第3話 ハニワの斬り放題なんてできるわけがないと思ったのに

第3話

ハニワの斬り放題なんてできるわけがないと思ったのに



葬式といろいろな手続きを終えて、俺は村の公民館に戻った。

昔は隣町とかに行かないとできなかった多くのことが、この村で出来る。


必要に応じてビデオ会議で書類の相談もできるのがありがたい。お陰で、不動産の名義変更も、相続税の手続きもだいたい終わった。 農地の移転には農業委員会の許可がいるらしいが、これも清水さん一族で仕切っているので、「やっとくわ」で終わった。


なんというワンストップ。一族支配万歳!(いいのかそれで)




祖父の遺書によると、物置から地下に続く道は、黄泉の洞(よみのほら)というらしい。先祖代々が呼んでいた名前なので、由来はわからない。



黄泉とかいうと、死後の世界になるんだよな。ハニワは普通副葬品だから、それでいいのかもしれない。なんで動くのかは知らないが。



黄泉がえり、なんていう小説もあったな。映画化かもされたかもしれない。あ、あと「ヨミ様を呼べ!」と言って寝ている首領を起こすマンガもあったな。


あれ、カキヨミとか言う小説投稿サイトもあったような?気のせいか。


時を戻そう(松陰寺風に。)。

黄泉の洞は、階層になっているらしい。


各階層に、ハニワが出てくる。それから場合によっては妖怪が出てくるらしい。

それを倒しながら、各層を降りていく必要がある。


階層によっては、階層主を倒さないと下に行けないらしい。ただ、5階層ごとに階層主がいる。5階層、10階層の階層主を倒すと、その裏にある小部屋から、地上に戻れるし、一度行けば次回からはその小部屋に戻れるという。10階層以下はまた違うらしいが、それは詳細版を見ないとわからない。


祖父の手紙の中に、指示があった。

「台所の三枚目の床板の奥に、先祖代々伝わるハニワ打擲(ちょうちゃく)の神器があるので、それを使って第二十階層まで攻略せよ。」という意味のメッセージがあった。



ハイエースで家に戻ってすぐ、調べてみる。


台所bの床板を調べてみると、綺麗な刀が出てきた。これ、届け出してないとすると、銃刀法違反だよな…だから隠してたのか? ただ、これでハニワを斬ったら刃こぼれしそうだ。


名前は「埴輪斬り」というらしい。まんまや。

まあ、きっとその名の通り、効果があるんだろう。


というわけで、俺は翌日から、黄泉の洞の攻略を開始することにした。


服装はTシャツと短パンでもいいんだが、雰囲気を出したいし、祖父からのアドバイスもあって、羽織袴にした。これも沢山タンスにあったのだ。 足だけ安全靴にしようかとも思ったが、やはり雰囲気を出すため、地下足袋にした。これも、中に鉄の甲が入っていて、実質は安全靴みたいなものだ。


昔の人の生活の知恵というか攻略の知恵なんだろう。

さすが、ハニワを操る一族だ。


ちなみに、操れるのは、自分が攻略した階層までのハニワだけだそうだ。しかも、能力は最初は一体しか操作できないという。力を手に入れるのは、階層主を倒したときだけらしい。


二十階層まで行ったら、どれくらいの能力が手に入るのだろうか?この家のどこかにある書類に書いてあるのかもしれないが、探す気力はない。


祖父は達筆だった。手紙は筆で書いてあった。こういうのこそ後世のためにワープロで書いてほしい、って祖父には無理だったが。



黄泉の洞は、必ずしも洞窟ではなかった。

階層になっていて、各階層で環境が変わるのだ。


降りてみると、不思議なことに、洞の中は薄明るかった。


懐中電灯を持っていったが、無くても大丈夫なくらいだ。


ヒカリゴケだろうか。ヒカリゴケはやはり死体を栄養にして増えるなどと言われるが、関係があるのであろうか?


ちょっと降りると、踊り場がある。そこで曲がって降りると、第一層になる。


第一層は、中はアップダウンのあるただの荒地という感じだ。とくにめぼしい草が生えているわけでもない、乾いた土と岩がずっと広がっている。まあ暗くて遠くはよく見えないのだが。


その中に、どうやら道らしきものがあり、それを辿ってゆく。あちこちに分岐があるので、マッピングは必須だ。


祖父の遺書の中に、地図を作れと書いてあったので、それをしっかり守って進んでいく。

道には、ところどころハニワが出てきて、襲い掛かってくる。


小さな落し穴のようなものもあり、足を取られたところでハニワが襲ってくる。ハニワトラップだ。色気はないな。


とりあえず、襲い掛かってくるハニワをすべて埴輪斬りで切捨てる。すると、ハニワは勾玉を残して消えていく。


今はハニワしか出てこない。

第一層では小さいのが単独でしか出てこない。

それを埴輪斬りで消し飛ばしながら進んでゆく。正直、今はオーバーキルという感じだ。下手すれば第一層のハニワはそこらに落ちている石ころをぶつけたり、木の棒で叩いても勝てそうだ。


