祝辞

遺品回収は1週間の隔週制で行っていた、そして5回目の遺品回収が終わり、1ヶ月も経つと養成所にいる探索者のほとんどが最後の実戦訓練をして本登録を終えたらしい。




幸い死者は居なかったらしいが、今までになかった命のやり取りを終えて、やはり何名かは探索者になるのを諦めたようだった。




探索者になるのを諦めた者は、その培った技術を使ってエンジニアになるか、王国に仕える兵士となる。




20人程の人が1週間前までは居たはずなのに、4層の洗礼というフィルターを通して、既に半分になってしまっていた。




そして卒所式のような物が行われた。




10数人が養成所の外に並ぶ。




そしてまずは所長のありきたりなお世辞と昔話。




「この度は皆さんが将来有望な探検者になれたことに、私はとても感動しています――――」




いつもなぜだか分からないが、こういう集会での話は聞いていると眠くなってきてしまう。




意識も飛び飛びになりながら所長の話を聞いていると、30分程経ってようやく話を終えた。




すると次に各パーティーの担当教官たちの祝辞が始まる。




よくやったと褒める教官。




まだまだ詰めが甘いとまだ自分の担当パーティーを認めない教官。




そして号泣しながら話をしている俺たちの教官。




「うっ…ううううっ…おめ…で…うおおおおおん!!!」




泣きながら俺たちのことを褒めているのは分かるが、泣いているからか何を言っているのかさっぱりわからない。




ふと後ろを見るとゴリアテも泣いている、なんでだよ。




「うぐっ…ひぐっ…うぉぉ…」




他のパーティーに見られるのが少し恥ずかしかったが、まぁ仕方ない、ゴリアテだし。




そして教官たちの祝辞が全て終わり、俺達には探索者の証でもあるドックタグが配られた。




このドックタグは『誰』が『どこ』で死んだかを知るための物であるが、探検者は皆持っているため、免許証のような役割を果たしている。




卒所式も終わり、俺たちは、これからどうするかを話し合うことにした。

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