四話「土着神」

「お一人を除いて事の重大さが分かっていただけたようで何よりです。」

「まあ日が浅いので仕方ありません。それよりも今からどうします吞乃様」

「いったん外に出て話し合おう、邪魔したな。」


分からなくて悪かったな。と言うかもう動くのか。話を聞く限り未だ兵が集まってすらいないって感じだったがな。


「まあ先ず最初に話をつけないといけない場所がある、そこへ行くぞ。」

「あそこですか、別に良いのでは?確かにべらぼうに強いと言うか畏ろしい方ですけども。言っても一地方の土着神ですよ?」


本気で恐れてるようには見えんがな!と言うか俺の地元の土着神ってなんだ。


「今からどこへ行こうって言うんだ?」

「この辺で一番の土地神様です。呪いや祟りの神様になりますね。一応私たちは彼女の管轄下にいるんですかね?」

「多分そうじゃないか?だから話をつけようと思ったのさ。『これから大規模な抗争が起きるけど大丈夫か?』ってね。」


なるほど~神様の世界にも上下関係あるんだな~。生まれてから日が浅すぎる自分はどういう立ち位置なのだろうか?絶対下っ端じゃん。結局こっちでもブラック勤めです!はやめて欲しいな。


「まあ初動が早いに越したこたあない。さっさと行くぞ。」

「了解です。」

「分かった。」


――分かっちゃいたけど移動が全部徒歩なのは時間かかるし面倒だな。昨日の夜に出てもう日が落ちかけてる。まあ疲れを感じないだけまだ良いか。それにしても元の世界へ戻ることって出来るのか?いやまあできたところで戻るかどうかは分からんが。


「よしついたぞ。」

「久々ですねぇ。」


おっと、考えに浸っていて周りが見れていなかった。あんまリ神社には詳しくないけど地元の神社ならみて分かるかもしれんな――


「ここかぁ…」

「なんだ知っているのか?」

「いや夢で見たような気がしてな。それもろくでもない。」

「ほーん。」


我ながら無茶のある言い訳だ。ただこの二人に現代の話しても面倒なことになるような気がするからこれでなんとか場をしのごう。それは兎も角神社だ。あの巨大な注連縄のある長野の神社なんて一つしか知らない。いや、複数あっても俺レベルの人間でもよく知るのはこの神社ぐらいなもんだ。


諏訪大社。ゲームのキャラの元ネタだったりで割と聖地扱いされたりするとこだ。自分はゲームする時間なんてなかったから知らないが、大社の神なんて強いに決まってる。俺は今からとんでもないお方と対面することになるのか。


「失礼するぞ。」

「失礼になります。」

「し、失礼します。」


鳥居をくぐったその先には何度か見たあの境内が広がっていた。ここって祟り神様の神社だったのか…


「吾(あ)に何の用だ。」


急に上から声がした。地元の神様のお姿を拝めるって凄いことなのでは?


「ほう、吞乃か。一人知らん顔が居るがまあ良い。そなたらは本宮に通そう、どうせ厄介事であろう?」


神社の屋根の上に座するその神様はあまりに幼く見え、あまりに恐ろしく見えた。向こうだと小学六年生になるかならないか位の体躯に対し異様に長い髪、その髪一本一本の毛先が蛇の鱗のように変質している。吞乃達が招かれるのについていこう。その一歩を踏み出した瞬間だった。


「未だ、汝通すべきか吾は決めかねておる。ふむ、中々美形で吾好みだ。どうだ?手合わせといこうではないか。」


急に目の前に現れた彼女はこう言った。オイオイ、マジかよ。この世界での最初の戦闘相手がまさかの地元の神様って…有り難いような罰当りのような。てか今神様に自分の容姿を褒められた!?


「そう驚くでない。吞乃の下に身を置いておるのだ、荒事には慣れておろう。」

「ああ、それなんだがそいつは神に成ってから二日目なんだ、荒事の『あ』の字もないぞ。」

「それと青年も行けるって守備範囲広いですね。」

「ほう。初心な相手とも悪くはなきや。手加減はしてやるぞ。後、薙刀は黙っとれ。」


「さあ、手合わせと行こうではないか。」

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