二十四話「白面」
――羅城門前にて三柱は集合した。
「戻ることが出来たか、タチガミよ。こっちは問題ないぞ。」
「何とか無事でしたね。割に危ないところでした。」
「そうか、じゃあ私等の寄越した助け舟には上手く乗れたようだな。」
「そうですね。彼女らが居なければ危ないところでした。」
「ただな、あの端居とか言う人間には何か嫌な予感がしたんだ。今回の一件で貸を作ったのはこの先不味いことになるやもしれん。」
「ただまあただの予感じゃないか?いざという時に俺らの仲間になってくれたんだし気にする事ないだろ?」
「おっ、これは楽観的ですね。」
「うるせー。俺はただ今現在では観測しようの無い事をそんなに気にする必要があるのかと言いたいんだ。」
「単純に気になるのでは?土倉の戸締りとか何度も確認しがちじゃないですか。」
「……確かに。」
「まあ薬師の言ってる事も一理あるさね。それじゃ狐の所へ行くとするか。」
「そうしましょう。」
「了解。」
そうしておよそ七日かけて三柱は諏訪へと戻られなさった。そうして戻られた三柱はモレヤ神のおわせる処へと出向かれた。
「よくぞ帰って来た。それで、首尾は?」
「問題なく狐の首を刎ねた物の亡骸を手に入れました。」
「そうかならば良い。長きを生きる人々とは違い吾らは現状と刹那に生きているからな。元の均衡が戻ればそれが一番であろ。」
「モレヤ様、建御名方命は何処にお返しすれば良いでしょうか?」
そう言ってタチガミは蛇を取り出した。
「ああ、そうだったな。今この場で返してもらうとしよう。ほれ、戻ってこい。」
蛇はモレヤ神のおわせる社を登って彼の神の長い髪の中へと消えていった。
「さて吾との話はもうよいだろう。狐どもの場所へ行ってやると良い。それか先に河童どもに顔を出すか?」
「一旦先に狐の方へ行く予定さね。元はと言えば私らの思慮が足りんかったことが原因、先にそっち行くのが筋だろうさね。」
「珍しく筋通すのか。吾も嬉しいぞ。」
「それはまあ、善処します……」
(なんか親に諭されたみたいだな。)
「まあ、狐の所に行くならここから隠れ里の中心に行くと良い。」
「おっ悪いね。」
「有難く使わせてもらいます。」
そうして神社の中に入るとそこには活気のあふれた街が広がっていた。
「ここは……?」
「ここは隠れ里に住む者たちの中心街だ。他のいろんな種族の隠れ里にもつながってるぞ。」
「まあ割と便利な場所ですね。ここから狐の隠れ里に生きましょう。」
――そうして狐の隠れ里。
「お待ちしてました。吞乃様。自機族長がお待ちです。」
「ああ、悪かった。もう準備は出来てるさ。」
「お手数をおかけして申し訳ありません。」
「それで自機族長のとこに案内してくれ。」
「承りました。」
鬱蒼とした森の中を進んでいくと円状に開かれた場所へと着いた。そこには茶色の毛を持った狐が鎮座していた。
「吞乃様、我々のために力を使って下さりありがとうございます。」
「なに、気にする必要ないさ。玉藻前が死んだのは私等のせいでもある。まあ筋を通したって訳だ。」
「そうですか。」
「まあ、喰らうといいさ。玉藻前も準備は出来てるだろう。」
「……それでは、失礼します。」
狐はマサカドの肉を喰らった。するとどうであろう、茶色の毛は白に近い金へと変化し、爆発的に増加した妖力を抑えきることが出来ず、周囲は狐の妖力で満たされた。そうして暫く経った後、狐は自身の妖力を抑えるために人型へと変化する、するとやはり白面金毛九尾の狐らしい見事な美女へと変化した。
「うまくいったようだな。」
「ですね。」
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