第4話 ハニワの中から女の子が出てくるわけがないと思ったのに

いよいよ第五層の階層主との対決だ。

ちなみに、ここまでは問題なく来られるが、この先が大変だ、と祖父の手紙にあった。


今日はこの階層主を倒したら戻ることにしよう。階層主を倒したら、簡単に戻れるらしいし。


もちろん、勝てそうになければ逃げる。

ちなみに、黄泉の洞で、ハニワやその他の妖怪などに負けた場合、意識を失って入口の踊り場に戻っているそうだ。 そのあと1日洞窟に入れないとのこと。集めた勾玉や、一部の装備もなくなってしまうらしい。


負けたら命だけはあるけど、金銭的には損害、ということになる。安全マージンを取って、何とかしよう。


大きな屋敷のようなところだ。門を開いて中に入ると、また一本道だ。

その先にお寺の本堂のような建物がある。


俺は土足のまま階段を上がり、中に入る。


中にもう一つ、両開きの戸があった。ここが多分階層主の間だ。


俺は、戸を開いて中に入った。



…中にいたのは、やはりハニワだった。大きいのが一つと、今まで倒してきたのと同じ大きさのものが3体。


大きいのは、背は人間と同じくらいの大きさだが、頭がとても大きい。

何だか、昔の映画に出てくるtロボットのようだ。ポリバケツをかぶったような感じだ。いや、ハニワだし、でっかい植木鉢をかぶっていると言うほうがイメージに合うかな。


その頭でっかちハニワは、お供三体を引きつれて、ゆっくりと俺のほうに近づいてくる。


俺は、祖父の遺書を思い出す。

たしか、こう書いてあった。


「頭の大きなハニワが出てきたら、これは普通に斬ってはいけない。必ず、頭の外側から5分の1くらいのところを、上段から斬りつけること。左右はどちらでもいいが、それ以上は中側に刃を向けないこと。 もちろん、首や胴や足を横なぎに斬るのも駄目だ。」


何故駄目なのかはわからないが、とりあえず祖父の忠告に従うほうがいいだろう。


だが、まずはお供の三体だ。こいつらは、左右に広がり、正面、と左右に展開してきた。

本来なら結構強いはずで、普通の人間なら対処に苦戦しそうだ。 木刀で叩いたくらいでは倒れないだろうしな。


ただ、俺には埴輪斬りがある。まずは左側のハニワを、外から横なぎに斬る。このハニワは、いままでと同じように、真っ二つに切れて、そのまま消えていく。


返す刀で、今度は正面のハニワを袈裟懸けにに斬る。今度は斜めに綺麗に切れた。断面を見ると、やはり空洞だ。どうなっているのだろう。


俺はそこで態勢を立て直し、右側にいるハニワに対して、上段からど真ん中を唐竹割する。


ハニワはなすすべもなく、綺麗に真っ二つになった。ほぼ左右対称に斬れた。


普通の人は縦に切ったハニワなんて見たことないだろうな。まあ、ご想像のとおおりの形で、なんの変哲もないんだが。


俺の行動を見て、大ハニワも少しびびったのか、立ち止まってしまった。俺はその時を逃さず、正面に戻って、大ハニワの頭右から5分の1くらいのところをめがけて、上段から埴輪斬りを振り下ろす。



頭でっかちのハニワは、逃げもしないで頭でその刃を受けた。


…と思ったら、そのまま頭がガシャーン!と割れた。


いままでは、こんにゃくのように切れていたのに、今回はなぜか陶器のような感じだ。刃にも反動がきた。


ガッシャ―ン!ハニワは音を立てて倒れた。 まだ消えない。



と思ったら、ハニワの姿が薄れ、粗末な布をまとった人間が姿を現した。肌着かもしれない。だが、ハニワ用の肌着かい? 薄汚れているのは、ハニワの土がついているからかもしれない。


ハニワから出てきた人は、そのままうつ伏せに倒れている。気を失っているようで、動かない。


おお、恐怖のハニワ人間だ!なんてことはなく、普通の人間のようだ。


とりあえずゆっくり近づき、不意打ちされないことを確認してから、仰向けにする。

どうやら若い女性のようだ。


「…ありがたし…」と言ったような気がしたが、気のせいかもしれない。



俺はとりあえず、その女の子を連れて帰ることにした。お持ち帰りだ。でも、俺は童貞だから、悪いことはしないよ。多分。少なくとも最初はね。


あたりを見回してみると、床には、紐でつながった二つの鈴が落ちていた。これが今回の景品なのかな。あとは今までで一番大きな勾玉だ。


俺は、落ちていたものをすべて拾って袋にしまってから、彼女を背負い、奥に進んだ。体温は感じるが、あまり体の柔らかい感触はしない。まあ、こっちは羽織袴に身を包んでいるから、あまり感触は感じないんだよな。


ハニワの絵が描かれたふすまのような戸を横に開ける。すると、次の部屋は板の間で、部屋の奥の床に魔法陣らしき模様が描かれている。また、それとは別に、壁に水晶玉が埋め込まれている。


祖父の手紙のとおりだ。

俺は、手のひらをその玉にかざした。すると、彼女をおぶったままで、俺は、予想通り、物置から降りてすぐの踊り場に戻ることができた。


そのまま家に連れて帰り、履物だけ脱がせて、俺の布団に寝かせた。


彼女はちょっと薄汚れていたが、まあ仕方ない。シーツや布団カバーはあとで洗えばいいのだ。

とりあえず、濡らしたタオルで顔だけ拭いてあげる。


出てきたのは、まだ15-6歳くらいに見える可愛らしい少女だった。目鼻立ちは整っているが、まだ幼さが残る。髪の毛は真っ黒で、短くしている。昔の人とか巫女とかは長い髪の毛とう印象があるので、少し意外だ。まあ彼女の正体はまだわからないんだが。


大きな勾玉みたいなものを紐で首から下げている。勾玉に似ているが、ちょっと違う。お守りか何かだろうか?それともドッグタグかな。


彼女の正体が知れないので、とりあえずは変なことはする気はない。もし祟りでもあったら大変だしな。


彼女が倒れているうちに、風呂に水を張り、御粥を作る。普通の人間のように見えるので、何か食べるだろう。


まずは御粥くらいのほうがいいだろう。汁椀に御粥を入れ、上に刻んだ漬物を載せ、横にさじを添えておく。それと、水を入れた湯呑もおいておく。ガラスのコップよりは陶器のほうがいいだろうと思った。


少し冷めたほうが食べやすいだろうな、と思い、そのままちゃぶ台に置いておく。その上に、虫よけの網をかぶせておく。


ほどなく、彼女が目を覚ました。



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