寝室にて
楽しい時間は終わりを迎え、それぞれ寮にある部屋に向かった。
ニアとカミナは個室だ、ニアはわかるがなぜカミナもなんだろう、と思っていたがさっき分かった。
俺とアルト、そしてゴリアテとヴィルは相部屋だ。
長い廊下を歩いて部屋に着く、ふと後ろの窓に目をやると月が天高く地上を照らしている。
久しぶりに月を見た気がした、一応見てはいたのだが、一通り終わったこの澄んだ気持ちで見るのは久しぶり、いや、初めてかもしれない。
部屋に入ると寮母が今朝干した綺麗なシーツと掛け布団がベッドに掛かっている。
俺は寝巻きに着替え、歯を磨き、寝る準備をする。
しばらくするとアルトが風呂と歯磨きを済ませ部屋にやって来る、俺はパーティーの前に済ませたからまぁいいだろう。
そして灯りを消し、眠りにつく。
「ルドー、お前の親父、探検者なんだろ?どこにいるか検討はついてるのか?」
「いやそれが全然ついてないんだよ、昔養成所の所長に聞いたことはあるけど『空に向かう』ってしか言わなかったらしいんだ。」
「空?空に行くって、空に迷宮でもあるのか?」
「多分な、まぁ迷宮だし、それくらい不思議なことがあってもおかしくないと思うね。」
「すげー面白そうだな!お前の親父、そんなとこあるってのも知ってんのか!すげー人なんだな。」
「そういうアルトの父親はどんな人なんだ?俺の父親の事話したんだし聞いてもいいだろ?」
「あー…俺の親父?つまんねー街の商人さ、せこい奴で小さな同業者は早いうちに潰して、自分より大きな同業者には媚びてるんだ、大きくなったら俺に家業を継げってうるさくてさ、あんな風にはなりたくないから家を出てここに来たんだ。」
「そうか…アルトもアルトで大変なんだな…」
「はっ、いいさ、あそこでの暮らしよりここで暮らす方が俺はずっといいさ、仲間と一緒に困難に立ち向かう、そして解決をする、最高だろ?」
アルトは明るい顔で言う、家族の話をしていた時はずっと暗い顔だったが、打って変わって明るくなった。
「そうだな!俺も今の生活は結構気に入ってるよ、これからずっとみんなで行けたらいいな!」
これは本心だった、昔の3層での実戦訓練の時に何度も見た瀕死の状態でギルドに担ぎ込まれる者。
既に死んでいて服と装備のみが残されそれを見て慟哭する者。
行ったは良いがそれ以降二度と地上に出る事の叶わなかった者は、昔は誰にも気づかれず弔われなかったが、今は迷宮の入退場者がしっかりとカウントされるため、1週間を超えて帰ってこなかった者は必然的に死者のリストに加えられ遺族にその死が伝えられる。
そんな悲しい現実を何度も見たからこそ出た言葉だった。
「俺が後ろにいれば誰も死なないだろ?現にあの時、俺がいなかったらお前は死んでたぜ?」
「そりゃそうだな…ヒーラーは一人しかいないからゴリアテの治療しか出来ずに俺は死んでたな、改めて言うよ、ありがとうな」
「急に改まんなよ…ほら…なんて言うか…恥ずかしいだろ?ほら、俺はもう寝るぞ」
そう言うとアルトは壁を向いて寝てしまった。
昨日、ネズミとの殺し合いがあったとは思えない、遠い昔の様だった。
明日は教官を連れての4層進出だ――――――――――
束の間の休息をとろう。
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