第10話 昼 おばあちゃんとわたし 魔女
魔女
ああ
いつからでしょう私が魔女と呼ばれたのは
いつからでしょう私が独りになったのは
いつからでしょう一日が長くなったのは
いつからでしょう私が貴方を想うのは
いつからでしょう暖炉の火を眺めているのは
いつからでしょう火が燃えているのは
いつからでしょう夢を抱くようになったのは
いつからでしょう空を見なくなったのは
いつからでしょう広い世界に憧れるのは
いつからでしょう狭い世界に閉じこもるのは
いつからでしょう鳥が空に舞っているのは
いつからでしょう空が暗くなったのは
いつからでしょう大きなものに憧れるのは
いつからでしょうつよいものに憧れるのは
ああ
貴方がいなくなって
かなしい
私は独りで
かなしい
私はここにいて
かなしい
私は何も出来なくて
かなしい
私はわからなくて
かなしい
私は
かなしい
ああ
強く強くおもった
鳥になりたいと
強く強くおもった
空を飛びたいと
強く強くおもった
大きくなりたいと
強く強くおもった
つよくなりたいと
ああ
そして私は魔女になった
そして私は貴女を見つけた
ああ
いつからだっけわたしが名前を呼ばれるようになったのは
いつからだっけわたしが独りになったのは
いつからだっけ日付がわからなくなったのは
いつからだっけ親を大好きになったのは
いつからだっけ人がやさしい顔しているのは
いつからだっけ人の顔が同じに見えるようになったのは
いつからだっけ夢を持ったのは
いつからだっけ空を遠くに感じるようになったのは
いつからだっけ広い心を持つようになったのは
いつからだっけ狭い心を持つようになったのは
いつからだっけ鳥が空を飛んでいるのは
いつからだっけ夜の空なのは
いつからだっけ笑っているのは
いつからだっけ人を欲しいとおもったのは
ああ
おばあちゃんに出会って
嬉しい
おばあちゃんが一緒にいて
嬉しい
独りじゃなくて
嬉しい
家があって
嬉しい
わたしはわたしで
嬉しい
わたしは
嬉しい
ああ
強く強くおもった
わたしは独りじゃないって
強く強くおもった
わたしはわたしだって
強く強くおもった
わたしは幸せだって
強く強くおもった
家があるって
ああ
ああ
うん
でも
やっぱり
わたしは不幸
そしてわたしは魔女になった
そしてわたしは貴方を見つけた
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