第174話 平穏な景色
結局その後も小休止を挟んで半日訓練に付き合わされた。
最近はトレーニングも真面に出来ていなかったから丁度いいと言えば丁度良かったんだけど、青鬼の斬撃を捌けたのだからと受け方を指導するという名目で延々と剣を受け続ける羽目になったのはホント苦行でしかなかったよ。
刃毀れさせてしまった将軍からの借り物の剣をその手に持ちながら
「この剣、気に入ってんだがな」
とか言われたら申し訳なくて断れませんでした。
剣の強化ぐらいしとけば良かったと思っても後の祭りだ。
でもやったの青鬼でしょうに。俺は悪くないと思います。
でも一番大変だったのは訓練終了後。
いや、伽のお誘いがね。
さすが国軍というべきか立派な出自の人も多くてそれなりに自分に自信がある人達からのお誘いをお断りするのに一苦労だった。
「お前の子供を産みたい」
みたいなもろ直球のお言葉も頂いたのだが、なにしろ数が多過ぎてこちらを立てればあちらが立たずとなりかねないのでそこは公平に全てお断りさせていただきました。
凄く好みで食指が動く容姿の方も中にはいらっしゃったので涙を呑んでの決断です。ほらバインバインの凄い感じ。おっと失礼。それに絶対マリダが資料提出しろとか言うだろうし。
ほらメリッサと離れてそこそこ時間経ってるし、俺も健全な成人男子ですから好感を持つくらいはご容赦いただきたい。ちょっと想像しちゃったけど手は出してませんから。手を付けた方がwinwinな気もするが…。ちょっと未練が。
とにかく解放されて離宮に戻ったころには色々疲れてました。
侍従さんが淹れてくれたお茶を部屋で一口飲んだところでドルから連絡が来ていたのを思い出した。
ヤバイ、あっちはどうなった。
「遅くなってゴメン。そっちはどう?」
腕の管理端末を操作してドルに呼びかける。
『6時間18分前に覚醒モードが正常終了しました。その後の
そうか良かった。ドルの見立てで大丈夫というからにはそんなに心配してなかったんだけどいい結果を確認できて一安心だ。宰相様への報告は明日でいいかな。今日はもう動きたくありません。
「そう、じゃあ治療は上手くいいったんだね。暴れたりしてない?」
『覚醒時に多少の記憶の混濁は認められましたが当初より至って理性的な対応でこちらの指示に従い問題行動は確認されていません』
この世界の人間がいきなり
「マリダの出番は無くて済みそうだね。じゃあ予定通り明日迎えに行って問題なさそうかな」
『はい。身体状況は極めて良好ですので現時点でも問題ないと判断します』
今は無理。だって俺が色々疲れてますから。
「いや、予定通りで頼む。体調が良さそうなら食欲もあるのかな?」
『はい。現在は消化器官の負担を考慮して
「合成食材でそんなに美味しくはないけどここの料理とはちょっと違うから楽しんでくれるかな。少しは見栄え良くしてあげてね」
『お任せください。賓客用の上級食を提供予定です。マスターが召し上がっていたモノより上等ですよ』
えっ、やっぱりそういう隠しメニュー的なのあったの?真面目に知らなかった。
どうやら兵たちの訓練のようだ。上から見ているので分かり難いが相手をしているのがリュートらしい。
(ほう、なかなかの腕前だな)
次々と挑みかかる兵達を然したる時間もかけずに殴り倒し、蹴り飛ばし、放り投げていく様子を見て感心しながらホッと胸を撫でおろす。
(特に問題は起こっていないようだな)
兵士が装備も着けずに練兵場に居る。ある意味それは平穏を象徴するような景色だろう。王に対して暗殺が仕掛けられたのだ。最悪は内乱で王都に火の手が上がっていてもおかしくない状況だろう。
しかし兵たちは練兵場に居る。外に出る必要がないからだ。
仮に反乱が成功していたとしても王国軍の兵士が自由に動ける程の時間は経っていない。ならば何も問題は起こっていないと考えるのが妥当だろう。
流れは分からないもののあの場にいたメリンダとセシルが上手く取り計らってくれたのは間違いない。
『連絡を継続しますか?』
「いや、いい。連絡が取れるのが分かれば十分だ。問題は無いようだしな。ならば私も気兼ねせずにこの機会にゆっくりと養生させてもらうとしよう。手間を取らせて済まなかったなドルシネアとやら」
『いえ。宜しければこのまま機能回復訓練プログラムに移行が可能ですが開始しますか?』
「ああそうだな。必要な事は済ませてしまおう。頼む」
『了解しました。では、指示に従い可動部位の動作確認から始めましょう。まずは直立姿勢を保ち――』
そして私は天の声の指示に従い身体を動かして確認を行っていった。
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