第9話 人並みの幸せ
大阪から戻って、また少し息苦しい日々だったかもしれない。たがそこは、持ち前の気の強さで負けるはずもなかった。
美人で上品な姑は、
「おによめ、おによめ、鬼嫁じゃ」
と、軽快な節をつけて、杖をつきながら歩いたらしい。
間もなく、第一子に恵まれた。
大阪よりこちらの水が体にあっていたのだろうか。かわいいかわいい長男であった。
待ちに待って授かった息子。溺愛に溺愛し尽くした。得意の裁縫で、おしゃれな洋服を作り、写真に収める。五十鈴にそっくりな子であった。
数年後には次男、そしてまた数年後には長女が生まれた。
長女のときには40歳での出産。産後の日だちが悪かったのか、出血が止まらず、生死を彷徨うほどだったようだ。数え年で42歳で産む子は捨てねばならぬ…とのことで、ひとまず本家の玄関前に置いて、親族がすぐ拾いに行くというような、縁起担ぎかならわしか、のようなことをしたらしい。それでも、男女3人の宝に恵まれ、やっと人並みの幸せを手にしたと感じたのだった。
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