決断の物語

《研鑽せし冒険者》:理由

 油断した。


消えゆく意識の中、ティルは何とか意識を覚醒させようとするが身体がいうことをきかない。


激痛を通り越し、もはや何ら痛みを感じていない左腕を見るのが恐ろしい。

視界が掠れ、大地に横たえている身体の感覚はあるものの、脳から送られる信号がどこかで意図的に防がれてしまっているのか、自分の物とは思えない。

血が滲み、ぼやける視界がティルに覆いかぶさり、何かを必死に叫んでいるリンの姿を映し出す。


すると、リンの肩越しにモンスターらしき影が見え、ティルは声を張り上げてリンに警告しようとするが、ただ息を吐いただけに終わった。

最後の気力を振り絞り、手をのべて魔法を使おうとするが、ティルの生存本能が身体機能の停止を命じ、意識を闇へと引きずり込んだ。

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