてイトをサポートしたい。


と思ったら、犬、じゃない狼ハニワがイトを攻撃しようとしている。ああ面倒な。


俺は、両方の鈴を振った。鳥と狼は俺のほうにやってくる。だが、イノシシはイトに突進してきたので、ルートが変わらない。イトがよけるつもりで横っ飛びに飛んだ。その結果、鳥、狼ハニワ、イノシシがまとめて俺に突っ込んできた。


さすがにやばい。


とりあえず、ハニワ斬りを使って、なんとかイノシシをいなすことを第一目標にした。

狼と鳥が体当たりしてくらうが仕方ない。 イノシシよりはましだ。


気分はスペインの闘牛士ってところか。バラを投げるなら明日にしてくれ。


イノシシをよけたところで、狼ハニワにかじられた。この野郎。


俺は頭に来て、埴輪斬りをぶん回して狼ハニワを滅多切りにする。完全にオーバー斬る(お、この表現ちょっとかっこいい)だ。



俺はイトに声をかけ、鳥に対処してもらおう。


埴輪斬りではイノシシは斬れないが、方向を変えさせることはできる。これを何度も繰り返すなら、あとは俺の体力と、イノシシの妖力のせめぎあいだ。


どっちが先に尽きるだろうか。まあ俺にも限界がある。何度か往復し、お互いに疲弊したところで、Uターンして戻ってこようとするイノシシに、イトの妖術がクリーンヒットした。


「ぶぎゃ」イノシシは無様な声を出して倒れ、そのまま消えた。


妖怪は、基本的にものを落さない。だが、ごくたまに巻物とかを落すことはあるらしい。

 今回は何も落さなかった。


これが十一層の敵の力だ。

今日中に突破できるんだろうか? と心配になる。


ちなみに、勾玉以外の収穫はなかった。


こんな感じでハニワペア、妖怪ペアがいろいろ出てきた。

だが、イノシシと鳥、というのが最悪のペアだったようで、他は兎とか亀とか、攻撃力に難があったり遅いので対処しやすかったりで、イトと俺のコンビでうまく対応することだができた。



まあ、対ハニワで俺は物理で無理やり倒しているだけなんだが。それでハニワを片付けて、あとは鈴を使って妖怪のヘイトを稼ぎつつ、相手の出方を見て自分で倒すかイトにお願いするかを決めている。


11層をクリアしたろころで、奥に転移の珠があった。転移の魔法陣があるということだ。



俺とイトは、とりあえずその珠に触って、登録をする。

これで、いつでも11層に来られることになる。



特に面白みのなかった場所だから、来るとしてもずっと先かな、などと思ったりする。



ーーー

ここまで読んでいただいて、ありがとうございます


11層で手間取ってしまいました。



お願いです。


予想よりPVの伸びがありません。

ここまで読んでくださったあなた、お願いですから★を付けてください。

作者のモチベーション維持にご協力を!





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る