長いこと歩いていくと、地下に降りる階段があった。これでクリアというか、第二層へ行けるということになる。


。第二層では小さいのが複数で襲ってきたが、やはり埴輪斬りの敵ではない。小さいので体当たりされてもさほどのダメージはない。


マッピングしながら進み、第二層も何事もなく済んでしまった。第三層への階段を降りる。



第三層は壁があり、洞窟っぽい。 くねくね曲がって見通しが悪い。


曲がり角から、ちょっと大きいのが複数で徒党を組んでやってきた。


ただし、さすがは埴輪斬りだ。どんどん斬れる。縦にも横にも斜めにも。鎧袖一触という言葉があるが、それに近い。まあヨロイは着てないけど。


ハニワを斬ると、黄泉の洞の中ではハニワは消え失せる。外に出たら単純に壊れてかけらを残すのに、ちょっと不思議だ。


ハニワは消えるときに勾玉を落す。勾玉は、ハニワの大きさに比例するようだ。第三層のハニワの勾玉のほうだ、第一層のハニワの勾玉よりも大きいのだ。

これを集めても特にいいことはないのかもしれないが、とりあえずすべて持ち帰ることにした。


祖父7の手紙によれば、勾玉は、一応畑仕事で使えるそうだからな。

それに、将来、何かの役にたつかもしれないしな。


第三層から下に降りる通路を見つけたところで、今日はここから引き返すことにした。


帰り道で気づいた。


第三層で戻るということは、明日また第一層からやり直しだ。地図を作ったので最短ルートはわかったが、これはやはり効率が悪い。


ここは、第五層の階層主を倒していかないと、先に進めない。

だが、今日は第三層の制覇で終わりにせざるを得なかった。


第三層で戻った一番の理由は、腹が減ったことだ。


黄泉の洞の中では、通常では考えられないくらいエネルギーを消耗する。これは単純に黄泉の洞がそうなのか、それともハニワを斬ることが問題なのかはまだよくわからない。


ただ、体力を消耗し、腹が減るので、戻るのは致し方ないな。

さすがに、腹が減っては戦が出来ぬ、というのはその通りだ。


というか、帰り路も戦闘が一応あるので、体力は温存しておかなければならなかった。その意味、ちょっと失敗したとさえいえる。


地上に往復したら、実際7時間もかかってしまった。朝の7時に洞窟に入り、戻ったらもう2時だった。


まあ、第三層はともかく、二層、一層はハニワ斬りさえあれば何とでもなるのだが。

なんといってもここのハニワは動きが遅い。それに小さいので、殴られ続けても多分死ぬことはない。まあ、どんな大きなハニワにやられても、死ぬことはないんだが。


地図を見ながら地上に戻った俺は、遅い昼飯を食って栄養補給したが、今日はこれまでにして、その後は畑仕事をやった。 一人でやると、やっぱり結構大変だ。よく祖父は一人でこれを回していたな、と感心する。


とりあえず自分で食べる分のキュウリ、トマト、なす、キャベツ、レタスなどを植えるつもりだ。まずは草取りをしたあとで畝を作り、トマトとなすの種を植えてみた。本当は種を水耕か何かで苗床を作って発芽させて、そのあとある程度になってから植えるほうがいいのだが、今回はテストだ。沢山発芽したら間引けばいいだけだ。


家庭菜園程度でスタートしよう。自給自足が前提だしな。


祖父の遺書に従い、畑の端に勾玉を一つ埋めた。これがパワーを呼ぶらしい。本当だろうか?


畑仕事を終え、風呂桶にポンプで水を入れ、薪で風呂を沸かす。まあこれは昔見ていたこともあり、何とかなった。


夜になったので、晩飯を食うことにした。

冷蔵庫にぶちこんであった食材を適当に料理する。台所には、プロパンガスの二口ガス台がある。

高校時代から自炊していたので、一人分の料理はお手のものだ。


ちなみにこの山の中でも、電気が通っている。水は井戸水だが、ポンプでくみ上げているので、台所と洗面所は蛇口から水が出るようになっている。そのため、水汲みは必要ない。そうは言っても風呂は薪をくべて沸かす必要があるので、結構大変だ。ただ、ポンプで直接風呂に水を入れられるようになっているので、思ったよりは何とかなる。


電話は通っているが、なんだか調子が悪い。電話機のせいか、電話線のせいかはわからない。まあ、緊急の場合は防災無線があるから大丈夫だ。


ちなみに、携帯はやはり通じない。山の途中で通じるエリアがあるかもしれないので、今度町に行くときに試してみよう。


テレビは映る。アンテナ万歳だな。NHKの名義も俺に変えた。

インターネットはない。


こんな感じの文明生活だが、始めて見ると結構快適だ。


もともと金がないので、工場で働いているときも、趣味は特になかった。せいぜいテレビを見るか、本を読むくらいだった。本にしても、古本を買うか、誰かが不要になったものをもらうくらいだったしな。


