Mさんの感想文(異世界中華街)

 感想文


 最近、中原さんの「一無所有——異世界中華街動乱」という作品を読みました。

 今回の作品は中原さんが今まで書いてくれた他の作品とは桁違いで、思ったことや伝えたい気持ちも山ほどあります。

 以下は僕の個人的な感想や解釈のまとめです。


 好きなところ:


 キャラクター


 翼とチャハヤの関係性が好きです。

 内向型と外向型の対照、そして身分も超えている真の友情。

 そのため、彼女たちの関係性は非常に興味深いと思います。

 彼女たちの会話シーンを読むと微笑ましくて仕方がありません。

 穂高政治の苦戦が魅力的です。

 どれだけ苦しんでも諦めることなく闘い続ける誠治のようなキャラクターが好きです。

 彼の自由の追求は、常に苦戦しているすべての華奴(ブダカン)も代表していると思います。

 その視点から見ると彼は非常に象徴的なキャラクターと見取られます。

 たった一人のキャラクターを通してすべての華奴の悩みや苦しみを描写する事が出来て見事な文章だと思います。

 蔵王聡も翼と政治の指導役として見事に描かれていて普通にカッコいいです。

 

 ストーリー


 単刀直入に言えば話が非常に面白いです。

 予測できない展開に溢れており、バトルシーンも上手に書かれていて、何章も夢中になって読み続けました。

 神崎翼と穂高政治、話の大抵は彼らの視点から語られています。

 彼らは数少ない日本人同士でありながら戦争で敵になり、戦わなければならなくなってしまうという皮肉な展開が興味深いと思います。

 彼らが常に変化する世界にどう対応するのか期待が湧いてきます。


 メッセージ


 差別への批判や人権が話の主な話題です。

 そして、キャラクターや物語を通してそのメッセージがちゃんと伝わってくると思います。


 世界設定


 異世界や転生、魔法などが小説によく出てきますがその中で、見慣れて見飽きてきたパターンもありますが、中原さんはそのよく使われているテーマに

 中華街という独自の捻りを加えたことで僕の関心を引きました。

 物語の世界はユニークで広いです。

 様々な街や国を作り、リアルの世界みたいに各地にそれぞれの事情を与えており、その多様性は現実味を強く感じさせます。

 パワー体系が好きです。

 合理的で魔術を使える人と使えない人のバトルシーンのテンションも高く、面白さを増しています。


 言葉遣い


 言葉遣いが前よりも綺麗になったと思います。

 状況、外見、そして感情の描写が上手です。


 好きじゃないところ:


 人工言語

 

 人工言語を作るにはたくさんの努力がいることを理解しています。

 ヴェリティ語という人工言語を作って、小説で生かしていることも

 心の底から尊敬しています。それを踏まえたうえで以下を読んでください。

 この物語の舞台は異世界で現地の人が地球にない言語で話すのは自然だと思いますが

 読者がそのことが分かった時点で異世界語を使い続ける意味が本当にあるのでしょうか?

 魔術を「ヤリディ」じゃなくて「マジュツ」と、そのまま読めば意味が変わるでしょうか?

 火「アフィ」・水「アヴァ」など、日本語のままで読めばニュアンスが変わるでしょうか?

 単語の上に付けられたヴェリティ語の一切を無視して読んだら読者には違う印象が与えられてしまうでしょうか?

 個人的には全てNOだと思います。ヴェリティ語が覚えづらくて、話に集中できない時もありました。

 

 キャラクターの急すぎる登場


 これはあくまでも個人的な意見ですが、キャラクターの整理がめちゃくちゃです。

 名前を覚えるのが大変で、後半のあたりにたくさんの人物が一気に登場した時、

 名前はおろか、その人物の立場や役割すら理解できず、混乱しました。

 

 まとめ

 

 全体をまとめると、

 この小説は素晴らしい作品です。

 そうでなければ、この感想文を書くことはなかったでしょう。

 読んでいて楽しかったです!

 続きを楽しみにしています。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る