第16話 パニック
ゴミは頻繁に母に連絡していた。言わないが、こそこそしてる母の姿を見ている。
この時期、人格が定まらないから記憶もあやふやで私はパニックになっていた。
誰かに相談できる訳でなく、ただ毎日が違う感覚の毎日が億劫だった。
どうやら、ゴミは結婚するらしい。しかも友達もいないから、海外で挙式。
母も父も浮かれていた。
私と姉の冷たい視線は、届かないらしい。
そういえば、私がゴミを中卒だからとよく話していたけど、中卒を馬鹿にしている訳じゃない。ゴミだから、馬鹿にしているだけ。
世の中には、行きたくても進学できない人もいる。母に馬鹿高い授業料を払わせて通った馬鹿高校を、ドロップアウトしたからただのゴミ。
よくよく考えれば、母はゴミを溺愛していた。ゴミもマザコン気味だ。
お似合いの馬鹿親子。
結婚相手は、聞く限り何処にでもいる幸せな家庭の人。
だけど、あのゴミを選ぶなんて馬鹿な女だ。
両親が結婚式に向かうのを、私が車で送った。
私も馬鹿か。
両親がいない家で、私は飼い猫と飼い犬と静かに過ごした。
一番無の心境だった。
帰ってきた両親は、毎日旅先の話を楽しそうに話す。聞いていない私に、何度も何度も。
また、私の人格が消えたり増えたりした。
どす黒い感情を受け止めるには量が多すぎて、私は困ってしまった。
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