それぞれの理由

パーティーの途中ニアが言った。




「ねぇ、みんな、仮パーティじゃなくなったんだし探検者になった理由、言い合うことにしない?」




「あぁ、俺はいいぜ、みんなもいいだろ?」




アルトが言う、俺とゴリアテは頷いたがカミナは鶏肉をまだ食ってるし、ヴィルは乗り気じゃないらしい。




「じゃあルドーから言ってくれよ。」




「えっ?俺からか…」




少し驚いたがまあいいだろう。




「じゃあ俺から話すことにするよ、俺はそもそも探検者になった理由はないんだよ、勝手に親に入れられたからね。」




「え?親に勝手に入れられたのか?とんだやべー親だな。」




ヴィルが馬鹿にしたようにいう。






「まぁ勝手に入れたのは俺の父親だな、俺の父親は探検者なんだけど、母親は俺を産んだ時に死んでたんだ、それで子育てに飽きたんだか知らないけど今から7年前の…10歳の時にここに入れられたんだよ、それ以来俺と父さんは会ってないし、どこにいるかも分からない。」




「で?お前の親父はどこにいるか分からないのか?お前もそうならないように祈っとくよ。」




相変わらず嫌なこと言うヴィルだが俺もそうはなりたくないな。




「まぁ俺はこんなとこだな、アルトはどーなんだ?」ルドーが聞いた。




「俺は特にないけど、楽しいことがしたいからかな。」




俺を含めたパーティー全員が驚く、いや、正確には鶏肉をひたすら食べていたカミナ以外の全員だった。




そりゃそうだ、楽しいことが命をかけることなら常軌を逸している。




しかし少しわかるかもしれない、『ネズミ』と戦った時の命のやり取りをした時の高揚感はたしかにあった。




「俺はこんな理由だって、しょうもないだろ?」


と笑いながら言う。




「ほら、ゴリアテ、お前の探検する理由は?」




「おれはな、かぞくをやしなうためだ。」




なるほど、仲間思いのゴリアテらしい理由だ。




確かゴリアテは両親と妹が2人いるって言ってたな、さすがパーティーの良い奴枠だ。




「ほら、ヴィル、おまえのばんだ。」




「あ?俺か…俺はまぁ金が欲しいんだよ、だからデカいヤマ1つ当てたらさっさと深追いせず引退するんだ。」




ヴィルはまぁそんなことだろうと思っていた。


悪人だと思われそうな顔の1本の傷と鋭い目、ギザギザの歯、高い背丈に筋肉がそこそこある。




俺なら初めて会うやつがこれなら間違いなく逃げ出すだろう。




実際ここまで仲が悪くなったのは、昔、ヴィルと初めて会った時に、ヴィルを見て逃げ出してしまったからでもある。




「ほらよ、これで満足か?ニア?カミナ?どっちでもいいぜ、俺の理由を聞いたんだ、言ってくれよ?」




「じゃあ私が言うわね」




ニアが口を開く。




「私はどんな傷や亡くなり方でも直せる秘術を探してるの。」





初めて聞くな、そんな物。


魔法だって限界があるんじゃないかと思っていた。




「昔の賢者が悪人に使われないために迷宮の奥にしまい込んだらしいの、私はそれを使ってどんな人でも治したいの。」




さすがヒーラーと言った所だ、容姿もいいし性格もいい、100点満点だろう。




「じゃあ最後にカミナ、言って?」




フードを被った小さい背のカミナが声を出す。




「私は…」




初めて声を聞く、か細い声、こいつ女だったのか…




「私は前の生活を捨てたかったから。」




お?これは…重い話か…?




「私、実は自分で言うのもなんだけど、そこそこの所で生活してて、したくも無い事を教えられてて、退屈だったのだから逃げ出してここに来たの。」




いろいろな理由があるんだな…と思った。




「ここは私の新しい人生の場所なの、だからみんなは死なないでね?」




正直に言うと、カミナの、「死なないでね?」と言った所が何故か怖かった。




「あぁ、死なないようにするよ、な!ゴリアテ!」




アルトがゴリアテの肩を叩き、ゴリアテ恥ずかしそうにする。




未だに死にかけた事をネタにされるゴリアテが不憫でならないが生きていてこそ出来る話だな、と俺は思った。




よし、夜も更けてきた。






寮に帰るとしよう。






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