第3話 崩壊

いじめからも解放され、私は中学二年生に。

小学校の頃仲の良かった友達と、同じクラスになり、

楽しい学校生活を送っていた。

依然として、家では一人だったが、

学校に心の拠り所ができ、とてもうれしかった。

やっと平穏な生活を送れると思っていた。

だがそんな私がばかだった。


頭のいい進学校へ進学した兄弟もいて、

また、レベルの高い塾に通っている兄弟もいた。

中学に入ってから、成績が悪かった私はよく兄弟たちと、

比較されるようになった。

父は単身赴任中で家にはおらず、

母は、出来のいい兄弟たちに付きっきりになった。

よくわからない理由で怒鳴られることも多々あった。

どんどん母は私に興味を示さなくなった。

どんなに遅く帰っても、一切怒らなかった。

次第に家の中で口を開くことは少なくなり、

気付いたら、本当に一人ぼっちになっていた。

それでも、年に一度の誕生日はお祝いしてくれたし、

全部が全部うまくいっていないわけではなかった。

買い物にも一緒に行っていたし、

ただ私の学校の事や、勉強の事に期待されなくなって、

当たりがきつくなっただけだった。


中学二年生の時に、母と一度だけ大喧嘩をしたことがあった。

私の態度がその日の母は気に入らなかったらしく、

口論になった。

その際に、

「お前なんかうちの子じゃない。

こんな子育てた覚えはない。」

と、言われた。


”私も別に生まれてきたかったわけじゃない”


心のどこかでそう思ってしまった。

気が付くとカッターナイフを自分の首に当てていた。

しかし直前になって、手首に変え、勢いよく手前に引いた。

小学六年生のあの日から私は、

自傷行為に依存するようになっていた。

傷口の手当てをしたかったのだが、

絆創膏や消毒液を一階の洗面所に置きっぱなしにしていたので、

どうしても下に降りる必要があった。


下に降りて絆創膏を取ろうとしたときに、

母に傷口を見られた。

さすがの母も心配してくれるのではないかと、

少し期待していた。

しかし、

「なに?当て付け?

そんなので死ねると思ってるの?

ばかじゃないの。そんなので死ねないし気持ち悪いからやめて。」

それが母の口から出た言葉のすべてだった。鼻で笑いながらそう言われた。


こんな傷じゃ死ねない事くらい私もわかっていた。

でもせめて、大丈夫?くらいの言葉が欲しかった。

ここで誤解してほしくないのが、決して心配されたくて、

自傷行為をしたわけではないと言う事。

私の中でのストレスの発散場所がそれだっただけの話だ。


それから誰かに怒られるたびに、

つらいことがあるたびにそれに縋るようになった。

腕は傷だらけのまま、一年中長袖を着て、

私の中学二年生の年は、幕を閉じた。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る