第10話 弟秘話
残念ながら姉様は結婚すると言った。
俺はどうしたらいいんだ。
なんで、あんなヤローがいいんだ。
「だけど、君どうするつもりだったの?」
義兄(予定)は尋ねてきた。
「そんなこと、あなたに関係ないでしょう」
俺はブスくれた。
「妻が君を大事に思ってるから、何もしないけど、重大な犯罪だよね、これ」
「たかが手紙を隠しただけでしょう?」
「だって、ボーム侯爵と侯爵令嬢は、謹慎なんだよ? 元を正せば、それだって君のせいだ」
手紙なんか隠して、結果、王太子を公爵家から遠ざけたせいで、よけいな憶測を生み、それであんな誤解に基づく騒ぎになったのだと。
「あいつらには似合いじゃないですか? 軽率すぎる。王家をバカにしてると思う」
「お前が一番バカにしてたろ?」
「そんなことはありません。僕、まだ成年に達したばかりの子どもですから」
一応、言ってみる。
「お前がそれを言うか」
俺は殿下を眺めた。権力者か。
ああ、どんな重罪でも受けてやる。
もう、欲しいものなんか、この世に存在しないのだ。
俺に向けられる、俺だけに向けられる姉様のあの笑顔。
困った時、相談しに来る時、頼りにされていると思っただけで、世界中を敵に回してでも勝ってやると思ってた。
もう、なんにもない。
義兄(予定)は困った顔をした。
「お前は若すぎる」
二十歳のてめえに言われたかないよ。
「とにかくセバスは、公爵家に置いといてやれ」
知ってるさ。切手コレクターなんか嘘だってこと。
「あいつが正しい方向に舵を切ってくれたんだから」
俺にとっては間違った方向だ。
「ロザリンダにとって正しい方向だから、あいつを恨むな」
のろけるな。
あいつが婚約破棄してくれれば、俺も姉様もずっと独身で、養子を取るつもりだった。
むろん、俺と姉様の間の子どもだ。
カネさえ出せば、なんとでもなる。
姉様は……時間をかけて、説得するつもりだった。
「クリス様、晩餐会の招待状が届いております」
「行かない」
「従姉妹のカタリナ様のデビューでございます。お父様が亡くなられたので、お母様からの切なるお願いでございます」
「なんで、そんなことのために俺を呼ぶんだ」
「父上が亡くなられているので、舐められたくないのでございますよ。別にクリス様と結婚したいとか、そう言うわけではございません。ロザリンダ様によく似た
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