創作雑感

ここ数年の創作について

 どうしたらいいんだろうな、というのが本音。


 「一無所有――異世界中華街動乱――(原題:もたざるもの)」を書き始めたのは四年前だった。

 当時はうつがひどく、自分のやれることをやってから死のう、ぐらいに考えていた。

 想像を絶するほど凄まじい顎関節症の痛み、末期がんで死にかけの父と認知症で自力で生活できなくなった祖父母の介護、あらゆる出来事が私を殺しに来る勢いで襲い掛かり、真剣に近所の公園にある桜の木で首を吊るかで悩んでいた。

 そんな中で小説を書くのは現実逃避でしかなかったが、まあ多少生きる支えにはなった。

 そもそも私は世界観設定を作るのが好きなだけで、あまり完結させる気もなかった。

 異世界に中国人が増えすぎて中華街誕生なんて面白くね、ぐらいなノリで作り始めたが、実際に東南アジアとかの中華街の歴史やら何やらを色々調べてみると奥が深く、短期間ちょろっと調べた程度ではどうにもならないところも多かった。


 あれから更に色々あった。

 父の祖父母への暴力を見せつけられる毎日に疲れ、実家から逃げ出した私はかなり長期にわたり住所不定無職ホームレスだった。摂食障害(?)で体重は激減、いよいよ本格的に精神が崩壊して友人たちにも多大な迷惑をかけ、バイトや日雇いで働いてもすぐに辞めるのを繰り返し、このままではいけないと思って精神病院に入院しようとしたが家族に止められた(私が精神病であることが認められなかったらしい)。二十七、八歳の頃は本を読むことはおろか職場の人の名前を覚えることもできず、日常生活を送るのですらかなり困難なレベルだった。

 そんなわけで当然しばらくの間執筆不能に陥った。全ては頓挫したかに思われた。

 

 父の死後しばらく経ってから「もたざるもの」の続きを書こうと思って書いてみたが、心身共に疲れ切っていたせいでやはりうまくいかず悩んでいた。そんなときふと「架空の方言とそれが話される県を作ってみたら面白いのでは」と思い立ち、気晴らしのつもりで「レモン味のラムネ」を書き始めた。

 元々長編を書くのに慣れていないのに加え、精神が崩壊していたのでよく分からないストーリーになってしまったが、あんなメチャクチャな作品でも気に入ってくれた人もいらしたようでよかった。

(あの世界観を生かしてもっと別の話が書けないかと構想を練っているが、「鬼月禁忌」以外は特に形にできてていない)


 「レモン味のラムネ」を書いたことがいい練習になって文章を書く能力を少しずつ取り戻してきた私は、「前略、自殺した君へ」と「もたざるもの」の二つを推敲し読みやすくする作業に着手した。その結果、この二つに関しては高い評価をもらえた。

 このことで少し元気が出て、やっとまた創作をしようという気力が出てきた。


 最近は「シュガーバスター★あんこ」と「ノルディ海峡にかかる橋」の二つを書いたが、まあこれもうまくやればもっと面白い作品にできる気がする。パッ、とこういう作品が作り出せる、ということは(以前ほどでないにしろ)執筆する力を取り戻してきた、と言えるのではないかと思う。


 もちろん上記の作品も完璧ではなく問題点も色々あるので、いかにして長編小説を書ききるかなどが今後の課題だが、とりあえずこの三年を生き抜いたことだけでも儲けものだったと思っておく。

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