第5話②

 私にはさっぱりわからないケンカがどんどん熱を帯びてゆく。共和政がどうたらこうたら、王政がどうたらこうたら……。私にはそんなことは全然重要には思えない。

 ルイさんって、フランスのことを考えるよりも前に、人間でしょ?マリーさんという奥さんがいて、守るべき人がいて、その大切な人のことを一番に考えたら逃げるのが一番いい。ルイさんはそう思ったんじゃない?

「ねえ、二人とも、やめてよ。」

 二人の声は止まらない。

「王政では市民の権利は守られない。王が何もかも勝手に決めてしまう。例えば税だ。すべてが王一人の意思によってきめられてはならないのだ!」

「違う。我ら一族は代々、キチンと帝王学を学び、民衆のために政治をしてきた。今までの平穏な世の中を作ってきたのは他でもない、王政のおかげだろう。」

「やめろよ!」

 二人は私の叫びを聞いてやっと我に返ったようだ。マリーさんはさっきからずっと泣いている。自らの末路を想像すれば、そりゃあ涙も出るよね。わかるわかる。誰だって死にたくないもん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る