パリ、処刑編

第6話①

 パリに帰ってくると、王宮の前では民衆によるデモが行われていた。

 来る途中、私は初めて知った。マリーさんは、革命が起こる少し前、小麦不足で民衆が苦しんでいるというのに、「パンがないならケーキを食べればいい」といったらしい。私はびっくりした。だって、パンよりもケーキのほうが高いのは当たり前でしょ?小麦がなくてパンが食べれないときに、王妃がそんなことを言ったって知れたら、そりゃ反感を買うよね。わかるわかる。それが直接革命の原因にはならなくても、マリーさんやばいこと言っちゃったな、とは思う。

 昨日、ちょっとした(?)事件があった。

 民衆が王宮になだれ込んできたのだ。

「王権を停止しろ!」

「革命はまだ終わっていないぞ!」

 入り込んできた人たちはそんなことを叫んでいた。マリーさんはちょうど隣にいたルイさんに寄りかかり、「助けて……」とつぶやいた。ルイさんはマリーさんの肩を抱くと、「大丈夫だ。」と彼女を安心させようとしていた。

 いい夫婦だよね、この二人。

 たまたま私は居合わせて、ロべスはたまたま王宮にはいなかった。私だけ、あの現場を見た。

 なんか、昨日のアレを見て、二人が逃げ出した理由が分かった気がする。

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