第21話
集中治療室の中の直人は、ただ眠っているように見えた。
ただ、彼の周りを取り囲んでいるおびただしい機器類が、避ける事が出来ない現実を物語っている。
「話しかけても、いいですか?」
医師が頷くのを見て、彼女は直人に向き直った。
「ナオ兄さん、久しぶり。アオイだよ」
努めて明るく話し掛ける。
「この前はゴメンね、急に帰ったりして。部屋にもいかなくなっちゃって」
「私、ずっと謝りたかったんだ。ごめんなさい」
彼女はペコンと頭を下げた。
「色んな事考えてたの、兄さんの事、お姉ちゃんの事、私の事」
そう、私は本当に考えていたのだ。
ナオ兄さんが亡くなる日まで。
「私らしくいよう、って」
涙が、頬を伝った。
(しまった)
慌てたアオイだが、もう取り返しがつかない。
あとからあとから、想いが溢れ出してくる。
(いやだ、いやだよう)
「私、まだちゃんと言ってないよ」
医師の静止も聞かず、アオイは直人のベッドに取り付いた。
「目を覚ましてよ、お兄ちゃん!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます