第3話

 次の授業の準備を始めようとしている級友の間を抜け、アオイは有夢の元へと向かう。

 が、彼女の姿は消えていた。

「あれ、どこいったんだろう」

「・・・生稲」

 首をかしげる私に、声が掛けられた。

「あ、大友」

 振り返ると、同じクラス委員の大友(おおとも)カズヤが立っていた。

「あのさ、話があるんだけど、昼いいかな?」

「お昼?」



 昼休みの屋上。

 校庭から聞こえる和やかな雰囲気とは対称的に、二人の周辺だけは、ある意味緊張感が増していた。


「・・・ごめんなさい」


 アオイが深々と頭を下げた相手は、動揺を隠せない表情のまま訊いてくる。

「どうして?」

「大友の事は、友達としか見れないから」

 交際を断られた男子生徒が必ずと言っていい程聞く台詞を口にした。


「好きな奴、ほかにいるのか?」

 一瞬考えたあと、彼女は軽く頷いた。


「・・・うん」


「そ、か」

 がっくり肩を落として、大友は退場して行った。

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