『人』だったモノ

「すいません、私たち、これからギルドに戻るんですけどよかったら―――」




とニアが言いかけて止まる。




人型達が振り返る。




しかしその顔の鼻のあるべき場所には空洞があり、目のある場所に光などは無く、ただ影があった。




迷宮の傀儡、スケルトンだ。




「スケルトンだ!皆!隊列を組め!!臨戦態勢に入るぞ!!」




スケルトンは死んだ探検者の遺体から出来上がる。




スケルトンに殺された場合、体のどこかしらに『核』を打たれ、迷宮の魔法に骨だけはかかる事なく残る。




いや、魔法にかかってはいるのだ。




『核』を埋め込まれた骨は、生きていた頃のように探検をする。




しかしそこに自我はなく、ただ歩いているだけだ。




なぜそのようなことをするかと言うと、さらなる傀儡の素材を誘き寄せるためだ。




俺達のように他の探検者と一緒に帰ろうとする者や、仲間とはぐれた者を誘き寄せ、同じ『人』と会えたと思わせて殺す。




スケルトンたちはこの、誘き寄せ、殺し、傀儡にする、そのサイクルによって何体減ったとしても、『在庫』が切れることは無い。




そしてもしスケルトンが殺しきれなかったとしても、自身の骨を壁や床に叩きつけ、警告音を発し、近くにいる仲間を呼び寄せる。




そうなると物量差で勝ち目は無いため、早期決戦が勝敗を決める。




目の前にいるのは4人組の様々な背丈のスケルトンだった。




弓を持ったスケルトンが先制攻撃をしようとヴィルに避ける暇を与えず矢を放った。




命のやり取りが始まった。

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