第5話
放課後、
アオイはひとり、教室の中でクラス日誌を付けていた。
昔から、何かを書き留める事は嫌いじゃない。
それは、記憶を助けてくれる。
たとえ大切な事を忘れていても、文字が思い出させてくれる。
そして、
思い出したくない事は、代わりに覚えていてくれる。
本日分の出来事を書き終わった彼女は、教壇の引き出しにノートを差し込んだ。
閉めようとしたが、奥のほうに何かが引っ掛かかる感じがする。
(・・・?)
腕を入れて、何とか引っ張り出したアオイ。
引き出しの隙間に引っ掛かっていたのは、1年前のクラス日誌だった。
そのまま戻そうかと思ったが、少し興味を引かれたので、表紙の汚れを軽く払いながらページを捲る。
去年のクラス委員は男だったらしく、ページ一杯骨太な文字で埋め尽くされていた。
それも学級日誌というよりは個人日記みたいで、よく担任の先生が許していたなあと思う内容であった。
「やだ、数学の山田先生おんなじミスしてる」
アオイは、その端々に彼女の記録とだぶらせて、楽しんで見ていた。
あまりに楽しかったので、
普段であれば気が付いていたものを見落としてしまった。
「あ」
次のページを繰った時、指先が凍りついた。
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