俺は、人と関わらないでも生きていけるのかもしれない、なんて大げさだな

さて、祖父の遺書の続きを探そう。


俺はそのあと、家の中を再度探し、祖父の作った書類、すなわち黄泉の洞攻略マニュアルを天井裏から見つけだした。 これも行李に入っていて、勾玉で虫よけがされていた。


その中にまたいくつか厳重に封をされた封筒がある。


とりあえず、そのまま読める紙を読み始めたが、2-3ページでいっぱいいっぱいだ。100枚くらいあるぞ、これ。遺書じゃなくて単なる記録みたいだな。たぶん、結構前から少しずつ書きためていだんだろう。


読む途中で睡魔に襲われたので、封筒を元通りにしまって寝た。



翌日は弁当のおにぎりを沢山と大きな水筒を持って朝から攻略に臨んだ。


二度目なので、第三層の終わりまで、地図を見ながら最短距離で動くことができた。そうは言っても2時間もかかってしまった。一層の平均40分だな。実際は、第三層で一時間以上も費やしたんだが。


ここで昼飯にする。おにぎりは全部食べるのではなく、残しておく。あとでまた腹が減ったらおやつにしようと思っている。


第四層は、また洞窟だ。

上下西遊に曲がりくねっていて、進みにくい。上向きと下向きのルートがあったりして、マッピングも面倒くさい。


ハニワも、大き目のものが複数徒党を組んでやってくる。まあ、ハニワについては埴輪斬りを使えばすぐに済んでしまうんだが。


何とか進んでいくうちに、ハニワ以外のものが出てきた。いやそれは正確ではない。人型のハニワでないハニワが出てきたのだ。


言ってみれば、子犬のハニワだ。いやもしかしたら狼かもしれない。


ちなみに、犬と狼の区別って何だろう? 牙かな。

でも犬にも牙あるしなあ。 狼のほうが狂暴そうだけど、これどっちだ?と聞かれたら50%くらい間違う自信がある。さすがにチワワなら間違えないが。


アメリカで柴犬連れていたら、狐を飼ってるのかと聞かれた人もいるという。まあ狐のほうがきっと細いからわかるかな。


それはさておき、狼ハニワは人型よりもちょっと素早い。でもやはり埴輪斬りの敵ではないな。 狼を10匹くらい斬ったところで、勾玉ではなく、巻物が出てきた。


外にタイトルがついている。「火術」と。つまり、火の妖術を使えるようになる巻物だ。

これも祖父の遺書に書いてあった。巻物を使うと、黄泉の洞の中限定で妖術が使えるようになると。ただ、巻物は二か月に一本も出ればいいほうらしい。初日で出たのはラッキーだな。


俺は火の巻物を開いた。中に何やら文字が書いてある。その上に手のひらを載せる。すると巻物が光りだした。そのまま眺めていると、そのうちに光が消え、巻物も消えた。



火の術かあ。やはりここは、和風に「火の玉!」と言って手を突き出してみた。すると、手の先から、ろうそくの火にような小さな火の玉だ飛び出し、壁にぶつかって消えた。


おお、これが伝説のファイ…じゃなかった火の玉か。


俺は、やってくる人型小型ハニワに火の玉を投げた。ハニワは、十発くらいの火の玉が当たると、消えうっせた。だが、二つ目を倒す途中でものすごい疲労を感じ、座りこんでしまった。


おそらく魔力、いや妖力切れだ。


仕方ないので、ここで一休みすることにした。残りのおにぎりを食べ、水分も補給する。


まだ妖力が回復したとは思えないが、先があるので、俺は立ち上がった。

その後は埴輪斬りだけで進。まあ、正直このパワーでは火の玉は使い物にならない。


今後妖力量を増やすか、巻物を追加で見つけるかしかないだろう。 

自分の状態を知ることができないのが残念だ。

ちなみに、「ステータスオープン」と言ってみたが、何も起こらない。まあ英語は通じないんだろう。


第四層の奥に進み、階段を見つけt。

いよいよ第五層、階層主のいるところだ。


第五層に降りた。

平坦なところで、一本道がまっすぐ続いている。先のほうに建物らしいものがある。あれば多分、階層主のいる場所だ。


俺は、階層主が待ち受けるであろう場所へと足を進めていった。


ーーーーーー

ここまで読んでいただいて、ありがとうございます。

面白い、と思ったら応援の意味で★★★とハート、コメントを、フォローをお待ちしています。


つまらない!と思うかたは、抗議の意味で★★★をお願いします(笑)。


作者のモチベーションアップにご協力お願いいたします。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る