十二話「河童たち」



「―成程ね言いたいことは分かった。その件に関しては近くの村に顔出してるタチガミが帰ってからじっくり話をする。だがなんで私らが帰ってくるのを待たなかったんだい?」


「待ったらまた前回のように長くなるでしょう?」



俺たちが都に行く道中の休憩しようってのにこの河童―平蔵はまたなんか持ってきよった。て言うかなんでそんな冷静に口答え出来るんだよ。もうちょっと何と言うか敬意とか見せないと危ないよ?吞乃さん結構感情的だから。



「うっ…それは、死体の処理もできないのに戦を続けて馬鹿みたいに以津真天を沸かせたあいつ等が悪いから…」



帰るの遅くなるのは図星なんかい!



「只今戻りました。おやおや、遠目では分かりませんでしたが平蔵さんでしたか。一体どうしたんです?」


「いやそれがだな、一部の河童が私等について来たいみたいでな、それでそいつらの代表としてコイツがやって来た訳だ。処遇についてはまあ、タチガミ、お前が考えろ。」


「そうですか、考えるのがめんどくさいんですね?」


「そうだ。」



いや言い切るなよ。仮にも貴方は俺らのリーダーなんだし。



「分かりました。では平蔵さん、貴方は事件を呼び寄せます。」


「ですね、伊達に商売の神やっちゃいませんよ。」


「ですけどもあなた自身は事件の原因ではなく、事件を知る機会が多いだけです。なので私たちはあなたが居ても居なくても事件に巻き込まれるんですよね。」


「―成程、だから全国に分布してる河童の繋がりを利用して私が手に入れた情報を伝達しろという事ですか。」


「そういう事ですね。出来ますか?」



話の流れが全然掴めねえ…ええとなんだ?平蔵に集まってくる事件を河童のネットワークを使って教えてくれって話なんだよな?ほんとにこの人たち会話が飛躍気味で分かりにくい。ただ河童にとっては難しい話ではないがなんで平蔵さんは苦笑い気味なんだ?



「タチガミ様も悪いですね、私達河童はその性格故に情報伝達に向いていないことぐらいご存じでしょうに。本当は別の何か考えているのでしょう?」


「当然、なので基本的にそっちの役割はおまけです、もう少ししたらそう言うのが得な方々を連れてきます。」


「まあ言ってもアンタらがいるだけで連れてくる必要がある数が減るから全く要らない訳じゃないがな。」


「それでいて、やはり貴方がた河童の強みはその分布の広さと知恵と総数にあります。そして私達は今後仲間が増えるとしても両手の域を出ることはないでしょう。故に貴方がたには私達が動かし易い分隊を組んで頂きたい。」


「ただ、私達に協力したいっていうその河童たちの数にも依るどの程度の規模ならいけるんだ?」


「そうですね、この私平蔵が知りうる限りはこの国で私たちに協力していただけそうなのは少なめに見積もっておよそ万は下らない程度かと。」


「一万か、一つの国につき動かせるのはおよそ二十程度、ほかの国から連れてくることも考えておおよそ百から五十か。悪くない数かな?」



ちょっと待て、50~100で十分だと?素人の俺からしても必要な数を満たしているとは思えないんだが?



「いやいや待て待て、百から五十で足りるのか?鬼と狐なんてそれこそ万は下らない数いたぞ?」


「確かに正面から総兵力をぶつける戦いにはあまりにも足りませんが私たちの本懐はそこにありません。」


「私等の仕事はあくまでも対立や事件の鎮静化で、だから先の狐と鬼の争いのように第三者として乱入するのが主になる。その時、それこそ今みたいに数が少なすぎると困る事が偶にあるんだが、この話の兵力はそういう時に頭数を増やすのに使う兵力さね。」


「もし明確に私たちに敵対する者が居ても色々な所を回っている関係上まとまった兵力をぶつけられる可能性も低いのでそんなに多く必要な訳では元から無いんですよ。」



成程な、自分たちの組織の規模的にあまり多くの河童は必要ないという事か。



「それでは、他の河童たちに私から呼ばれたら力を貸すように言っておく方向でよろしいでしょうか?」


「ああ、それで頼んだよ。」


「了解しました。それでは私はここで退散させていただきます。」



平蔵は割と苦労人なのか?でも里のあの感じだと割と好き勝手してそうだな。まあそんな事はどうでも良いか。



「まあ、便利屋が増えたな。」


「そうですね。」


「ああそうだ、後都までどれぐらいだ?」


「ん?まあ都は人間で二日、大山は明日に着く程度だしもう少しだな。」


「我々は夜通し歩くのでまあおおよそ半日程度で大江山に着くでしょう。」



一体この国の中央はどんなものなのだろうか、大江山の鬼達は俺についてどう思うのだろうか。期待に膨らむ胸の中に少しばかり不安が混じっている――

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