第14話 ランキングトップ10
セカンドミッションの開催を告げて、鈴木ハジメは塀の向こうに立ち去って行った。
時刻は12時を過ぎた頃。組み立て式テントに備え付けられていた小型の折り畳み椅子に座りながら、リョウタは項垂れていた。テントを組み立てる気力はまだ湧かない。
(また明日もデスゲームがあるなんて…)
今日を生き延びたのは、たまたまだ。
死んでいた可能性は十分あった。
気分を変えようと、ファーストミッションと鈴木の説明を思い出し、重要なポイントを再確認する。
このデスゲームのルールはだいぶ分かってきた。
生き残るために注意すべきことは主に3つ。
1.ミッションで逸脱行為をせず、クリアすること。
2.鈴木を始めとした運営側に危害を加えようとしないこと。
3.ミッションに参加しなかったり、島から脱出する行為は厳禁なこと。
だが悪いことばかりではない。
ミッションの上位3名に入れば、レアアイテムが獲得できることが分かった。残念なことに、どんなアイテムがあるのかは分からないままだが。
現在一番肝心なことである次のミッション内容についての情報は何もない。ルール説明の鈴木の発言から考えるに、こればかりはミッションが始まるまで誰にも分からないだろう。ミッションについては、出たとこ勝負するしかない。
続いてトップランクのサバイバーについて思い出す。
初日にしてランキングトップ10のメンバーが判明した。
ナンバー10:後藤ダイゴ
2メートル超えの大男。21歳と言っていた。坊主頭でTシャツとハーフパンツというラフな格好。外見に似合わず内気な性格。矢野ヒデトシや篠崎ヤヨイと親密な雰囲気だ。瞳が赤くなったことを確認している。ファーストミッションでは異常なほどの怪力を見せた。
ナンバー9:矢野ヒデトシ
医者だが「訳アリ」と言っていた。年齢は48歳で紳士的かつ常識人に思える。白髪交じりの髪は七三で、眼鏡をしている。ストライプシャツに茶色のボトムス、サスペンダーがアクセント。年長者として後藤やヤヨイの親代わりのような存在なのだろうか。後藤と同じく、赤い瞳を確認している。ファーストミッションでトラップを全て回避したことが気にかかる。
ナンバー8:シャオ・ウイリー
関西弁だが在日中国人とのこと。20代中頃でセンター分けの髪型。糸目が特徴的。軽薄な言動をしている。ファー付きのブルゾンに革のズボン。ファーストミッションでは2位。
ナンバー7:如月クレア
グラマラスで妖艶な美女。年齢は30歳前後。髪型は、薄茶色のウェーブがかった腰までのロング。大胆なイブニングドレスを着ている。正直、キャバ嬢や風俗嬢にしか見えない。
ナンバー6:双葉トオル
中学生くらいの美少年。おそらく参加者でも最年少。黒髪のボブカット。服装は白いシャツに白いズボンと白一色。ヤクザにも物怖じしない胆力の持ち主。なぜプログラムに参加しているのか見当がつかない。
ナンバー5:ロジャー・ゴロフキン
ゴロフキン兄弟の弟。連続爆破テロの実行犯であり婦女暴行の罪でも逮捕されている。30歳くらいでスキンヘッドの強面。身長は190センチ近くあり、迷彩服を着ている。非常に粗野で好戦的な性格。
ナンバー4:黒崎アイ
黒髪の清楚系美女。年齢は20歳。髪をアップで纏めており、白いワンピースが良く似合う。華奢で身長は160センチ程度。ナンバーの高さと実力が一致していないように思える。ファーストミッションで助けたら、慕われるようになった。
ナンバー3:月宮カルラ
オヤジ狩りから救ってくれた美少女。10代後半に見えるが、正確な年齢は不明。身長は170センチほど。ハーフだと思われ、シルバーのミディアムショートとグリーンの瞳が目を引く。大きめのグレーのパーカーにスキニージーンズという出で立ち。クールで淡々としているが毒舌で攻撃的だ。路上の喧嘩では空手を使用し、圧倒的な強さだった。ガルシアに敵意を持っているように見える。
ナンバー2:ガルシア・ゴロフキン
ゴロフキン兄弟の兄。テロ組織のリーダーでテロの主犯者。赤髪を逆立てており、赤いコートを着用。年齢は30代中頃で身長は175センチくらい。弟と違い、静かだが有無を言わせない口調。ファーストミッションでは3位。
ナンバー1:一条マコト
何を考えているのか全く分からない男。かなりの男前で切れ長の目が特徴的。年齢は20代後半。身長は180センチちょっと。使い古された黒の革ジャンを着ている。常に冷静沈着で寡黙。というより人と話しているのを見たことが無い。ガスのトラップを的確に当てていた。ファーストミッションでは1位。ランキング、実績ともに1位。
記憶を遡っていたリョウタは「フーッ」と息を吐いた。
(濃いメンバーだな。しかし体格が一番いい後藤ですら10位なんだ。月宮カルラの強さはこの目で見たけど、1位の一条マコトは一体どれほどの…。想像もつかないな)
いや、一条マコトだけではない。最下位のリョウタからすれば、この10人は雲の上の存在のようなものだ。「気にしてはいけない」と思っていても、自分のナンバーの低さが憂鬱感を想起させる。
(ダメだ。1人だと気分が落ち込んでくる…。そういえば、矢野さんにファーストミッションのお礼を言ってなかったな。気分転換も兼ねて会いに行くか)
リョウタはようやく意識を内から外に向けた。
耳に周りの音が入ってくるようになった。
「ん?あれ?おかしいなぁ…、ココにコレを入れればいいのかな?ああ、もう全然わかんないよー」
なにやらブツブツと言っている声が聞こえてくる。すぐ側から。
声の発生源に目を向けると、ポニーテールの女性の後ろ姿が見える。彼女はテントを組み立てようとしているところだった。リョウタから3メートルほどしか離れていない。集中していたリョウタは全く気付かなかったが、どうもずっとテント作りに四苦八苦しているようだ。
丁度、彼女の向こうに歩いている矢野の姿が見えた。
(組み立ての取扱説明書も付いていたし、まあ大丈夫だろう。それよりお礼を言いに行こう).
そう思い、リョウタは矢野に向かって歩き出した。彼女とすれ違おうとする時、「ほあっ!?」という奇声とともに彼女が倒れこんでくる。
(は?)
彼女の後頭部が見事にリョウタの鼻に激突した。
ゴチッ
(~~~~~~~~!!)
痛みで蹲るリョウタ。両手で鼻を押さえるが、涙が滲んできた。
「え?あ!?ごめんなさい!!」
慌てて彼女が謝ってきた。
痛みは治まっていない。
(なんでこんな何もないところで転ぶんだ!?)
流石にリョウタは腹が立ち、立ち上がってその人物を睨んだ。
その瞬間、怒りは吹き飛んだ。鼻の痛みも気にならなくなり、頭が真っ白になる。唖然としながら、彼女を見つめ続ける。
「本当にごめんなさいっ!あたしって凄くドジでして」
記憶の中の姿と一致しすぎている。
なにより声も同じなのだ。
「…ルナ?」
そこにいたのは交通事故で死んだはずの妹のルナだった―――。
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