第22話 憲兵隊
今日は朝から資料館。朝二の鐘から入れるので宿で朝食を摂ったら直行だ。昨日貰った木札を見せて中に入ると五冊の本を頼んだ。宗教や神様関連。
データの取り込みは一時間もかからなかったが、カモフラージュの為に昼一の鐘まで4時間ほど滞在した。
資料館を出ると憲兵隊本部へ向かう。徒歩で五分程の距離だ。門の詰め所で要件を告げると、許可証の札を渡され部屋に案内してくれた。
暫く待つと、制服姿の凛々しい女性が入ってきた。
「王国憲兵隊少尉のアリシアです。今回は盗賊討伐に協力頂き感謝する。我々も注意しているのだが中々手が回らなくてね。迷惑をかけた」
「私はマリダ、彼はリュートです。偶々ですのでお気になさらず。私たちは被害もありませんでしたし」
「そう言ってもらえると助かる。しかし今回は襲われたのがブランキア商会のメリッサ殿だからな。君たちが助けてくれなければ大騒ぎになって憲兵隊の面目も潰れるところだった」
「そのおかげで私たちも過分な報酬をいただきました」
「そうだ、今日は報酬の件だったな。申し訳ないが盗賊討伐の報酬は規定で決まっているから相手が誰であろうと渡せる金額は変わらない。為した功には見合わないかもしれないが納得してくれ」
「ええ、もちろん」
「盗賊討伐一人で三万セル。奴隷として使える状態なら二万セルの加算で五万セルだ。今回は九人全員が犯罪奴隷として使えるから四十五万セルになる」
提示された現金を確認し、受取書にサインをする。アリシアは書類を確認し終わると俺を見ながら言った。
「それにしても君は大きいな。まるで女の様だ。今度、隊の練兵訓練でも見に来てみないか。それだけでも若い隊員はやる気が上がるだろう。その気があるのなら伽をしてもらっても構わんぞ。立派な子供が産まれそうだ」
「はは、機会があれば考えますよ。伽は難しいかもしれないですけど」
「そうなのか、勿体ないな。何なら私が手を上げたい程なのだがな。機会があればぜひ頼む」
「ええ、機会があれば」
苦笑いして誤魔化しました。でも、この対応もそろそろ真面目に考えないとな。どこかで割り切って慣習に従わないと、ますますこの世界で浮きそうな気がする。
憲兵隊本部を出た俺たちは街の中心部へ向かった。ロブに頼まれた手紙を渡すためだ。小さな店だった。入口には「金物キノ」の看板がある。中も狭く、鍬などの農具、鍋釜の調理具、果ては剣などの武器も置いてあった。
「いらっしゃい。何が入用?」
店の奥から声をかけてきたのは予想に反して若い女だった。若いと言っても俺と同年代だろう。ロブの知り合いだからてっきり年寄りだと思ってた。
「グラニドのロブから手紙を預かってきたんだけど、キノの店はここで良かったかしら?」
「ああ、ロブなら知り合いだから間違いないよ。あたしがキノだ。爺さん元気なのかい?」
「雑貨屋をやってるわ。グラニドでお世話になった時に頼まれたの。はい、これ」
「へぇ、あの面倒くさがりが態々紹介状書くなんて珍しい」
手紙を一瞥したキノが言う。
「あたしじゃ大した事してやれないが、ここで分からない事があったら聞いてくれ。この街で生まれ育ったからその辺の奴らよりは詳しい」
「ありがとう。じゃあ早速で悪いけど中古の武器を売りたいんだけど、どこか店を知らない?」
「ウチで買うよ。鉄なら何でも買い取る。モノは今あるのかい?」
「今は預けてあるから後でもってくるわ。探す手間が省けてよかった。早速、ロブに感謝ね」
「旅の途中って手紙には書いてあったけど、すぐに
「目的や予定があるわけじゃないから、暫くはここに居るつもり。平和そうだし景色もいいから」
「領主のアレッシア様がよくやってくれてるからな。さすがに王都よりは小さいけどこの国じゃ一番いい街かもしれない。ゆっくり見て回るといい」
「そのつもりよ。私たちは ”湖上を渡る風” に泊ってるから用があったら連絡してちょうだい。武器は明日にでも持ってくるからお願いね」
店を出るとソシエに寄ることにした。昨日、現金の整理をしたばかりだったが、報奨金が予想より多かったからだ。現金を持ち歩くのもやっぱり不用心かと百五十万セルを預けることにしたんだ。
マリダに予備として金貨三枚三十万セル渡して、残りの十万八千セルは崩して俺が持つことにした。ちょっとした買い物で一々金貨出してたら嫌味でしょ。
今日は金貨だけだったから騒ぎにはなりませんでした。
漸く宿に辿り着くとメリッサからの伝言があった。
『落ち着いた様でしたら、明日の夕食でもご一緒に如何ですか』
メリッサからの誘いは特に用事もないので有難く受ける事にした。
返事はブランキア商会のニーノさんに伝えればいいとあったので、明日にでも資料館へ行く途中に寄ればいいだろう。預けている盗賊の武器も受け取らなきゃならないしね。
その後の宿の対応が少し丁寧になった気がしたが、気のせいかな。
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