第20話

 直人の入院している病院は、彼の住んでいたマンションから二駅離れたところにあった。


「アオイちゃん!!」

 ロビーに降りて来た直人の母は、アオイの姿を見て狼狽した。

「どうしてここが?」

「聞いたんです」

「・・・そう」

 彼女は軽く肩を落とした。

おそらくアオイの母親から聞いたと思ったのだろう。


「隠しているつもりは無かったの。でも、直人がアオイちゃんには言わないでって」

「そんなに、悪いんですか?」

 彼女はあえて聞いた。


 本当は分かっているのだ。

 ナオ兄さんは、あと5日の命だって。


「先生の話だと、この数日が山場らしいわ」

 母親は苦しそうに言った。

「今も、殆ど意識が無いの。話しかけても、軽く目を開ける位で。もし閉じたまんまだったら、私」

 彼女は小さく肩を振るわせた。


 アオイは、そっと彼女の肩に手を触れる。

 その姿は、葬儀場で会った時よりずっと辛そうだった。

 まだ生きている、でも何時まで?

 そういう気持ちが、彼女を追い込んでいるのだろう。

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