カミナの部屋

初めてカミナの顔を見たかもしれない。




透き通るような琥珀色の目をしていた。




こうして見ると…


とてつもなく可愛い…




「い…いや…べっ…別に入ろうとは…してない…よ…」




突然出てこられたからか妙な汗をかいてしまっている。




「ほんとに?別に入ってきても良かったんだけど、君たち3人は町に行っちゃったし、ヴィルは皿洗いだし、ゴリアテは教官の武勇伝ひたすら聞いてるし、暇だったんだよね。」




と言いながら、カミナは俺を部屋に招き入れようとする。




「えっ!?入っていいって…いや俺はそもそも…」




と言って否定しようとする、もし勝手に異性の部屋に入る男だと思われたらパーティーの中での村八分状態になりかねないからだ。




「いいから、おいでって。」




ぐい、と袖を引っ張られる。




普段のカミナのことだからだらしがない部屋なのだろうか、と思ったが、部屋は綺麗に整頓されていて、微かに白檀の甘い匂いがした。




「ほら、そこ座ってよ、昔はそこに人居たけどどっか行っちゃって空いてるベッドだから、誰にも文句は言われないよ。」




と指示され、もう入ってしまったものはしょうがないと思い、ベッドに座る。




「カミナって意外と綺麗好きなんだな。」




と言う、言ってから一瞬自分は、「意外と」という所が余計だと思ったが、口から出てしまったものはしょうがない。




「でしょ?いつでも人が来ていいように片付けてるんだけど、みんな来てくれないからいっその事散らかそうかと思ったんだけど、君が来たから無駄じゃなかったね。」




「いや…まぁ…うん、無駄じゃなかったな、カミナ、広間に行かないか?みんなが待ってる。」




とカミナに広間に行くように促す、そうしないと俺がカミナの流れに飲まれたままみんなの元へ戻れそうにないからだ。




「うん、わかった…でもちょっと待って?」




と呼び止められる。




「ん、なんだ?何かあったか?」




なんだろう…と自分は思った。




「指、少し切れてるよ、傷薬塗ってあげるから、手、出して?」




本当だ、知らない間に少し指が切れている、おそらく昼間に道具屋で薬草を買って掴む時に葉で切れてしまったんだろう。




「ありがとう、カミナ。」




と、自分は言い、指を出すと。




カミナは自分の差し出した指によだれを垂らした。




カミナの口から出た暖かな液体が指を伝う。




俺は驚いて飛び跳ねた、カミナは不思議そうな顔をして。




「?どうしたの?消毒だよ?傷薬塗る前には消毒しなきゃでしょ?」




これはどうしたもこうしたもない、これが悪人面のヴィルなら顔を平手打ちしてどっかへ行ってしまうが、目の前にいるのは自分より一回り以上背の小さいカミナだ。




普段のフードを被っている姿しか見ていなかったら平手打ちはしないだろうが逃げ出していた。




が、目の前に居るのは綺麗な目をした美少女だ。




自分の性癖が曲がっていくのを痛感し、心臓がバクバク言うのを我慢しながら、




「驚いて悪かった、カミナ、続けてくれ。」




「うん、わかった。」




と言うと、カミナは指から下に垂れている分のよだれを拭き取り、そして薬草か何かをペーストにしたような物を優しく指に塗り始めた。




他人に指を触られるのは初めてかもしれない。




しかも異性にだ、俺は自分の異性に対する耐性が無いことを恥じながら塗ってもらっていた。




そしてカミナは軽く包帯を短めに切って結びつけると、




「はい、終わり、じゃあ行こっか。」




と言い、自分より早く下へ向かってしまった。




俺はため息をつきながら階段へ向かった。


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